別枠表示
フィラデルフィアの夜に 42
フィラデルフィアの夜に針金が這いずります。 昼でも冷たく暗く静かな所は、夜になると異界と同然に思えます。 そこに落ち込んでしまった者は、自らは異物であると、排除されるべき物であると知る事でしょう。 暗くなった夜、廃屋から聞いた事のない音が聞こえてきます。 誰かそこに住み着き始めたのか、良くない何かが起こっているのか、近くに住む者がライトを片手にその廃屋へ覗き込みます。 動く物は何もない。それでも音はし続ける。 警察を呼ぶか。 そう頭は働きつつ、呼び寄せられる様に一歩一歩その廃屋へ入り込む。 明るかった時でも冷たく暗く静かな家、暗くなった今は空気が深海の如く息苦しい。 歩む。 その時。 床が抜け、更なる深みへ落ちた。 何も見えない。 ライトは粉々に壊れたと手探りでわかる。 音がする。蛇が這いずり回るみたいな音が。 異常な音はこれかとこれかと察するも、その音がどんどんこっちに近づいてくる。 体に、纏わりつく。 抵抗するも、長い髪が体に絡まると同じく、振りほどけない。 手足に、胴体に、顔にまで。 皮膚の上を走り回る。 不意に、周囲が見えました。 暗さに目が慣れた? それにしては良く見える。 目の前には鏡。割れて捨てられた物か。 そこには古代の刺青を思わせる紋様が刻まれた自らの体。 特に顔。 隙間から覗き込む、眼鏡の様に紋様が走っている。 指先で触れる。 細い細い針金が、紋様を作っているとわかる。 鏡の先には同じく針金が走り、壁面を刻み、飾り立てている。 モノクロ絵画。 そう感じさせる描写が続く。 右にも左にも、床にも天井にも。 時に立体を作り、時に文字を連ねて。 長く続く物語。 それは誰かの記憶。 それがどうしてか、細い針金が記憶し、記録を残している。 廃屋の下の、目的の分からない坑道で。 坑道に終わりが見え、梯子があります。 古い梯子でしたが、針金が補修し強化されています。 それを登り、地上へ戻ります。 久しぶりに見た光と色彩。 刺青同然に体に刻まれた針金は、ひとりでに坑道へ戻っていきました。 時たま、夜になるとまた音がします。 針金が誘う音です。 新たにまた作り上げた、刻み付けた、書き連ねたと誘う音です。 その人はライトを持たずそこへ向かいます。 針金に導かれ、廃屋の坑道へ一歩一歩向かうのでした。
フィラデルフィアの夜に 42 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1162.1
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2023-06-02
コメント日時 2023-06-16
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 0 | 0 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
うーん 過去作も改めて読みましたが 針金だからかもしれないけど 結構似た様な展開に感じてなんとも言えないですね。 そろそろライバルみたいなものの登場も必要なのではないでしょうか プラスチックとか 技術はある方なのでこだわりが良い方に向かって欲しいなと感じました 海軍 准将(昇格)
1おそらく作者以上に読み込んでくださっている事に感謝します。 過去に書いたのをそこまで読み返していなかったので、そこは今思うと悪かったかもしれないです。 似たような展開と思われたのはそこに原因があるかもしれません。 ただ仮にライバルを出したところですぐに出さなくなってしまう気がしてなりません。 ひとつの話を書けて終わりになりかねないです。 似たような展開といわれてもなお、針金とこの世界観でまだまだやっていきたいというどうしようもない執着が拭いきれません。 我ながら何故にここまで書くのか? 果てが来るまで、飽きが来るまで、マナーを守りつつこの調子で書かせて貰いたく存じます。
0針金と言うと、ジャコメッティ―を思い出すのですが、そう言った現代美術とは違った意味で、この詩では針金が登場して居る様です。生活や仕事、部屋の絵画を飾り立てるもの、物語や記憶を刻むもの。幽霊の様に捉える事が可能なものなのかもしれません。
0どちらかというとアウトサイダーアートですね。発想のもとになっているのがどこかの誰か(仮にフィラデルフィア・ワイヤーマンと呼ばれている誰か)が誰にも知られる事なく作って偶然発見された作品群ですので。 アウトサイダーアートは美術教育を受けていない人(一概には言えませんが知的障害を持っている人の作品がそう称される事が多いです)が自分の為に作ったケースが多いので >生活や仕事、部屋の絵画を飾り立てるもの、物語や記憶を刻むもの。 となる事が結構あると思います。 自分の知識は書籍と美術番組と旭川美術館で催されたアウトサイダーアート展に行ったくらいですが。 >幽霊の様に捉える事が可能なものなのかもしれません。 この点は確かに。超常的な出来事を描くことがおおいですし。 アウトサイダーアートの幽霊を描き続けているのかもしれません。
1アイデアがよかった。
0ありがとうございます!
0針金が自分に絡むのを思い描きながら読みました。 坑道から出られてよかったです。が、やはり身体中に針金が傷をつけたのは消せないですね。 痛みはしばらく続くでしょうし、また同じ坑道に戻るかもしれないし... アメリカというのも何か意味有りなのでしょうね。
0よく読んでいただけるとわかるかと思いますが、痛みの描写がないんですよね。 体に刻み付けられているように見えただけのつもりでした。 しかもまた最後には吸い寄せられるように坑道に向かっている事からそこまで不快ではなかったのかと。 あと、この連作はフィラデルフィア・ワイヤーマンと仮に呼ばれている、フィラデルフィアで偶然見つかった誰かの作品群を元にしていまして。 そのため舞台は一応アメリカのフィラデルフィアではありますが、大きな意味はないのです。
0うーん、これは改行や段落の意図が分からないし、ただ見づらいだけになってます。 最初のところだけ手直ししてみる(不自然な句読点があるがそのまま使用)。 フィラデルフィアの夜に針金が這いずります。 昼でも冷たく暗く静かな所は、夜になると異界と同然に思えます。そこに落ち込んでしまった者は、自らは異物であると、排除されるべき物であると知る事でしょう。 暗くなった夜、廃屋から聞いた事のない音が聞こえてきます。誰かそこに住み着き始めたのか、良くない何かが起こっているのか、近くに住む者がライトを片手にその廃屋へ覗き込みます。動く物は何もない。それでも音はし続ける。 警察を呼ぶか。そう頭は働きつつ、呼び寄せられる様に一歩一歩その廃屋へ入り込む。明るかった時でも冷たく暗く静かな家、暗くなった今は空気が深海の如く息苦しい。歩む。その時。床が抜け、更なる深みへ落ちた。
0完全に自己流でやっていてそれが強固な癖になってしまっています。 どこまで改善できるかわかりませんが、ご指摘感謝です。
0ロングなライフワークなわけだから、地味であっていいとおもう。
0このまま地味に力つきるまで続ける所存です!
0