余興:小劇「コント」の試み - B-REVIEW
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余興:小劇「コント」の試み    

「時代が明るくなったんだよ」 「みんな、白痴になってしまったからね」 「白痴は明るい、電気の犬だ」 「ほら御覧じろ、一頭二十ワットの白痴をあつめたら、都市電力のできあがり」 「十二ダースたらないんです」 「たらないって、なにが」 「あたしのマッチ」  「街灯がまっくらになって、本を読みたくってマッチ箱をのぞいたら、もうなにもなかった」 「ねえ、なにもないってこんなにも広いものなのね」  「海は広いな、大きいな」  「さっきからなにくっちゃべってんだ、おらははあ、とうほぐゆきの列車さのりのがして、なんとはあ、いきのこっただが」 「いきのこったって、なにがおありになられたの」 「空襲さ。列車も田圃も犬っこも、みーんなあめりかにやられっちまって、焼夷弾っちうの、そっだらまあ村の役場さ星条旗かかげてやがんの。見ものだで」 「じゃああんたは生き残ったのね」 「かえろうにもかえれねえで、東京さにも戸籍もつくれね、幽霊みてなもんだがや」 「かえれたらかえれたでよ、招集令状さとどくっから、軍隊にばいかねばなんね。なんせ歴史書の裏であ戦争さおわっておらんねから」    「だからよ、こして裏表逆っにして表表紙さに逃げ込んでんだな」 「かわいそう、裏表紙のなかの脱走兵さん」   「天井裏、うるさいなあ」 「うるさいって、なにが」 「鼠だよ、鼠。近ごろじゃあまるまる太って、殺鼠剤も利きやしない」 「支那人でも潜んでるんじゃあないか、隣町では支那人の一家が失踪をしたそうじゃないか」  「床下に鼠二匹。膨れ上がって、ぶよぶよに腐って死んでたんだと」  「縁起でもない」 「ほら、懐中電灯があるからさ、ちょっと覗いてみてくれよ、うるさくって眠れやしない」 「しょうがねえなあ」 ――個室の扉を叩く音。やがて警報ベルが鳴り、懐中電灯の光が投光器の様に部屋へ差し込む。 「まずい、特高のやつらだ」 「天井裏に鼠が二匹!!」


余興:小劇「コント」の試み ポイントセクション

作品データ

コメント数 : 2
P V 数 : 718.1
お気に入り数: 1
投票数   : 0
ポイント数 : 0

作成日時 2023-10-25
コメント日時 2023-10-27
#ビーレビ杯不参加
項目全期間(2025/04/13現在)投稿後10日間
叙情性00
前衛性00
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叙情性00
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 エンタメ00
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閲覧指数:718.1
2025/04/13 22時39分39秒現在
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    作品に書かれた推薦文

余興:小劇「コント」の試み コメントセクション

コメント数(2)
黒髪
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(2023-10-26)

鼠というのが、特高のことなのか、話している二人のことなのか、わからなかったのですが、 面白かったです。お笑いの要素が少しある寸劇ですね。日本は、市民を巻き込んだ空襲で、 大被害を受けましたが、そもそも日本兵っていうのは、どのあたりの基地に住んでいたのか、 よくわかりません。まあ、真珠湾攻撃の報いを受けたということなのでしょう。恐らく。 鷹枕可さんのコントは、すごくよく考えられていて、知性を感じます。

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鷹枕可
黒髪さんへ
(2023-10-27)

ご閲覧を賜り、允に有り難うございます。 なるべく単純に笑わせない寸劇を記述致します事を、極めて意識して認めさせて頂きました。 小劇場演劇、大衆演劇何れも、今や愚かな笑いが必須と為ってしまいましたから。 歴史の都合の裏側にて、声を奪われた者達の声を拾い集める、という営為。 今でも、寺山の戯曲、あれは「身毒丸」であったと記憶を致して居りますが。名前を奪われた旧日本軍陸軍兵士の「叫び」が印象に残っております。 此のご時世に居を置く者と致しまして、「正統な歴史」の範疇から零れ落ちた幾多の現実に、耳を研ぎ澄ませる必要性を実感を致して居ります。 因みに、二匹の鼠は天井裏に在りながらも、個室の二人をも暗示していると謂う構造と為っておりますが、 特高も鼠、というのは思い付きもしませんでした。成程、慧眼でございますね。 他者の眼を通し、自作を解釈して頂きます事の喜びを実感致して居ります。

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