到来
王宮の回廊には廿伍人の衛士が控へてゐました
面頬を上げると夫夫に驚く可き冒険譚を語りだすのでした
夜な夜な王様は酒杯を傾けつつ衛士たちの物語に聞き入り
実に心酔をした様子にあられました
ところが廿伍人目の衛士は面頬を上げるなりどつと泣き崩れたのです
聖なる御子の降誕の夜に何と怪しからん事だ!
王様は激しく憤り跪く衛士の頸をひと太刀に切り落として了ひました
さてかれはいつたい何を哀訴したかつたのでせうか
その頸は胴をはなれてもなほ嗚咽を漏らしつづけました
王国が衰退し王宮の仕えびとがひとりまたひとりと去つて行つても
ずつとずつと
とは申しましてもそれは勤勉にして敬虔な王様が身罷つて
ずいぶんのちの事で御座ゐますが
作品データ
コメント数 : 3
P V 数 : 1192.8
お気に入り数: 0
投票数 : 2
ポイント数 : 0
作成日時 2022-12-23
コメント日時 2023-01-04
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
| 平均値 | 中央値 |
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 0 | 0 |
閲覧指数:1192.8
2024/11/21 19時43分34秒現在
※ポイントを入れるにはログインが必要です
※自作品にはポイントを入れられません。
おはようございます。 一連目では衛士たちの冒険譚があり、二連目では《聖なる御子の降誕の夜に何と怪しからん事だ!》という王の言葉と、「聖なる御子の降誕の夜」(の遠い物語)があり、三連目では「哀訴」があって、語り手による語りのなかに、登場人物たちによって語られたり折り込まれたりしている物語があるという〈語りのなかの語り〉に、うまいこと書いてやがるなあ!と思いました。 三連目で当初の語りのなかに流れている時空は「嗚咽」を残したまま、未来に流れていくわけですが、最終連で〈当初語られていた過去ー聖なる御子の降誕があった過去〉のさらに過去へ引き戻されるという長い時間の往還があり、時間構造がしっかり作られているところも好みです。 時代がかった語り口や旧仮名が効いていて、最終連で諧謔味をも感じさせます。タイトルからして何かが到来するのかと思いきや、既に到来していたということなのだろうと受け取りました。全体として短い作品ながら過不足なく仕上がっていると思います。
1ストロングスタイルな作品に挑戦。すみません、ライトコメントですが、第二連の「ところが」には一瞬戸惑いました。なんだろう、「語りだすのでした」というと、日夜それをやっているという、習慣の説明っぽいのですが、本当は、こんばんはそうです、ということですよね。 すみません、難しい漢字が多いので、勉強します。
125人の衛士が1人ずつ物語をしていくという設定で、クリスマスの「到来」(こういう言い方が日常的な用法なのか分かりませんが)を上手く読み替えた作品だと思いました。最終連の解釈はかなり開かれているように思えて、何ともコメントできません。
1