もう、おまへはゐないはうがいいよ
骨身に滲みつかば忘却とは一枚の答案用紙過ぎらば忘るか
寝室に灯火 貌を背け背広に白き壁を見、恐れを覚ほゆ
戦争の父祖おほきみに合祀さへなくたてつづけの犬死
忠告と食卓に振る塩胡椒並べてしづやかなりし呵責に
等身大に返れよ現実の箍砲火に咽ぶ町は遠からず
報道写真に一輪の芥子菜の花迫る静やかなる崩壊は
みづからの死に愕然と醒め眠り遣らず 暗渠に崩ゆ自転車の車輪
捻子花は路傍に立てりとはいへ壁一面に機械図は
展覧会にポスターのみかかげらる概は禁煙の意図、まばらにも箝口
正気とは服装市街に馴染む調度とし揃へられたり 時代が正気ならば
きのふしのばゆ実験場に俄かにも嗜虐殺鼠剤さびて扁桃の花粉は
降り沈むアウシュビッツに消ぬ霧は晴れて人体血清実験に混る金箔
ウォーホル忌に捧ぐ酷夏白痴夢に搦め摘まれし民草とはいづれのことば
防衛論虚構を踊る現実へ黄の襯衣漂白されて、復黄に染む とも
餞別は西洋蒲公英の冠毛鉄色に戦ぎぬ機銃愛護協会へ
国家重複の歴史改竄文書より虐殺を革めて睡眠と記し
歿日のゆくへに軍歌街寒く口遊みをりプロパガンダを 或は
貧困の敵意向へる敵は みづと油へ馴染む酢は酒に似て
死守すべき紙幣輪転機の泡 風刺に鹹き勝敗相場師
パンドラ文書開かば溢れいづる百の死の取引数珠繋ぎに吊り下がり
核抑止力保持論に今朝灰の雨 影操り人形へと入れかはる
戦争へ征く貨物列車よ労働夫立たしめ唱へ食糧飢饉へ
日影指すこどもを数多眠らしめ安定剤と緘口令の ドレッシング
緊急募金箱 枢軸国より一線を画し悍ましき伏線を辿りぬ、噂
嘘と噂ハーメルの笛吹男は有触れて看過さる砲弾のゆくへ
共同通信、記者クラブ、新聞各社に告ぐる情報経路は依然 墨染
戦禍は銭貨に一円は麦何デナリ恐慌の父母写真添ゆる蛇苺
黄禍論兆すも航空機に旭日の旗振りをらむひとよ沖縄はたれかのもの
チョコレイトも薄荷の飴も舐めず来て水道水の蛇口噛むみづの音
床に散る梅軽かれよ障子戸を越えざりしかば格子堰く牡丹雪
作品データ
コメント数 : 10
P V 数 : 864.8
お気に入り数: 0
投票数 : 1
ポイント数 : 48
作成日時 2023-03-12
コメント日時 2023-03-14
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 11 | 11 |
前衛性 | 2 | 2 |
可読性 | 5 | 5 |
エンタメ | 8 | 8 |
技巧 | 3 | 3 |
音韻 | 6 | 6 |
構成 | 13 | 13 |
総合ポイント | 48 | 48 |
| 平均値 | 中央値 |
叙情性 | 11 | 11 |
前衛性 | 2 | 2 |
可読性 | 5 | 5 |
エンタメ | 8 | 8 |
技巧 | 3 | 3 |
音韻 | 6 | 6 |
構成 | 13 | 13 |
総合 | 48 | 48 |
閲覧指数:864.8
2024/11/21 23時01分47秒現在
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正直、文極の時から鷹枕可さんの作品には一度もコメントした事ないんだよなぁ。文体の問題かと思ったいたけどそれだけでもないんだろうとは思っています 読み解くと言う部分に於いて 既にそれが為されていると言う感覚があるんだよね 敢えてなぞることもまぁアリなのかも知れませんが しかしその段階でやはり俺の趣味ではないなぁとかも思うんですよね 筆力は高いとは思いますが 正直苦手な書き手ではある 麦わら海賊団 ゾロ
1ありがとうございます。 九分九厘、虚飾ですが。 説明過剰なのでしょうね。 食中りの吐瀉物に、更に吐気を来しております。
0色々と知らない言葉を辞書でひくのが、楽しかったです。ひとつだけ自分の記憶とリンクした短歌が >忠告と食卓に振る塩胡椒並べてしづやかなりし呵責に 幼い頃、父母によく叱られたのですが、その時に、食卓に並べられていた調味料を眺めていたことを思い出しました。今でも、アジシオや味の素を見ると思い出します。今は、自分の子供にきちんとテーブルに座らせて注意していない自分のことを反省しました。
0陰謀的な陰謀が出回っているのが現実
0ご閲覧賜り、嬉しく存じます。 矢張、短歌の真価は其方に在ると、思いました次第でございます。 なにごとも、みじかにおもしろく。
0ご閲覧賜り、嬉しく存じます。 現実めいた陰謀論に突き動かされるのも人の性ですから、難しい処ではございますが。
1追伸.少年漫画は小癪に障るので、読みません。
0いかにも日本語の特性に依存した詩に見えがちですが、意外にも英語との親和性は高いのではないかと思います。 私はあえてひらがなにした、日本語で読まないと意味の無い詩は好きではないのですが、この詩は良いと感じました。 言語の普遍性について、考えるところがあり、勉強になりました。
0ご閲覧賜り、嬉しく存じます。 網膜的心象を、言語に落し込む作法を以て記述をさせて頂いておりますので。「普遍性」の様な某かは其処から産れるのではないかと。思いました次第でございます。
0追伸. ※本作は、atsuchan69様の作品 「私の名は、スタヴローギン! (2023年改訂版) 」に只ならぬ触発を受けまして、記述をさせて頂きました。 多大なる感謝の念と共に、此処に付記をさせて頂きます。 斯様に拙い作品より、原典を参照されたくも存じ上げます。
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