嫌な夢 - B-REVIEW
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きょこち(久遠恭子)

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嫌な夢    

カボチャを切るのは大変ですからまずはラップに包んで五分レンジでチンするといいらしい。だからトマトにバニラとチョコレート、またもや深緑色、湖はいつも濁っていて袋小路の不安は漕いでも漕いでも。結局みんなで周りをひたすら旋回した僕らはみんな。 嫌な夢を見た。棄てた。棄てた。 ハンプティダンプティみたいな人を見かけたから僕はその人をエッグマンと名付けた。エッグマンはコンプレックスのかたまりなんだけど、最近なんとかうまくやってちょっと自信がついてきたらしい。見下されてきた過去に復讐するべくして毎日ツルツルの頭を綺麗に磨いているし、ヒゲもキチンと整えて自分はハンプティダンプティなんだと思い込んでいて、なんか話し方もカッコつけているし、裏では悪いことも少ししてるらしいけど、ジョン・レノンを見かけると一気に自信をなくして塀の上から落ちて真っ逆さまにグシャっと割れてしまうらしいよ、エッグマン。 悪い夢、悪い夢。 リンゴを細かく切って、勿論皮付きでそのままレンジで五分チンすると美味しいおやつが出来上がり。だからシナモンとハチミツそしてチョコレート。今度は薄い赤色の透明のなんと。おいしい。おいしい。人の気配がしたと思ったら焦がすような西日でちょっと溢れそうになった涙はリンゴと一緒に飲み込んだ。 綺麗な夢。塩味。


嫌な夢 ポイントセクション

作品データ

コメント数 : 17
P V 数 : 889.2
お気に入り数: 0
投票数   : 0
ポイント数 : 0

作成日時 2018-01-05
コメント日時 2018-01-27
項目全期間(2024/10/31現在)投稿後10日間
叙情性00
前衛性00
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音韻00
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閲覧指数:889.2
2024/10/31 00時45分31秒現在
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    作品に書かれた推薦文

嫌な夢 コメントセクション

コメント数(17)
アラメルモ
(2018-01-06)

嫌な夢は僕もしょっちゅうみてますね。嫌だとすれば僕のほうにそう思える要因があるからでしょうね、きっと。それは繰り返される日常のなかで。 人はそれぞれ意識も違うわけですが、僕がこんな夢を読めばべつに嫌だとも思えないのです。あなたはどうして嫌なのよ?っていう因果関係をもう少し知りたくなりますよね。

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エイクピア
(2018-01-06)

初夢を見たという記憶はあるのですが、どんな内容か具体的に残らないほどの曖昧な夢でした。勿論いやな夢は普段よくみると思うのですが、初夢だけに限定すると今年は惜しいことでした。この詩ではマザーグースが引用されて居て、結構イメージ喚起力がありました。最初の連の料理と言うのか料理の素材の提示もこの詩を引き立てているような気がしました。

0
こうだたけみ
(2018-01-06)

終わり方がとても好きです。 涙の雫に映り込んだタイトルが反転する。 綺麗な夢。塩味。

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survof
(2018-01-07)

アラメルモさん コメントありがとうございます!おそらくこの作品には明確な「嫌」という感情はないんです。もっと漠然としたボンヤリとした何かなんです。それを「嫌な」という形容詞でしか表現できなかったところに私の表現力の限界があるのかもしれませんね。 エイクピアさん ありがとうございます!最初に漠然としたイメージがいくつかあって、料理との関連付けはそれとは別になんだかふっと湧いてきたもので、どうしてだか自分でもよく分からないんですがとてもしっくり来たので、面白くてこの作品ができました。特に自分が見た夢について書いたものではないんですが、でも表現しようとしている感覚に対して一番しっくりきた言葉が「夢」でした。自分も時々本当に嫌な夢を見ます。嫌な夢ほど現実に近いものだったりします。 こうだたけみさん 最後の終わり方、自分も気に入っているのでとても嬉しいです。時々本当に綺麗な夢をみます。しばらく余韻に浸りたくなるような…。綺麗な夢とは別なんですっが、一番印象に残ってる夢は、エンドロールというか、映像の上にキャスティングが表示される夢ですね。なんかとても不思議な気分でした。 蛾兆ボルカさん コメントありがとうございます!とても嬉しくお読みしました。私も言葉の流れや切れに関しては上手くいく時と全くダメな時があって、上手くいくときは殆どそのままでも気に入った感じになるんですが、ダメなとき、というか中途半端な時が一番厄介で、何回も推敲してるうちにどんどん言葉が硬くなっていって、削られていって最後には俳句くらいの短い言葉しか残らない、ということがよくあります。本当にダメな時は逆に推敲していくことで凄くいいものになったりで、なかなか難しいものですね。しかも思い入れのあるものを書こうとするとだいたいうまくいかなくて、息を抜いて書くとなんかいい感じになったりもします。自分にとって本当に大切な感情や感覚は、未だにきちんと言葉にできていないのではないかと思います。何度かトライはしているんですが、ことごとく玉砕しています。まだ早いのかもしれません。それから涙って純粋に美味しいですよね。心は辛いのに味覚だけ楽しんでる状態になっていつも不思議な気持ちになります。

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完備
(2018-01-07)

第一段落、特に冒頭一文は新鮮でした。「カボチャを切るのは大変ですからまずはラップに包んで五分レンジでチンするといいらしい」の「カボチャを切るのは大変ですから」までが他者の発話、そこから先が作中主体の語りと読みましたが、このような文の構成法があるのかと感心しました。とはいえ面白いアイデアの域は出ていないとも思います。全体としては、後半は凡庸な文体に堕してしまい残念でした。

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survof
(2018-01-07)

完備さん コメントありがとうございます!完備さんの作品をいつもお読みして細部に神経が行き届いた方だなと感じることが多いので、このように細かい部分に目をとめて下さってとても嬉しいです。後半の部分は惰性で書いてしまいましたね。ご指摘の通りかと思います。

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こうだたけみ
(2018-01-08)

見ている夢のキャスティングがそのまま表示されていたのでしょうか? 構造的にすごい夢だなあと思いました。びっくり。 私の印象に残っている夢は、小学校のクラスメイトがたくさん出てきて自分は逃げ回っているモノクロの夢。好きだった男の子のトレーナーだけがなぜか鮮やかに青くて、とても綺麗だった。 そうそう、蛾兆ボルカさんへの返信に「涙は美味しい」と書かれていたけれど、それにもとても驚きました。びっくり。

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survof
(2018-01-08)

こうだたけみさん こうださんの夢もなかなかインパクトありますね。「シンドラーのリスト」という映画にそういう演出があったのを思い出しました。自分のみたキャスティングが表示される夢というのは、実際に夢にでてきた人たちが表示されるというより、何かの映画の映像がそのまま流れている感じでした。だからキャスティングの文字までは読めないんですが、道路が映し出されていて、バイクとか車が通りすぎていって、そこに静かにキャスティングの文字らしきものがが次々と表示されていくという。。映画の夢をみた、、という感じでしょうか。。涙の味に関しては涙を流すたびに(といってもそんなに泣かないですけど、笑)いつも今日はしょっぱいな、、とか今日はなんかおいしいな、とかそんなことを考えている気がします。

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こうだたけみ
(2018-01-08)

そうか、頭の中で映画が上映されていたのですね。脳みそが映画館になっていたんだな。小さな、あるいはどこまでも大きな映画館。たのしい。 私の見た夢は、たしかに映像作品ではよくある手法だと思います。青より赤が使われる気がするけれど。何が印象に残ったかと言うと、いつもカラーで見ている夢がその時だけモノクロ。そして青の綺麗さ。でしょうか。 他には、買い出しの帰り道に白昼夢を見たことがあって、一度に2つの物語が降りてきて、慌てて帰って文字起こししました。作品としては、あまりいい出来にはならなかったけれど。安部公房の短編みたいな夢でした。 私は幼稚園ぐらいまで、一日に一回は泣いてるなっていうほどの泣き虫だったのですが、涙を美味しいと思ったことは一度もないです。塩気で肌がヒリヒリして、痛いって思い出しかないです。笑 作品から話が離れてしまってごめんなさい。お付き合いいただきありがとうございました(*^^*)

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survof
(2018-01-08)

花緒さん コメントありがとうございます!<この作品自体が、嫌なことを書いているのか、そうでないのか、浮遊感が漂っているようにみえます>とのご感想、とても嬉しく思いました。「嫌な」も「綺麗」も本来の「嫌な」とか「綺麗」とは違うかもしれないな、と読み返してみて思います。この詩のなかでは「嫌な」も「綺麗な」もほとんど同じ意味をもっているのかもしれません。そうした曖昧さ、境界線のなさ、みたいなものが伝わったとすればとても嬉しいです。

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survof
(2018-01-15)

この作品はビーレビ杯不参加でよろしくお願いします

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まりも
(2018-01-15)

たくさん、レスがついていますね・・・ 〈トマトにバニラとチョコレート〉この味を想像したときの、なんとなく胸騒ぎするような違和感と、 〈シナモンとハチミツそしてチョコレート〉この、予定調和的な、しかし安定して、懐かしいような美味しさ(の感じ。) 胸がざわつくような「味」を求める時は、気持ちが前向きで、頑張ってみたい、色々なことに挑戦してみたい、と思う時で、安定した美味しさを求める時は、その逆の気持ちになっているとき、なのかもしれない、と思いました。 嫌な夢を見ても、それを棄てられる間はいい。嫌な夢の中に生きてしまっている、としたら。 そんなときこそ、あまい、予定調和的な味わいに戻って、そこからまた、歩き始めるのかもしれない。 そんなことを思いました。

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survof
(2018-01-15)

まりもさん 今回自分のなかでは過去投稿作の中では一番「適当に」書いた作品で、それにも関わらず沢山の方にコメント頂いて嬉しくもあり、同時に複雑な気持ちでもあります、が基本コメントいただけるのはとても嬉しいものですね。もしかしたら肩の力を抜ききったときに何かしらいいものができるのかもしれません。味についてのコメントは、ああ、なるほどー、と思いました。この作品を書く時に自分の過去の経験をいくつか思い出しながら書いたのですが、その時の気持ちを考えると確かに一理あるな、と妙に納得したのでした。 <嫌な夢を見ても、それを棄てられる間はいい。嫌な夢の中に生きてしまっている、としたら。 そんなときこそ、あまい、予定調和的な味わいに戻って、そこからまた、歩き始めるのかもしれない。> この作品の本質を鋭くついているコメントで非常に嬉しく思いました。この作品全体を貫くテーマがまさしくこれに近い何かで、少しでも私の心の奥底に澱のように溜まってっているぼんやりとした感覚が伝わったのかな、、と、書いた甲斐があったなと思いました。「適当に」書いたとはいいつつ、今まで書いた作品のなかで一番本音に近い、嘘の少ない作品かな、と思います。

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なかたつ
(2018-01-17)

 3パートに分けて考えてみます。「カボチャ」「エッグマン」「リンゴ」です。  「カボチャ」では、カボチャを切る大変さから飛躍して、大変だった頃のことが回想されて、濁る湖、袋小路の不安などが描かれ、ひたすら旋回していた僕らがいます。それは終わりのない、何の救いもない繰り返しであって、何のためにそれをするのかもわからないままに、動いているのではなく、動かされているからこそ、いい想いをしていないのでしょう。  「エッグマン」では、自らのことではなく、他人を眺めて、描写しています。どの点がハンプティダンプティみたいだという思わされたのかと言えば、その見た目といい、話し方といい、性格といい、あらゆる点で限りなくハンプティダンプティなのでしょう。ジョン・レノンには成れないということを知ったエッグマンは、塀の上から落ちてしまうという。ジョン・レノンは塀の上から落ちることはないのでしょう。そして、グシャっと割れてしまうこともないのでしょう。  「カボチャ」にしても「エッグマン」にしても、嫌な夢・悪い夢だという。  では、「リンゴ」ではどうか。そもそも、今まで出てきた食べ物は、中身があってそのまわりを皮や殻で包まれたものばかりです。「リンゴ」も無論同様で。  カボチャを5分チンするのは、その大変さを多少和らげるためですが、リンゴを5分チンするのは、その美味しさをより美味しくさせるためです。この違いだけでも、気分がうきうきするもので、さらにさらに、その美味しさをよりよくしようとリンゴと相性のいい調味料が並べられるわけです。カボチャの大変さ・深緑色から自然と濁った湖が想起されたのとは違い、リンゴの美味しさ・赤色からはただただその嬉しさで涙が溢れるという。  甘いはずのリンゴが最後、塩味となったのは、涙が混ざってしまったからだ。  ここで、ふと思うのが、食べるまでの過程が違えど、嬉しい涙にしろ、カボチャから想起されて湖を旋回して、もし悲しい涙が出て、一緒にカボチャを食べたら、それもまた塩味になってしまうのではないかと。  あれだけ、リンゴの美味しさを引き立たせていたのに、結果は涙によって塩味になってしまったというのは、それだけ涙の味が強かったということです。それは、湖を旋回した時には流れなかった涙が体内の中に留まり続け、リンゴを食べる時に、体の奥底から湧き出てしまったのでしょうか。

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survof
(2018-01-17)

なかたつさん コメントありがとうございます!夢分析のようなコメントでとても楽しませていただきました。夢分析の面白さはどこか無理やりといういうか、こじつけっぽいところだと私は思っていて、理屈で分解しなくてもいいものをあえて理屈で分解しないと気が済まないような無理やり感が時にとても魅力的な論理的飛躍を生み出すところだと思います。書き手にとって特に意味がないものに意味を付与し解析し、書き手にとって意味があるものをさらりと流す。結果、書き手の意図とは全く関係のない解釈が生まれる。とても面白いな、と思いますし、意外なものが意図しない形で繋がっていて自分の意図しない意味が発生している。たとえば、カボチャと卵とりんごの共通点。まったく意識していなかったので、とても新鮮でした。作品を読むということにもそれぞれの人の強烈な個性が反映されるものだと感じていて、そのことに非常に興味をそそられますし、その多様性を非常に魅力的だと思っています。また是非コメントください!

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緑川七十七
(2018-01-26)

破茶滅茶でチャーミング。とくれば、重ね合わせるのはアリスで、そこにいるのはハンプティダンプティ。 でもそいつはエッグマンと名付けられた語り手の知人で、なんだか妙に存在のリアリティがある。 とっても楽しく読みました! ただ、「嫌」と「棄」という漢字は、ここだけ力が強すぎて、なんだか読んでて迷子になっちゃいそうでした。あるいは、私がこの詩のテイストをライトに捉えすぎているのかもしれません。

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survof
(2018-01-27)

コメントありがとうございます!私にとって夢をみるとは時には心地よい経験ですが、多くの場合、迷子になったときのようなどこか落ち着かない、不安定な感覚を伴います。「嫌」と「棄」という漢字の効果によって読者を「迷子」にならせることを意図した訳ではないのですが、その部分からどこか腑に落ちない感覚や文章としての不安定さ、あるいは「迷子」になったような感覚、そういったものを感じていただけたということでしたら、それはとても嬉しいことです。私の夢ってライトだけどどこか不条理なんです。あと、エッグマンに存在のリアリティを感じていただけて嬉しいです。思い入れのあるキャラなので、笑

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