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Defeat
連中は右に折れていった。私はそれに続いた。連中の後ろ姿は、しかし、折れた先になく、振り返ると、連中の 一糸乱れぬ前進が目の前に迫っていて、私は、たちまちストレッチャーに乗せられた急患。私は連中の一人に尋 ねる。あなたはフレイヴァー・フレイブみたいな格好だけど、どうして人を救う仕事を?あんたは急患に見えな いけど、こうしてストレッチャーで運ばれてる。俺にはあんたの経験則や先入観に対して述べるべきことはない し、俺たちはウータン・クランでもないから、こうしてあんたをストレッチャーで運んでる。そうだろ?彼の返 答に拍手を送り、連中は右に折れていった。私はそれに続いた。連中の後ろ姿は、しかし、折れた先になく、振 り返ると私の後ろには一人の人もなく、私は、一糸乱れぬフロウでストレッチャーを押す連中の客演。いくら急 いでも、しかし、連中との距離は開いていくばかりで、強烈な照明が星形の影を路上に焼き付け、目を眩ませた 私は前のめりに倒れ、起き上がろうとすると、マイクロフォンを握っていたはずの私の手は、女のものらしい両 の手で握られている。その顔は逆光でよく見えず、あなた・じゃなければ・いけないと女の声は告げ、私には、 私でなければならない理由はどこにもない確信があり、観客たちも同意するだろう直観もあった。だから私は、 舞台袖からゴール前に、大柄なMCの頭をふわりと越すチップパスを上げ、すると女の声は、決然として連中を 追い越し、その行く手を阻み、私の絶妙な緊急通報はいたずら電話と見なされ、連中は右に折れていった。私は それに続いた。連中の後ろ姿は、しかし、折れた先になく、振り返っても、やはり連中の姿はなく、ただ、観客 どもは私に罵声を浴びせながらビールの紙コップや食べかけのホットドッグを投げつけ、私は肩をすくめ、固い 座席から腰を上げ、振りかぶると、そんな光景が、私の足元で、空になった紙コップとなって転がり、それから T字路になり、カーテンコールに巻き込まれ、観客が一人が大文字に、別の一人は小文字にと姿を変えていく様 は胸のすく見ものだったし、私は私にどこで折り合いをつけられるのか、実は少しも見当がついていなかったの で、私に盛大な拍手が送られる頃、私は左に折れる決断を下すだろう。ここは出口じゃないったらと訴える惨事 の跡を示す謎めいた星を大またで跨ぎ、連中のストレッチャーは HiDaRini 折れていった。
Defeat ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1095.2
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2017-12-30
コメント日時 2018-01-04
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
連中、私、女、観客。それら登場人物に、救急車を示唆するストレッチャー。それと最初の「右」と最後の「HiDaRini 」の折れて行った先。何かわかるかもしれないと思い、論って見ました。その他 「マイクロフォンを握っていたはずの私の手」 「ただ、観客どもは私に罵声を浴びせながらビールの紙コップや食べかけのホットドッグを投げつけ、私は肩をすくめ、固い座席から腰を上げ、振りかぶると、そんな光景が、私の足元で、空になった紙コップとなって転がり、」 などの箇所が印象的でした。
0読んでいただきありがとうございました。挙げられた箇所は推敲の結果、書き足された部分でした。
0作品内容について感じたことを言葉にできなくて申し訳ないんですけど 自分はこの作品を好きに感じてるっぽいというのを伝えておきたいです。 ヒップホップそれほど聞くほうでもないんですけど リル・ピープも若いのに死んでしまったなぁとか思い出しました。
0私は肩をすくめ、固い 座席から腰を上げ、 以降がちょっと 難しく感じました。 全体的には、疾走感のようなものを感じられました。
0読んでいただきありがとうございます。 ロ三 さん リル・ピープという人を初めて知りました。彼の略歴を見て、ヒップホップが一番苦手とするらしいテーマ 「内省」ってやつを、カニエ・ウエストが切り開き、彼のような人がごく自然にこなし、ごく自然に世間に 受け入れられていく時代になったんだろうな、と思いました。孤独や矛盾に耐えかねてオーバードーズで死 ぬってロックの専売特許じゃないんだなあ、とも。 奇偶さん ご指摘の箇所は読点で区切られていますが息の長い文章になっているので、それが読みずらさに 繋がっているかもしれません。フロウとかイルとかドープとか、実感としてよく分かりませんが、 感じていただいた疾走感がこの作品なりのフロウであったら幸いです。
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