ずっと内に抱えていたものを
うっかり外に出してしまい
不安定な気持ちのまま
夜になってしまった
焦ってしまい
だれかに
電話したかったけど
今夜は遅いから
携帯は枕元において
もう、眠ろう
生まれる前に
預かったものだ
次のだれかに預けるまで
消えたりしない
でも
それは、風が吹けば
掌からさっと、
さらわれそうな
ひとつぶの砂に
なってしまったから
ぎゅっと
握りしめる
瞼を閉じると
遠いところから
小さな頃、右手で奏でた
旋律が聴こえてくる
それはやがて
私を迎え入れる
やわらかな闇へ
これまでに聴いた
だれかの声に
ゆっくりと
針を落とし
ゆらゆらと回る
円盤を眺めていると
ノイズが心地よく
響いてくる
やわらかな闇の中で
ぎゅっと
握りしめた掌を
そっと開くと
砂は弾けて
たくさんの風船となって
たくさんの人達に
預ける準備が始まる
朝、目覚める頃には
だれかに頼ることもなく
孤独でもなく
私は
ただの
ひとり
作品データ
コメント数 : 5
P V 数 : 958.1
お気に入り数: 0
投票数 : 1
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作成日時 2023-04-27
コメント日時 2023-05-17
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
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エンタメ | 0 | 0 |
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2024/11/21 23時17分41秒現在
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こんにちは。 端的に言って、とても読みやすい詩だと感じました。 タイトルは「預かりもの」ですが、その預かりものについては、生まれる前に預かったもの、ひとつぶの砂になってしまったもの、たくさんの風船になるものといったことが書かれているのみで、それ以上それが何であるのかを特定できるような表現がありません。おそらくその解釈は読み手に任されているのでしょう。 「やわらかな闇へ」とその次の連の表現はどこかノスタルジックで美しいと思います。 最後の二連にある孤独でないただのひとりとは、連綿と受け継がれてきた何かを預かる者の一人としての「ひとり」という意味だと受けとれます。 とても美しい詩だと感じました。
0>だれかの声に >ゆっくりと >針を落とし こちらの表現が俊逸ですね。
0コメントありがとうございます。すべておっしゃるとおりでございます。とても嬉しいです。
0コメントありがとうございます。ゆっくり針を落とす器用さが無いので憧れています
0コメントありがとうございます。蛾兆ボルカさんの考えた「アレ」は何だったのだろうとワクワクします。 わたしは特にこれと決めて書いてなくて、本当に何となく書きました。でも、決めて書いてみたら、もっと深く書けたかもしれませんね。 誰かに預かったもので、また誰かに預かってもらうものなら、もう少し大切にしよう、という気持ちがわくのかな、などと思いながら思いました。 ふわっとしててすみません。あまり自分のことをガチガチに書きたくなくて、他の人ならどんなこと思うだろう、と思っていたので、蛾兆ボルカさんに、何かを想像してもらえたことが何より嬉しいです。
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