待合室にある絵を読み解いてみせるのが病的なほど得意である
光石研さん
はい
光石研さんですか
はい
1番奥の診察室までどうぞ
はい
いや、今日は1人で来て偉ぞ!
ええ
どこか調子が悪いの?
おつむが痛くなるとかかな?
はい
光石研さんの、あなた自身の患者さんとは、あまりうまくいってないの?
ええ、はい
あなた、ニックネームは?
電子辞書
悲しいことがあったね?
うん
今ここから落っこちたら、私たちみんな死んじまうだろうな
危険だよサン・ソレイユ!後ろに下がって!
怯えてばかりだ、山火事のやつは!しかし底がまったく見えない、死んだかどうかもわらないだろうな!
そうね、でも、飛び込むなら案外こんなところが色々と楽なのかもしれない
どうしてだい、山火事?
いや、だってね、なにかと面倒くさくて疲れてしまったの、葬式だの灰だの……、死んでしまって、それで何も残らないから残念なのではなくて、綺麗さっぱり、何も残らないことは大変ラッキーなことよ、わかる?
そこらへん頭が硬いからなー、電子辞書は
そういうものなのかな
はは、カチカチのうんち野郎!
それで、電子辞書たちはそのあとどうしたんだい?
そのあとはサン・ソレイユの車で【穴】から街へと帰りました。街の外れに着く頃には、日はすっかり昇り始めていましたが、しかし急げばまだ間に合いそうでした。私はそのまま自分の診療所へと出勤して、二、三の患者を対応して、早速山火事の飼っていたガラガラ蛇を引き取りに行きました。山火事は縊る直前に、餌の分量、ガラスケースの掃除、かかりつけの動物病院について教えてくれましたから、あまり心配はありませんでした。
光石先生が、やっぱりいいです
どうして?
先生に診てもらうと、忘れられないんです、悲しいこと、あ、いや、覚えているけど忘れられるんです、だから、ずっと忘れられるんです、ゆるされているような
そうかい、ありがとう
山火事の部屋に向かうと、そこには家具などは何もなく、ただ、開け放たれた窓と、その前に置かれた矩形のガラスのケースが、とてもさびしそうに陽を受けていました
サン・ソレイユ、私はね、私のことをあまりうるさく聞かれると、そりゃ怒るよ
そうだね、その時までは噛まないよね
そう、こんな荒れ果てたような不毛の街で、ずっとブラブラしてたけど、みんなと会えてよかった、ジョニー・サンダースのサッド・ヴァケイションもみんなと最後に聴けてよかった
おい山火事、そんなこと言うなよ、びっくりするじゃないか
そんなこと言っていいよ!
なんだい、電子辞書、急に叫んで
そんなこと、若いうちに言わないと……
ありがとう、電子辞書、ガラガラ蛇をよろしくね
ありがとうね、そうでしたか、それではとにかく薬を出しておきます、これにて診察を終わります
ヤコブ
あ?
待合室の絵のヤコブの梯子……
ああ、あれですか、あれはとあるフレスコ画のレプリカです
どうして天使たちは手足を使って梯子を降りてくるのでしょうね、羽もあるのに
電子辞書!電子辞書はそれが得意じゃないんですか?読解ですよ!
確かにそれはそうだけれども……
あらゆる巻末の年譜と何遍も照らし合わせることで、私は姑息な小説家志望であったこともある
後日、例のサン・ソレイユさんを紹介してもらい、実際に【穴】に行ってみることになった、私は怖い、暗いけれども生命感のあるものから、その場しのぎで逃げ切ってしまったから、私は人々の精神をあれこれする資格はないことが発覚しそうだから
ここらへんだったんですが
なにも見当たらないじゃないか
ええ、普通の道の途中に……、とてつもなく、本当にとてつもなく大きな穴がぽっかりと……、まぁ、とにかくやってみましょう、持ってきた先生の電子辞書で、言葉の読み上げ機能を押してください
【ことわり】
そうです、いい感じです。今のは先生の好きな言葉ですか?
ああ、理と書いてことわりと読む
ええ、はい
【みち】
普通の道という言葉は辞書に載っていましたか?
わからないな
【ゆき】
先生、奇跡ってもっとこう、軽くて、飄々としていて、呆気ないものだと思うんです、雪みたいに
私もそう思う
先生は穴にすら落ちることができないんですね
はあ、何事もちょちょいのちょいですから、いやぁ、あなた、ちょっと痛いところ突くなぁ
サン・ソレイユです
サン・ソレイユという名前があります
ちゃんと名前を呼んでください
サン・ソレイユ
はい
サン・ソレイユ
はい、そうです
サン・ソレイユ
はい
サン・ソレイユ、ごめんなさい
はい、どうしました
あの?
あ?
雪降りますかね
はい
サン・ソレイユ、先生、もちろん光石研、山火事、そしてガラガラ蛇にも、雪は降りますよ
そうか
光石研をどう思う?
いい医者です、確かに弱いですが
そうだな
そのころ光石研は右の手の人差し指をガラガラ蛇に噛まれてしまい、いや、少しでも何故だか噛んで欲しくなってしまったので、餌のコオロギと共に、自分自身を差し出してしまった
作品データ
コメント数 : 3
P V 数 : 752.4
お気に入り数: 0
投票数 : 1
ポイント数 : 0
作成日時 2023-06-09
コメント日時 2023-06-12
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
| 平均値 | 中央値 |
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 0 | 0 |
閲覧指数:752.4
2024/11/21 22時46分12秒現在
※ポイントを入れるにはログインが必要です
※自作品にはポイントを入れられません。
誰かと誰かの会話をもとにした内容というのは分かるのですが、何のことを比喩しているのか、あるいは何を表さんとしているのかは分かりませんでした。「サン・ソレイユ」という映画を見れば少しは分かるのかな? 詩の作り方としては引用詩かコラージュ的な手法に思えるのですが、縦書きだと読みづらいところがあります。 1番奥の診察室までどうぞ→一番奥の~ いや、今日は1人で来て偉ぞ!→いや、今日は一人で来て偉いぞ! あと、句点のあるなし、「!」「?」のあとに空マスを一つ入れないことや、多用している空行も、本に刷ればまた違う印象なのかもしれませんが、私がパソコンで読む限りは読みづらさしか感じませんでした。
0読みにくい編集まことに申し訳ないです。読んでくださってありがとうございます。
0暇なのでひさびさにこのサイトに辿り着きました こんなにも考えて考察してくださってありがとうございます感謝しています
0