ドヤ街で出会った酔っぱらい。
朝からウイスキーをラッパ飲みして。
そうでもしなきゃ、
生きていけない。
そうまでしてでも
生きてゆくのさ。
おぼつかい足取りで、男は近づいて来て
「最近は、仕事もないぜ」
ウイスキーを、ひと口頬張り、続けた。
「お前は何ができる」
「俺は、あんたみたいにタフじゃないよ」
答えると、
「ふざけるな! お前にしかできない事を聞いているんじゃない! お前ができる事を聞いてるんだ! 」
胸ぐらを掴む程の勢いで、けれど、手を上げる事も難しいほど酔っているので、男はただ、喚くしかしない。
「俺は、スコップを使える! ツルハシも! 免許や資格はないが、俺は働いてるんだ」
また、ウイスキーをひと口飲んだ。ヤバいな。ピッチがあがっている。
「お前は何ができる」
神の啓示か天使の呪詛。あるいは悪魔のささやきのごとく、男はどなり続ける。
「何ができるんだ! 」
「少し、落ち着いてくれないか。--ひと口、貰えるかい? 」
男の表情が、少し。ほんの少し緩んだ。
俺の身体に、熱い液体が、ゆっくりと流れてゆく。
酒臭い息を吐いて、俺は言った。
「俺は、海を」
「何? 」
「俺は、海を見に行く事ができる」
男は、酔いにとどめをさすかのように、勢い良くウイスキーをラッパ飲みした。そして、嘔吐するような、ゲップとも吐息とも取れる破裂音を口から出してから、うなだれた。
「それも、夜に、だ」
酔いつぶれた男に、俺は言った。
どこかで、野良猫が小さくないた。
男も俺も、野良猫も。
みんな、生きている。
「もう少し、もらっていいか」
眠る男に断りをいれて、俺も多めにウイスキーを飲んだ。
「くそったれ! そんなスキルが俺も欲しいぜ」
寝言を聞きながら、隣で横たわる男が目覚めるのを待った。
作品データ
コメント数 : 7
P V 数 : 1237.3
お気に入り数: 1
投票数 : 1
ポイント数 : 0
作成日時 2023-08-19
コメント日時 2023-08-21
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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2024/11/21 19時31分16秒現在
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世間は俺のことをダメだと言うかもしれないけれど、俺は誰でもない俺の人生を生きているのだから、他人はとやかく言うかもしれないが、とにかく俺は俺を生きるしかないし、(ここでウィスキーを飲む)ぷはーっ、ウウィ、そうだから、俺は海に、行くことができるんだ…、そう海だ…、しかも、夜に…、夜に?そう、……夜にだ。というシーンがまざまざと思い浮かび、まるでそのひとと酒を飲んでるようでした。
1はじめまして。 初投稿で、こんな温かくて優しいコメントを頂き、ありがとうございます! とても嬉しいです! 「シーンが浮かび、まるでそのひとと酒を飲んでるようでした」 --すごく嬉しいコメントです。 コメントをするのは苦手なんで、うまくこの喜びを伝える事ができませんが…… この詩を評価してくださった事を、心から感謝しています。
1ありがとうございます。 なるほどです。 ワタシは、切り取る事だけを考えて、この詩を書きました。 参考になります。 うーん……すごく参考になりました! ありがとうございます。
0海を見に行く事ができるのところがかっこいい。。。 なんだろう、基本的にもうおれって一人称が「俺」の作品って読めなくなって来てて、やっぱりなんというかオレオレ作品のオレは渋すぎるんですよ。まえに室町さんがおっしゃってたんだけど「僕」ってのは繊細な僕ってある程度決まっちゃってるんですよね。でこれは私が勝手に付け加えてるだけなのですが俺ってのはハードボイルドな俺になってしまうという。 でもこの作品は良かったと思う。海を見に行くことができるとか、かっこよすぎ。。
1ありがとうございます! そんなに言ってもらえるなんて、幸せです。 なんて言っていいのか…… とても嬉しいです!
1なんだろう。 相手さんの男さんも「夜に海を見にいくこと」はできると思うのですよね。 それができない、なにか男さんの中で、そのまま海へ身を投げてしまう、そういった衝動へ かられてしまうような恐怖をひた隠しに生きているのか。怖いのか。 その話者の言葉、ポエジーに打たれた可能性もありえますね。 ただ、ある程度そういった可能性、詩に於ける思索が推測できたらばつまらなくて なんだろ、詩は高水準なのだけれど、読解ができる狭さ、みたいなものを この詩は負っていると思っており しかし、作者様が書ききった、と思われたのだし、それもわかるので いいのじゃないのかな!と思いました。一票。
1ありがたいコメントをいただき、本当に感謝しています。 読解の狭さというご指摘、ごもっともであると思いました。 まだまだ勉強も技術も不足しているなぁ……と感じます。 返事が遅くなって申し訳ありません。 ただ、ワタシはとてもあたたかな心持ちになれました! くどいですが、本当にありがとうございます!
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