貨車を牽く列車の進むとどろきも林の翳のそよぎに消さる
感性も音こそ立てね身の内にこもり飛び交ひ不協和なせり
朝に見る人さまざまの運動の足下に散れり星形の砂
自らを映す日蔭は爪先を冷まさずに行く坂の上まぶし
池端に立つかざぐるま雨風に、日照りに曝りて一年に朽つ
幾重にも折れまた揺れて我を呑み最奥に止む夢のなか夢
九時に開くパチ屋の横に列なせる人と縁なくタバコは吸へり
自分では自分へ向かへ自分裡に仮借なき空拡がりぬべし
ふるさとの父母に倣ひて静物をためしに飾る一人の暮らし
来る年の手帳を見る日われを呼び消えてまた呼ぶ往にし声音
やはらかにわたる微風の色合か靡く夏草なべて澄みたり
日光差す窓辺によりて師が読める流行りの新書を我はわらふ
目のまはり日に焼け赤き選手らの大き水筒一つ転びぬ
店さきに生鮮野菜並めて置く人らの手から冷たく息吹く
人中に自我のペースで摂取する成分表示ほぼゼロのティー
去る者が別れの折に歌ふ唄、アコギは震ひ皆の目潤む
玄関で誰か泣かざる入る出づるいづれの時も心悲しく
一本の直立つ茎に一輪づつひらく彼岸花 完全自由
蔓まとふ風車の羽根を見し昨日胸の騒ぎは今日にも止まず
膝下に蝶一羽来て、つと速く高く揚がりて我が膝も浮く
作品データ
コメント数 : 6
P V 数 : 805.0
お気に入り数: 1
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2023-10-09
コメント日時 2023-10-12
#歌誌帆掲載応募
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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閲覧指数:805.0
2024/11/21 23時04分21秒現在
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歌誌「帆」選考担当の一人、鷹枕可でございます。 短歌連作のご応募を賜りまして、允に嬉しく存じ上げます。 拝読をさせて頂きました。 全体を通しましては。非常に短歌的抒情というものに精通をなされていらっしゃる、と感受を致しました。 技巧も叙景の在り方も地に足が付いており、とても堅実な出来であると。 特長と致しましては、観念的、思弁的な叙述が際立っておられる処でございましょうか。 良い、と思いました御歌と、雑感等。 >池端に立つかざぐるま雨風に、日照りに曝りて一年に朽つ 情景も、色褪せた時の流れも充分に表現為されていらっしゃる、瑕疵の見当たらぬ御歌であると思いました次第でございます。 >日光差す窓辺によりて師が読める流行りの新書を我はわらふ 写実的描写の中に表現を為された、一種の諷刺、批評的精神が際立って居られます。 >玄関で誰か泣かざる入る出づるいづれの時も心悲しく 連作の中、最も丈高い秀歌であると感受を致しました。素晴らしいリアリズムです。 >膝下に蝶一羽来て、つと速く高く揚がりて我が膝も浮く 此の様な身体感覚も、堂に入って居られます。蝶につれだち、浮くかのような膝。「あくがれいづるたま」の様です。 総括と致しましては、流石の出来、としか申しようもございませんが、 敢えて弱点を挙げますならば、「完成をされ過ぎている」事、「歌壇的叙情と余りに近似的である」事でございましょうか。 私は、採用、掲載は有り得る、と思いました次第でございます。 合議を致しますので、暫し、お待ちをくださいませ。
1ありがとうございます。もうすでにうれしくて頭が混乱しています。採るか採らないかは「帆」様のことであり、私はこれ以上何もできないわけですが、全力は尽くしました。 すべての歌が未発表の初出です。5月末に角川短歌賞に一作を出した後から最近までの間に作った歌群です。
0この歌群には共鳴しました。 じっさい、作者はその巨大都市の中枢又はそこからちょっと離れたところに いないような印象を持ったんですね。私の想像ですが。 文化の庇護を受けていないといいますか。 これは郊外の歌、といいますか、わかるって何かわからないですけれどもわかる そのじっさい、地方都市で、郊外で、細々暮らす私に刺さりました。
1歌誌「帆」選考担当の一人、鷹枕可でございます。 この度はご投稿を賜りまして、改めて有り難うございます。 選考の結果、 御作の掲載が決定と相成りましたので、御報せをさせて頂きたく存じ上げます。 おめでとうございます。弛まぬ研鑽の賜物でございますね。心より歓迎をさせて頂きたく存じ上げます。 未だ未だ、他の投稿者の方々の詠草も受け付けをさせて頂いております。 何卒、奮ってご応募ご投稿の程を宜しくお願いを申し上げます。
1コメントありがとうございます。中枢と言うと、最高の知能・理性・感性が集まる所を思いますね。本当にそうかもしれないですし、そんなものとして想定するだけでもいいかもしれません。たしかに、私は中枢の外に生きています。ドジをして、入れてもらえなかったのです 笑。
1なんとうれしいことでしょう。本当にありがとうございます。
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