忘却という名の
浸食にさらされる
世界の果て
浸食作用に抗いながら
眼前の永逝と対峙している
あなたなら
観るでしょうか
この冷酷なる世界において
愛を覚えぬ他人の生死は
夏の地平に煌めく
逃げ水の如く
冬の海に揺らめく
蜃気楼の如く
次々と現れては消える
実体のない幻だということを
今
厳然たる永逝の岸辺に在る
あなたが
誰か未熟なる者より
その未熟さ故に
傷つけられたなら
その鮮血に染まる傷口を
隠すことなく
臆することなく
その者に見せてください
何故なら
己の未熟さ故に
意図せずして
他者を傷つけてしまった
苦い記憶は
胸の奥に深く刻み込まれ
疼きとともに
その者に内なる成熟を
強く促すのですから
永逝みぎわに立つあなたへ
あなたの見せた傷口が
その者を
疼きとともに
内なる成熟へと
駆り立て続けるならば
あなたがみぎわから
旅立ってもなお
あなたの命の一部は
その者の胸の奥で
疼く記憶とともに
生き続けることでしょう
この冷酷なる世界において
愛を覚えぬ他人の内に
在ってもなお
あなたの命の一部は
幻としてではなく
確かなる実体をもつ
疼きとして
成熟として
生き続けるのです
永逝みぎわに立つあなたへ
受け継がれゆく命を
担うもの
それは決して
愛を覚える者達との
秀麗なる言葉だけでは
ないのです
作品データ
コメント数 : 3
P V 数 : 800.5
お気に入り数: 1
投票数 : 1
ポイント数 : 0
作成日時 2023-03-15
コメント日時 2023-03-17
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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2024/11/21 22時57分16秒現在
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死の哲学が優しく説かれていました。冷酷なる世界で、相覚えぬ他人のうちでさえ受け継がれていくと、死と忘却の中にあってさえ、覚悟するべきは傷を見せること、全体が受け入れることのできる論になっており、秀逸で意義深くかつ麗しいと感じました。
1コメントをありがとうございます。 これは実際の経験からいろいろ考えて書いたものです。 いわば、前回の投稿「ひどいことをしました」の続きです。 お褒めいただき、たいへん嬉しく思います。 お読みいただきありがとうございました。
1誤字の訂正です。 相覚えぬ→愛覚えぬ
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