フィラデルフィアの夜に 39 - B-REVIEW
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フィラデルフィアの夜に 39    

フィラデルフィアの夜に、針金が惑わします。  夜に、大急ぎで車が駆けていきます。 その中には顔を隠した男たち。その後ろには縛られた少女がいます。 物騒な夜、攫われてしまったのです。  誰もいない森の中を車はますます速度を上げ、真っ暗闇の中へ中へと突き進んで行きます。 男たちが潜んでいる闇に沈み込んでいるかのような小屋に着き、車のヘッドライトがその小屋を照らしたその瞬間でした。  小屋の前に、何かがいる。  古い小屋、その入り口前。 何かが蠢きのたうつ。 警戒と共に男たちは近づいていく。 音もなくそれは立ち上がった。 針金だ。それが人の形を取って、立ち上がった。 そして、縛り上げたまま車の中に閉じ込めている少女の姿となる。  一体なんだ。 男の一人が素早く車内をライトで照らす。 いない。 もう一度、小屋の前。 いない。 男たちの仲間がいるだけ。 消えてしまった、と茫然と口にして。 車の中、少女を縛っていたロープがテープが、転がっているだけでした。 少女の体と同じ量の針金が、絡みつきながら。  誰も見ていない夜の闇の中。 針金が一本、地面から伸びてきました。 それは螺旋を描き、絡み捻じり、巻き上がり、立ち上る。 それは隙間なく合わさり、人形を作る。 色付き始める。それも本物の人間の色に。 色も形も本物の、本当の本物となっていく。 最早、それはあの誘拐されたはずの少女そのものでした。  少女は気づきます。 ここは自分の家の近くだと。 それならあの誘拐された記憶はなんだったのか。 ちっともわからず、明るい光が零れるわが家へ入っていくのでした。 家族が心配して待っている家に。  それを月だけが見ていました。 誰も何もわからない夜の出来事を、月だけが見ていたのです。


フィラデルフィアの夜に 39 ポイントセクション

作品データ

コメント数 : 4
P V 数 : 790.5
お気に入り数: 0
投票数   : 0
ポイント数 : 0

作成日時 2023-02-11
コメント日時 2023-02-13
#現代詩
項目全期間(2025/04/15現在)投稿後10日間
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閲覧指数:790.5
2025/04/15 12時59分20秒現在
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    作品に書かれた推薦文

フィラデルフィアの夜に 39 コメントセクション

コメント数(4)
吸収
吸収
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(2023-02-12)

連作ものですか 他の0から半分位読んだけど マジックリアリズムってコトなのかな 個人的な意見になるけど 飽和状態を意識してないんじゃ無いかと思いました 水が水蒸気に変わるみたいな なんと言うか 形式だけと言うか考えそのものが浅い気がしたな 下手な手品を見せられている感じ 相が変わる様な意識の昇華は見られなかったな、雰囲気はあるんだけど残念と言う印象が強かったな。

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羽田恭
吸収さんへ
(2023-02-13)

結構な量がある中、半分程読んでいただきありがとうございます。 マジックリアリズムという言葉を初めて目にし、少し調べてみた限りではそれに近い物がある様に思います。 こういうカテゴリーがあったのですね。 飽和状態、相が変わる様な意識の昇華などそのような事は一切考えずひたすら自分なりに良い物を書こうとして気づいたらこうなったようなものなので、浅いと言われても仕方ないです。 飽和状態という概念はどのようなものなのか、興味あります。

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吸収
吸収
羽田恭さんへ
(2023-02-13)

飽和状態とはマジックリアリズムに対しての現実的な仕掛けを使い切った状態の事を俺的には考えていました非現実的な描写が効果的に作用する為の作業があまり意識されていないのでは無いかと言う意味ですね。

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羽田恭
吸収さんへ
(2023-02-13)

返信ありがとうございます。 確かに現実的な仕掛けを使い切ってはいないですね。マジックリアリズム自体知らなかったですし。 >非現実的な描写が効果的に作用する為の作業があまり意識されていないのでは無いかと言う意味ですね。 全くをもって考えていませんでした。 どこまでこれをやれるかわかりませんが、少しは考えてみても良さそうです。

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