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透ける
さわる 撫でる 掴む あるいは 林檎をこすりつける 削れて 滴る汁 そのにおい 果糖の粘り 〈削れたもの〉のかたちを 顕微鏡で観察する 〈削ったもの〉の記憶が 鏡で反射し レンズで屈折して 私の網膜に届く それは奇跡だ そうだろ? 目を見る 見られる 囁く 甘噛む さわる 撫でる 掴む あるいは あなたが私をおしひろげ かたちを変えてしまうとき 私を飲み込む 快楽の津波 あなたの身体を隅から隅まで さわる 撫でる 掴む そうして思う 〈妊娠したい〉 子宮が そのなかの胎児が 私のかたちを変える 絶頂に立つ さわる 撫でる 掴む あるいは 偏微分方程式を解く 手計算で あるいはコンピュータで 〈このシータは光の振動です〉 教授の言葉を編み直して詩にする 冬のひかりを手の甲で受ければぬるくて 瞼で受ければ赤かった まどろみのなか 私は 飛行機の窓から見た 雲の群れを思い出していた 数式で説明される世界が 数式など抜きに 眼の前に立ち現れる不思議に打たれていた
透ける ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1029.2
お気に入り数: 3
投票数 : 3
ポイント数 : 0
作成日時 2024-01-28
コメント日時 2024-02-02
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
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技巧 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
「 冬のひかりを手の甲で受ければぬるくて 瞼で受ければ赤かった まどろみのなか 私は 飛行機の窓から見た 雲の群れを思い出していた 」 のところが春を匂わすように感じました。とくに、冬のひかりはぬるいのところから。詩の心を掴めていなかったら申し訳ないです。 季節的なものあるいは、妊娠すること、数学的なこと(数学はよくわかりませんが、好きだけでおさまらない癒しを感じるもの)。 きれいな情景がふっと浮かびました。読んでいて気持ちがよかったです。
1第三連が印象的な詩だと思いました。 第一連から第二連にかけては、触覚や嗅覚などを交えて、モノの輪郭が壊れたり壊されたりといった自然の摂理のようなものと溶け合うようなイメージがありました。 一変して、第三連では数式といった科学的要素が登場して、モノの輪郭には、モノが存在するということには必ず数式という枠が在るのだと思い出させられる。しかし、その数式なしで世界を視れる、数式というものが世界から「透け」ていること、そのおかげで私たちは世界の美しさに触れられているということ。 そのような発見を、滑らかに展開している詩だと思いました。良かったです。
1一、二連は、触ることや撫でることについての、効能を述べていると思います。 三連で、数学が出てきますが、新しい世界を知ったという驚きにあふれたこの詩は、 とても新鮮で感情喚起的な喜びの詩であると思えます。ハッピ~。
0投票したいと思いました。妊娠出産は詩作、詩の発表ではないかと言うようなありきたりな解釈を拒む硬質な詩質を感じました。「絶頂」と言えばサミット、エイペックス、トップなど英語にして見ればいいと思いました。外部が感じられました。外部が覆っていると思いました。
0作者の方の観念が作品に透け出ていて、それは新奇性とはちょっと違う、何かを確認するなぞりがきのような気がしました。
1子宮が そのなかの胎児が 私のかたちを変える するどい指摘ですね。
0まずとても楽しめました、いっぱい考えました。なんていうかざっと見て、キレイなものとして読み取れる。繊細で遠慮がちで、それでも自分の瞳でしっかりを見て、触って感じて、それを浮き彫りに透かすような。言葉で表せないから、詩で現されてしまう、それを詩ではなく言葉に、読解しようと思っても、ほんとうにうまく伝えることが出来ない、やはり今読解できない自分がとてもくやしいのですが、連も行も言葉も意味も光景も、非常に重なり合い、ひとつの詩を形成している。のもあるし、まっすぐに捉えたものを見るときは、ある、のだけど、外れたところから、透ける、そんな感じで、捉えきれませんでした。 (・触る/こわごわと 覗く ・撫でる/愛おしい 情を 分け与える ・掴む/心を解く 手に入れる)などなど、考えられることはあるのですが…… 〝触る 撫でる 掴む あるいは〟につづく 一連目 削ぎ落として解かれる 記憶を 二連目 押し広げ変える あなたを通して 三連目 ひとつの形とする 世界を知る おもえば透けてしまう、何をどのように押さえ孕ませ撫でこんで、留めたらいいのか、言葉としてとてもむずかしい、定めようとすると他が透けてしまう。はい、降参です。ひとこと巧いな(完)
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