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コンサートホールから背を向けて
職場の同僚の女の子との、甘く柔らかな過去。そのおかげで僕は軽く彼女から、むっつりスケベ的なキャラ扱いをされているのだけど、それでもそんな彼女への未練も気恥ずかしさも、慈父に見守られているかのように温かいのは、なぜなんだろう……今年の正月には―と、より遠い歳月を見やれば―また弟と会える。知の最先端で闘っている彼のことを思うと、いよいよ深まってきた11月の風はよりひんやりとこの身を引き締めるようで。かけ離れた2つの世界が僕という場で、相矛盾することなく走っている。ああ、人生があると、感慨を覚える。敵対したまま別れていった人たちとも、このいまなら和解できるかなと、再会し抱き合う空想をしてしまう程度には弱いけれど、きっとそんな弱さをこそ抱きしめてゆくべきなのだ。自分の好みがクラシックでも映画音楽でもなくって、ささやかなゲーム音楽だということにすら甚大な意味が宿る夕暮れ。コンサートホール。万雷の拍手。そこからそっと背を向けて、たとえば森を吹き抜ける微風なんかとともに在ることの、そのしんなりとした矜持から、いつか世界に逆襲したりしてみたい―なんてね。
コンサートホールから背を向けて ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 429.1
お気に入り数: 1
投票数 : 1
ポイント数 : 0
作成日時 2023-11-17
コメント日時 2023-11-17
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
書かれようとしている情感をとても好ましく読みました。 いいと思います。 團伊玖磨さんという作曲家がいらっしゃいまして、彼の文章はそれはもう物凄く、何故かというと流行りの言葉がほとんど一言たりとも出てこないのです。それゆえに絶対に今めかない代わり、絶対に古びずいつまでもその書かれようとした情感がそこに起立し続けるのです。 そんなことが参考になればいいなと思います。 都会の開けたタイル張りの道を外套の襟を立てて歩いているような雰囲気、「彼女」のことを語る時の自己肯定的でありながらどこか情けない感じ、弟のことを思う嫉妬と優しさ、大好きです。
1漠然としかわからないのですが、 「かけ離れた2つの世界が僕という場で、相矛盾することなく走っている。ああ、人生があると、感慨を覚える。」 というところから、人とは異なる複数の世界が交錯するところであるような気がしました。また、そうであるからこそ人は詩を書けるのではないかとも思います。 コンサートホールに背を向けるとは、メジャーなものよりもマイナーなもの、華やかなものよりも穏やかなものに、何か生の実感のようなものを見出す感覚を指しているのでしょうか。 ただ、冒頭の職場の同僚の女の子との云々という話も含めて、それらの間のつながりがよく見えず、全体的にややまとまりがないような印象を受けました。 でも、 「たとえば森を吹き抜ける微風なんかとともに在ることの、そのしんなりとした矜持」 という表現はなかなか美しいと思うので、少し推敲不足のような感じがするのが惜しいと思います。
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