薄刃の夜に藤は散る。
狂える鳥居の向こうに永久が眠りゆく。
「糸切り鋏が紡ぐよう、傀儡が回るよう、
うなされる夜の夢は誰にも分かれしまへんよってに」
お歯黒の笑みを残し、巫女は消えた。
あゝ、我が背よ。
生皮剥がされた我らはけだものでおまっしゃろうか。
おゝ、帝国の遠き星よ。見てはりくださりませ。
人の過ちにより、甘う腐りゆくが如く遂に西空の黄昏は潰えます。
息も耐えだえに、真が燃やされ溶けていく。
この世すべては我らが敵。
愛おしみの心は、流した涙は……血よりも濃い。
怨みも憎しみも枯れ果て、聖に至った空蝉。
「春は死ぬによい折節。わいと心中いたしまひょう」
鏡向こうの星影は清か。
麗しの常世で巡り会うことを誓い、
痛まぬようにと、せめてもの慈しみをかけん。
さいなら、さいなら……。
今生の暇乞い。
勾玉双つは嬰児の如く砕かれた。
天地滴る岩座に八咫鴉立ち、乱るる神風を示す。
豊葦は黄金色にざわめくばかり。
作品データ
コメント数 : 9
P V 数 : 979.6
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投票数 : 1
ポイント数 : 0
作成日時 2023-07-29
コメント日時 2023-08-08
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2024/11/21 23時17分05秒現在
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はじめまして。 憂いや哀しみ、そして儚く消えゆくものの内に美しさを観る、そんな日本的な心情が溢れているような詩ですね。 とても厭世的な雰囲気に満ちています。 中ほどにある、西空の黄昏が潰えるとか、真が燃やされ溶けるとかいった表現は、西方浄土への希望が失せたことを表しているのでしょうか、それとももしかしたらウクライナ戦争のことでしょうか(見当外れだったら済みません)。 全体的に、言葉のひとつひとつが少し凝りすぎているような気もしますが、何か静けさの中に潜む激情のようなものを感じます。
1美文ですね。古典教養、芸事を確りと踏まえていらっしゃる。 双つの勾玉は南北朝でしょうか。 勾玉の形状からは嬰児(嬰嬰、とその字義の通り)が彷彿とされ、血脈の断絶を嘆くかの様です。 象徴天皇制、現代短歌界隈からは切り捨てられんとしておりますが、憲法九条と併せまして日本国のアイデンティティであると、考えております。 どうかその両者を旧守しつつ、刷新の詩歌をと、心より願わずにはいられません。 良い作品を、拝読させて頂きました。
1はじめまして。 コメントしてくださり、ありがとうございます! 特に終わりの部分はややこしい単語を使いすぎたかもしれません。 率直に批評してくださり嬉しいです。
0鷹枕可さん、お世話になります。 明治〜昭和あたりの大阪で心中する2人というイメージで書いてみました。 良い作品と言ってくださり、大変ありがたいです。 私は短歌を基本的に作っていますが、 散文詩を書くモチベーションもあがりました。 ありがとうございます!
1ルビがおもしろい。
1コメントをくださりありがとうございます。 やまとことばと歴史的仮名遣いを意識しました。
0コメントをくださり、ありがとうございます。 1行目を気に入っていただけて嬉しいです。
0つまるところ、オタクさ(専門的)がすべてになっていて、それが良くも悪くもある作風だと思うんです。意味わかんないという感じで最後まで読まないライト層もいれば、先にコメントされていらっしゃる方々みたいに楽しめる専門家な方々もいる。なんとなく現代詩に慣れてしまった私は本作を読んで、以前遊んでいた曽爾高原を思い出しました。
1コメントありがとうございます。 私自身、現代詩には馴染めなくて、耽美や古語志向のため、短歌が一番自分に合っているような気がしています。 それでも短歌の定形に収まらないものは、こうやって詩にしていけたらと思います。 曽爾高原、奈良ですよね? 京都にはよく行くんですけど、奈良も開拓したいと思いつつ、まだあまり行けてません……。
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