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Polar bear ice
Polar bear iceを食べながら考えたこと。地球温暖化のこと、突然降る変な雨のこと、僕らは地球の端っこにしがみついて性に合った生活を送るべきであること。5月9日を丸一日使って考えたことは、硝子の外のiceみたいに1分きっかしで溶けてしまう。木のスプーン、静かなる絶滅、きっと毎日同じ甘さが舌に溶けてる。 左手で渡された、口直しに飲んだやわらかいコーヒー。どこから来た豆ですか?iceが水溜りになるくらい、とても暑い所からやって来ました。いい香りですね。それから入れ方も。どこで間違ってしまったのだろうと考え始める。そんな味。どこでだって間違えてしまえるけれど。それを間違いだと認識するためのささやかな淋しさ。ありがとう。どういたしまして。 Polar bearなんて初めからいなかったんだと、つくづく考え始める。真っ白い毛並み。散乱光によって白く輝いて見えるそれが、北極圏のクレヴァスの上に麻ひもを敷いて、始まりと終わりにしょっぱい海水をかけて固めて、綱渡りをしている、何度も、何頭も。僕はひみつきちの中でその昔祖父に買ってもらった双眼鏡で、大きな目で見つめている。 お気に入りの3冊の本を循環させながらずっと読んでいる。あまりにも本ばかり読んだものだから、見かねた祖父が買ってくれたんだった。眼鏡じゃないところが祖父なりのジョークだったし、僕はよく祖父の前で、重たすぎる双眼鏡を覗いて、見えない預言者を探した。 大好きだった本、大好きだった祖父、大好きだった光景。自分で考案したいくつかの冷たい魔法が、接眼レンズを覗き込むほど小さくなっていった。そのたびに暖かい指が後ろから僕の毛髪をなでつけ、今のは右手だったか左手だったか、言い当てる遊びに発展する。制限時間は10秒。でもそれは本当に祖父の手だったのか?あと2秒。 そして何もかもが分からなくなる、彼らの行動、彼らの存在。その光景から目が離せなくなる。僕の黒目がぱちくりと動く。白目には雨が流れる。ここから塵ひとつない硝子の外へ、今すぐ出て行きたくなる。食べられるかもしれないのに。挨拶もそこそこに。食べて欲しいと思った。僕が溶けてしまう前に。一番美しい姿のまま。 トレッキングシューズを履いた、足だけが外に出ている。足が走っていて、雪は僕の足の下で永遠に圧縮され続けている。鳥だったらそれを見て、飛びながら笑うだろう。鳥が飛んできた方向を見るような、そんな天気が5月9日からずっと時を刻み続けて、今日で丸一年になる。ハッピーバースデイ、おめでとう。どこかにいる僕へ、どこかにいた僕から。 白い水溜りに小豆とパインと蜜柑が浮かんでいた。エレベーターみたいに時間が上下したらしい。彼らは溶けてしまったのか。僕が溶けてしまっていれば、きっと黒く汚れてしまう、がらくたの心だから、その方が辻褄が合う。でもいいさ、みんなそういう光景を必死に探すべき時がいかさまにやって来る。Polar bear iceをぴかぴかのシンクへ流したら、僕はもう眠る。
Polar bear ice ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1878.7
お気に入り数: 2
投票数 : 9
ポイント数 : 0
作成日時 2023-09-02
コメント日時 2023-10-07
項目 | 全期間(2024/12/04現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
- みんなアイスを食べて指を汚そう (田中恭平 new)
チョコレートに、比べて、行を割いた分、可読性(よみやすさ)が高まっています。 そうして、「5月9日を丸一日使って」筆記されたのかも知れない、と思う。 一日かけたのならば、多分そうだとして、随所に、読みやすさに対する、またセンテンスに 対する気づかいがあって、好感が持てるのですけれど 内容は、閉じつつ、開いている。開きつつ、閉じている。 それが良いとも悪いとはいえなくて、好き嫌いのレベル、一段上のレベルで 読まれる作品として、私は好みでした。
0エレベーターみたいに時間が上下したらしい。 はじめてみた表現。
0ありがとうございます。5月9日はアイスクリームの日なのだそうです。1869年、今から約150年ほど前に制定された記念日とありました。この記念日、夏の日ではないのが意外でしたが、アイスクリームはいつ食べても美味しいと感じます。閉じつつ、開いている。開きつつ、閉じている。そのように評して頂き、言いえて妙だと思いました。夏の朝顔みたいなリズム。
1エレベーターとエスカレーター、語感が似ているので間違えてしまいます。歩かなくて済むので、どちらも便利です。ありがとうございます。
0とても素敵な作品ですね。読み終わりの余韻がとても心地よい。特に望遠鏡の下りにはハッとさせられました 文学とは文章から詩を除外したものだ、と言うのは金子光晴の言ですが、僕のくだらない感想でこの作品を汚してしまいたくない、そんな気分にさせられるくらい、とても好きでした。 時間が掛かるかも知れませんし、この作品の魅力を削いでしまうかもしれませんが、続く投稿でこの作品の魅力を語らせて頂ければと思います
0ありがとうございます。先日借りた本を読んでいたんですが、半分くらい読んだところで、以前借りた本であることに気がつきました。ただ、読み終わった後の印象(読み始めからもですが)は以前よりも遥かに良かったです。例えるならばそのような感じで、この詩はまだまだ一連一連が弱く、完成前の段階であるとおぼろげに思います。ただこれを解決するのは時間であって、僕も、僕の時間をゆっくり待とうと思っています。
0上手だなあ、、という印象を受けました。 けれど、あとなにか、、 それについて考える余地がありそうです。
0カレーを作っていると、ひと味足りないという時があって、でも適当に足して食べるのですが、それで成功する時もあれば、失敗することもありますが、何かが足りないという感覚は大事だと思いました。この詩に必要なスパイスは、じっくり見つけていこうと思います。ありがとうございます。
0こんにちは。 この作品を読んだ時に村上春樹みたいな組み立て方の文章だなと思いました。個人的な感想ですが。 アイスクリームの溶ける感覚と、祖父が買ってくれた双眼鏡と、色々な物語が交錯して面白い詩になっていますね。
0村上春樹さんといえば「ふしぎな図書館」が連想されます。この小説、悲しい終わり方をするのですが、それすらも許容してしまう物語の独創性に、静かに魅了されていました。それを少しだけ思い出しました。感想ありがとうございました。
1夏の詩だと思ったのですが、5月9日なので初夏でしょうか。青春を感じました。気候変動って青春っぽい印象があります。全体に、設定というか、各フレーズが回収されていて、しっかり描いてあるなという ところが、印象的でした。Plar bear iceが溶けるくらいのことを考えた、というところがいいです。 とても良い書き方だと思います。一日使って考えたこと。思索だけでできていて、複雑ですね。 僕の読み方では、『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』という漫画を連想しました。 この詩の良いところは、思索の冒険がなされているところです。なんでもない文章で、 何でもないようなことをきっかけにたくさんの思索がなされている。それを味わっていると、 Polar bear ice並みの思索ということに納得がいきます。小さいものと大きなものがつながる予感。 でも捨てられる。青春的な日だと思います。
0ありがとうございます。上手くいかないこと、でも生きていること、その不条理さは紹介頂いた漫画の持つそれと共鳴しているかもしれません。ちなみに5月9日はアイスクリームの日だそうです。今年はいつもよりアイスクリームの溶け方が早いなと感じてこの詩を書きました。蓋をあけてから中身が溶け切るまでの短い時間、それは例えば動物たちの生きる時間でもあり・・・そんなお話です。 >気候変動って青春っぽい印象があります。 言い得て妙だと思います。季節の中身は気候変動と並走しながらも(幼少期から比べると)変化しているのでしょうが、その中身を明確に意識できる期間は割と長くはないのだと思います。 >思索の冒険がなされているところです。 僕は詩を書きながら、ふとその行為の客観に立ち返る時、適切な答えを持てずにいたのですが、「思索の冒険」というお言葉がそこにぴたりと当てはまる感覚があり、とても嬉しく思いました。
1まじカッコヨですね 素敵な散文詩や サリンジャーのキャラみたいに テーブル挟んで真向かいになって お話を聞いてるみたい 暖かい すぐそこにいる感じ お気に入り登録しとこ また読みたい 読みにきます
0僕は海外文学を受けつけないアレルギー脳なのですが、辛うじて読めそうだというところにサリンジャーが生きています。色々な方が彼の翻訳本を出されていて、暇なときひとつの物語について読み比べたことがあるのですが、子どもがしゃべっているような癖のある言葉のリズムは、翻訳家は違えどちゃんと存在していて、プロ(翻訳家)はすごいなと思いました。と同時に翻訳家によってサリンジャーのキャラクターが作られている可能性も疑いました。また読みたいと言って下さって嬉しいです、ありがとうございました。
0ホッキョクグマを食べる見たいな,、そのままのイメージも浮かんだのですが、ポーラーベアアイスと言う名称の、アイスクリーム。地球温暖化の問題や突然降る雨の事、コーヒーから、コーヒー豆、入れ方の問題など。ホッキョクグマの存在自体を疑う。サーカスの熊?幻の熊なのかもしれません。本と祖父の存在。何かの遊び。何かアイスと自分が混合されているような、ごっちゃになる境地が詩なのかもしれません。嘲笑するかもしれない鳥。眠るまでの工程を描いた詩だったのか。シンクへ流す行為が象徴的でした。
0ありがとうございます。最後、溶けたアイスクリームをシンクへ流すとき、そこはまだぴかぴかだったのですが、僕達も生まれたときはそうだったのに、いつの間にかそうではなくなってしまっていて、シンクは磨けば元に戻りますが、僕たちの住む所はどうやらそういうわけにはいかないみたいだという事実は、人類が誕生してからずっと、しかし溶けていて、流れ続けてもいるのだと思います。
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