その頃、私は若く美しかった
カンニャクマリの浜辺は夕暮れだった
潮の匂いが満ちては鼻先に渦を巻き
風がたおやかにあおる
私は海際に立ち、
金のスパンコールが縫い取られた、
オレンジ色の透けるストールを風に流していた
そっと夕暮れにふわふわと舞う風を見ていた
呼吸するように頑是なく嬲るように、
駄々をこねるように愛撫するように囁く風よ
すると向かいから
マザーテレサと同じ白地に蒼い線のサリーを着た修道女が通り、
私の姿を見ると、手を合わせて私を拝んだ
私は何かわからなかったが小首をかしげてお辞儀を返した
その後、親しくなったインド人の男に
その修道女の話をした
すると、男は目を輝かせて語った
彼女は君の姿の中に神をみつけたんだよ
だから拝んだんだよ
それは特別な瞬間だよ
生きているってそんなだよ
さあ、頬を撫でる風をめでよう
風が頬に子リスのように弧を描いているよ
キラキラと煌めく、残照の金の記憶よ
作品データ
コメント数 : 6
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お気に入り数: 1
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作成日時 2023-04-01
コメント日時 2023-04-03
#現代詩
#縦書き
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2024/11/21 23時38分55秒現在
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こんにちは。 過去の思い出を綴った詩ですね。 冒頭にあるカンニャクマリとはインド最南端の町で、カンニヤークーマリーという処女の女神を祀る寺院がそこにあることから町の名になったそうですね。 そこで出逢った修道女があなたの中にみつけた神の姿とは、そのカンニヤークーマリーだったのかもしれません。 「それは特別な瞬間だよ 生きているってそんなだよ」 誰にでもそんな特別な瞬間があるのでしょう。そんなときに本当に生きていると感じるものなのでしょう。むしろ人生の過去と未来がその一瞬に集結すると言えるのかもしれません。 そんな人生の特異点が「キラキラと煌めく、残照の金の記憶」であり、旅で出逢ったウルトラCなのでしょう。 美しい詩だと思います。
0良くご存知ですね。カンニャクマリの記憶は特別で美しくて、それを映しとれる詩の技術がもっとあればいいのに、と思いますが、褒めて頂いて嬉しいです。人生の過去と未来がその一瞬に集結する、とはすごい表現ですが、永遠のように、心の中で翼を持ち、記憶に残っています。 ありがとうございました。
0似たような感想になってしまいますが、 「彼女は君の姿の中に神をみつけたんだよ だから拝んだんだよ それは特別な瞬間だよ 生きているってそんなだよ」この言葉に教えられました。ただ川辺や街中を歩いていてもはっとする瞬間があり、そういうときに自分は生きているのかもなぁと思いました。
0マザーテレサの生まれ変わりを見たのでしょうか。ヨーロッパや南米、アフリカなどで、聖母の出現と言う奇跡が報告されています。この詩ではマザーテレサとの出会いの奇跡なのかもしれません。むしろこの詩には宗教色は薄く、頬を撫でる風や浜辺の夕暮れなど、そよ風の様な詩ではないかと思いました。
0特別な瞬間はそう多くはありません。たまに回顧しますが、そういう経験をどれだけ重ねられるか、それが死ぬ間際の走馬燈になるのかも、なんて思います。ありがとうございます。
0マザーテレサなんて、( ´艸`)気恥ずかしい限りですが、夕暮れの中で風を愛でる行為、そのもののなかに、聖性というか、そういう人類共通の普遍の美を見出したのではないか、などと思います。風は詩人の恋人、なぁんて。てへ。
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