行け一吾郎 - B-REVIEW
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PICK UP - REVIEW

ことば

ことばという幻想

純粋な疑問が織りなす美しさ。答えを探す途中に見た景色。

花骸

大人用おむつの中で

すごい

これ好きです 世界はどう終わっていくのだろうという現代の不安感を感じます。



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行け一吾郎    

生まれた まるまる 赤ん坊 つるつる してて しわくちゃで 滑って ああ 剥いたゆで卵のような 途方もない 赤ん坊 太陽も笑みをこぼす 朝蜘蛛が「おれとおなじ誕生日だ」とリスに向かっておおいばりするような つるつる しわくちゃの 赤ん坊 生まれた 生まれた 喜びが生まれた 野球のグラブとバットを持った少年がお外で「やったァ」と叫んだ 恐竜の化石が喜びのあまり動き出します ああ あれは 金曜日 東京の初雪の日 生まれた赤ん坊 みなみな よろこんだ ひいおばあちゃんもシワをたくさんにして おばあちゃんは赤ん坊の将来に胸をときめかせて 父親はただただ真っ向からかわいいと目を輝かせていた 母親と赤ん坊は眠っていた 二人の叔父さんもみんな 静かに心の中で それぞれの輝きを持っていた 眠りを起こさないよう 声を出さずに みんなの最初の輝きだった 名前は何にしよう 母方 父方の親族で こうでもない ああでもない 母方の祖母が強くて 一吾郎なんて名前をつけた 父方の祖父は市造 がよかった(ほんとうは) すくすく 育った赤ん坊 しわくちゃも伸びてきて ぴんとはった肌に 丸々とした頬 叔父さん叔母さんおばあちゃんおじいちゃんみんなから 愛された お父さんお母さん一吾郎のために働いた …… 二十年後 …… 祖母が自ら命を絶つ 母が癌で亡くなる 祖父が施設に入る 一吾郎は考えた 考えた 「おれに、みんな、輝きを、くれすぎた」 一吾郎 目が発光してる 翠色に その目では何も見えない 一吾郎 突然 たおれた 一吾郎 「てんかんですな。」 一吾郎 輝き当てられすぎた 一吾郎 分からないけれど 光が原因の やまい 一吾郎 生きよう 例え 何度倒れても 例え 家族友人みないなくなろうとも おれは生きよう 一吾郎 吾が道を行けと 切り開けと 母から教えられたように 行け 一吾郎 どこまでも 走ってゆけ 一吾郎 吾は一吾郎 どこまでも ひとりでも 引き返さぬぞ 思い出などに 浸らぬぞ サヨナラなどに とらわれぬ 強い力で 牛を押すのだ 一吾郎 牛を押すのだ一吾郎



行け一吾郎 ポイントセクション

作品データ

コメント数 : 2
P V 数 : 555.0
お気に入り数: 3
投票数   : 0
ポイント数 : 0

作成日時 2024-01-27
コメント日時 2024-01-28
#現代詩 #縦書き
項目全期間(2025/04/23現在)投稿後10日間
叙情性00
前衛性00
可読性00
エンタメ00
技巧00
音韻00
構成00
総合ポイント00
 平均値  中央値 
叙情性00
前衛性00
可読性00
 エンタメ00
技巧00
音韻00
構成00
総合00
閲覧指数:555.0
2025/04/23 18時15分01秒現在
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    作品に書かれた推薦文

行け一吾郎 コメントセクション

コメント数(2)
鷹枕可
作品へ
(2024-01-28)

何処と無く、ダダイズム的な下地の趣きがおありに為られる、物語‐詩と致しまして拝読をさせて頂きました。 出鱈目に走りそうでありながらも、当意即妙なる現実描写に沿って描かれておりますものですから、どこかしらシュールな面白さの有る詩文となっております。 御作拝読中に突如、ダダ=想像界、と、写実=現実界の触媒装置と致しましてのシュル=超現実、という構図が思い浮かびました次第でございます。 つまり、想像の奔放と現実の秩序の橋渡しこそがシュルレアリスムの役割なのではないか、と。 と致しますと、その想像‐現実の両端の振れ幅の中に於いて記述を為された御作が、何処かシュルレアリスムを彷彿とせしめる、感覚の理由付けが出来得る様な、心持が致しますものですから。 着想の横道に逸れて終いまして申し訳ございません。 而して、他にはない、独特の趣きがおありに為る作品でございますので、これからどのように活躍なされるのかが、とても愉しみでございます。

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鷹枕可
作品へ
(2024-01-28)

何処と無く、ダダイズム的な下地の趣きがおありに為られる、物語‐詩と致しまして拝読をさせて頂きました。 出鱈目に走りそうでありながらも、当意即妙なる現実描写に沿って描かれておりますものですから、どこかしらシュールな面白さの有る詩文となっております。 御作拝読中に突如、ダダ=想像界、と、写実=現実界の触媒装置と致しましてのシュル=超現実、という構図が思い浮かびました次第でございます。 つまり、想像の奔放と現実の秩序の橋渡しこそがシュルレアリスムの役割なのではないか、と。 と致しますと、その想像‐現実の両端の振れ幅の中に於いて記述を為された御作が、何処かシュルレアリスムを彷彿とせしめる、感覚の理由付けが出来得る様な、心持が致しますものですから。 着想の横道に逸れて終いまして申し訳ございません。 而して、他にはない、独特の趣きがおありに為る作品でございますので、これからどのように活躍なされるのかが、とても愉しみでございます。

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投稿作品数: 2