別枠表示
キス
崩れ落ちそうな廃屋の中で 青年は一人夢を見ていました 破れた屋根からは上弦の月 手が届きそうだと思いながら 青年には愛した人がいて 愛した人も青年を愛していて そして二人とも契りません 愛はそのようなものだった 唇を重ねました 腰を抱き寄せました 項に傷痕を残し 額づきました そしてその人は言いました 神様になって欲しい 青年はその人の結婚指輪に 誓いのキスをしました 青年はぼんやりと眠り続け おかしな夢をたくさん見ます その人が自分と契りを交わし 二人に似たかわいらしい子が… それが悪夢だと気付くのは うっすらと意識を取り戻す時 その人は別の男に隷属したので 青年はもう誰とも繋がれない 訪ねてくる友人に微笑んで これからは一人で生きて 誰のことも愛そうとしないよ ただ君の友情だけを信じると言った 月はすべてを見ています 遠過ぎて聴こえない ほとんど震えるだけの心臓の 吐き出された言葉に滲む痛み それでも青年は幸せでした その人が自分を愛したことを 信じていられたからです 自分もまたその人を信じている 花も雨も雲もありませんでした 月だけがじっとこちらを照らし お前はどうしたいのかと問い掛ける 青年は思います、ただもう一度 子供みたいに笑って お別れの言葉を告げたい 何の意味もなく手を取って その温かさを噛み締めたら その人が残した小さな痛みを 深く深く塗り替えてしまう それもまた痛みだということを 知っているから求めるのだ 壊れたソファ、家財道具 埃まみれの家具カバー とっくに壊れているテーブルランプ どこまでも都合のいい身体 青年は夢を見ていました もう誰もキスしたり抱き締めたり 傷付けたり殴ったりしない 花を花だと言って名前をつける世界の
キス ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 639.6
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2023-11-27
コメント日時 2023-11-27
項目 | 全期間(2024/11/24現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 0 | 0 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文