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啓蟄
冷たい風と柔らかい光が せめぎ合いながら冬を終わらせる 堪え切れなかった涙が落ちる 私の負けだ。 強がりの季節は、季節である限り 「時」に敵わない。 雪解け水が堤を切ったのだ。 取り返しのつかないことを してしまった後の朗らかさは、 春の訪れに似ていた。 破滅は私に優しかった。 冬の空気の匂いは 涙のそれと同じで、 吸い込むたびに泣きそうだった。 私は白旗の代わりに 紺のスカーフを掲げよう。 「春」を名に持つ冬、その終わりに 自縄の日を見送るために。 海に出る日に私はセーラー服を捨てた。
啓蟄 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1020.5
お気に入り数: 1
投票数 : 2
ポイント数 : 61
作成日時 2023-03-06
コメント日時 2023-03-24
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 30 | 30 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 5 | 5 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 16 | 16 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 10 | 10 |
総合ポイント | 61 | 61 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 30 | 30 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 5 | 5 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 16 | 16 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 10 | 10 |
総合 | 61 | 61 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
とてもいいと思います。
ありがとうございます。
0はじめまして。 悲しみと絶望に満ちた詩ですね。 自分の心が深い絶望に囚われているとき、冬から春への季節の移り変わりは、かえってひどく残酷に感じるものなのかもしれません。 1連目にある、 「強がりの季節は、季節である限り 「時」に敵わない」 という部分からは、悲しみを時が癒してくれる所謂「時薬」や「日にち薬」と呼ばれることの裏返しのような印象を受けました。 薬が使い方によっては毒ともなり得るように、時も状況によっては人を絶望や破滅へと導いてしまうという感じです。 2連目では、「取り返しのつかないことをしてしまった後の朗らかさ」や「破滅は私に優しかった」という、感覚の転換があります。 それらのところに、独特の感性が光っています。 そして、末尾では不穏な雰囲気を纏ったまま終わっているようにも見えますが、タイトルは「啓蟄」。 秘めたる微かな再生への想いが、そこに込められているのかもしれません。 秀逸な作品だと思います。
1セーラー服を捨てた、という言葉が、春を迎える時を受け止める素晴らしい態度を表していて、鮮やかなイメージが浮かびます。その他にも、雪解け水が堰を切ったとか、印象的な言葉がたくさん。1季節における感慨を描いている。悲しみや切なさを抜け出そうとする希望の季節、春へと心を向けられます。春の詩というと武田地球さんの「ある春」 https://www.breview.org/keijiban/?id=5025 がどうしても浮かぶんですが、この詩は前向きに捉える潔さが表現されてると思います。
1春隣と言うしゃれた季語が有るのですが、冬の終り。最後に出て来るセーラー服が印象的なのですが、海に出る日に捨てたと言うフレーズも印象的で、終わりを締めて居ると思いました。
1m.tasakiさん、黒髪さん、エイクピアさん、ありがとうございます。
1とても上手く纏まっているなあと思った。筆致もボクなんかよりずっとしっかりしている。「破滅」という語彙が少々大袈裟にも思えたが、妄想癖のあるボクにはあんなことやこんなことまでも想像させてくれたのでこれはこれでアリかとも思った。でもやっぱり、違うことばを使った方が作品として万人受けはするだろうな。
1ご指摘ありがとうございます。参考にします。
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