あづさゆみ引き絞る捻子わかたれて科学発展のかはたれをしばし眠りぬ
花の鐘あはやかにもほころべるらし蝶形の飛行機よりふりまかば
天球を懐かしむ深淵のあはひにひとつぶ蒔かれ千種も花へと
地球儀のあをぞらを亙れかりがねは忘失の傷みをかかへうつろへるとも
唱ふ蟋蟀忌はしからずも今しがた雅歌のほろびに麦肥ゆるかな
召命の後のバビロン、エジプトにて選ばれざる土地の民とこそ手を取れ
血縁の色濃き確執葡萄の血をみづから択びたる耶蘇に
貶されて地に堕ちたるヤルダバオトの名そむきてもまもるべきものとはたれか
罪の証明地をやきはらふかみがみの忌名を匿し創世記録は
犠牲乞ふ普くひとよ存在とはみづからに肖せ創造主を模りぬ
血の分断 優生学のゆくすゑはわざはひを熾せる火種とならむ
忘我さへ許せよ近代理性たる領分は抽象都市印象にさへも雑じらず
礎の花踏みにじられて色新たし銭貨にさへかけがへもなきそのとき
冬の椿耐へて雪解けを俟ち燦爛たる春を焦がれて実れる 血と莟とは
抒情追放 詩論幾許かを延命し取りこぼしけり風物の記憶を
暴力史 過去殺害の累卵に正義は薔薇のごとく翻る
国旗の下国家をもたざる群像の充ちていづくへか帰るもあらず
一秩序統一統制下に宥和を赦されざるわかものの痛みを
抽象論ばかりなる軒列なりて石棺に似てひとを隔てり
航海日録円窓に溺れ蝋梅うなぞこへ降りぬ 滝壺を為し
渦巻ける秒針円時計に周り砂漠の庭園砂へ埋もる
死者の閨静かにも嬰児を育みゐたる 防空壕に
流刑地十二番地にて受話器のみが断絶を伝へり。全き滅亡
電気椅子海潮の鉛寄せ帰る縁にて錆び付きゆかむ 鴉一羽
砂礫砂塵降り掛かり枯れ乾きゐむかつての緑陰へ
死を思へ花盛りの庭園はいまだつひゆるべき豪奢に充ちて
ラオコーンの彫像みづを吐き人工泉の束の間を遊園せよ
ヴェネツィアの噴泉血を湛へつつ忙殺と殺戮の美術史を
始原には闇耀耀たる黒聖母嬰児基督はそを拒み
創造の七日を経て猶足らず在り敬虔無垢たるみづからの、
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作品データ
コメント数 : 5
P V 数 : 802.2
お気に入り数: 2
投票数 : 1
ポイント数 : 38
作成日時 2022-12-22
コメント日時 2022-12-23
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 8 | 3 |
前衛性 | 5 | 0 |
可読性 | 5 | 0 |
エンタメ | 3 | 0 |
技巧 | 7 | 2 |
音韻 | 5 | 0 |
構成 | 5 | 0 |
総合ポイント | 38 | 5 |
| 平均値 | 中央値 |
叙情性 | 4 | 4 |
前衛性 | 2.5 | 2.5 |
可読性 | 2.5 | 2.5 |
エンタメ | 1.5 | 1.5 |
技巧 | 3.5 | 3.5 |
音韻 | 2.5 | 2.5 |
構成 | 2.5 | 2.5 |
総合 | 19 | 19 |
閲覧指数:802.2
2024/11/21 22時53分44秒現在
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鷹枕可氏の短歌について歌誌「帆 初号」(主宰者中田満帆氏Twitterを詳しくはご参照ください)のなかで複数人が「よくわからないが良い」という趣意の感想を述べていて、私はその「わからない」としてもいいんだとハッと思った。わからないものはわからないということ、でもなんかこれ良いよねという疑い削っても残ればその感想はとても説得力がある。今作もそう(いや、今作はタイトルの叛骨さと律動の崩しが連動していて良さが判別出来る方だろう)。未だに子供みたいな短歌(いやそれいい味だと思うが)しか書けない三浦も頑張りたいと思う。
1「わからない、けれどもよい」、私にとりましては身に余る程の至上の称賛でございます。 作歌より最終推敲迄時間をかけました甲斐もあるとも思えまして、允に嬉しく存じます。未だに躓いてばかりの俗人ではございますが、一層鍛練に勤しみたく存じ上げます。 三浦様に於かれましても、純粋に作歌をお楽しみになられましたならば、その作物もおおいに報われることと存じます。 願わくば。皆、ひとりとてあぶれることもなく、徐々にでも活路を見いだせましたなら、心嬉しく。
0硬く、強い言葉がかちり、と組み合って、それでいて楚々と美もあり、名前は知らないけれど、白百合のような短歌に感じました。白百合の小首を傾げた憂いと意志の顎、その姿かたちの凛、白という克己の色、言葉が闘っているというか、ひしめいて、やあやあ言っているみたいな騒擾もはらんで、それでいて白百合の美がある、そんな印象です。
0ご講評、及び美しいイメージを賜り、心より嬉しく存じます。 何処か硬質な印象を払拭為し得ない文体は、良くも悪くも付いて回る業の様なものでございましょう。 賜りましたお言葉より、石化した白百合の花、というフレーズが泛びました次第でございます。 湖湖様の感受性の美しさを反映できましたかは、微妙な所ではございますが。
1ご講評を賜り、心より嬉しく存じます。 私が日本人であり、日本的叙情を惜しんでおります事には同意を致します。 然し、凡俗の徒である私にとりましては、舶来の語彙(例えばヤルダバオト、等)を没個性的独善性に拠ってしか解釈の叶わず。 此処に自身の想像的秩序の限界を感じる事も頻りでございます。 宗教解釈も罷り間違えばカルトと成って仕舞いましょう、 ですから、何事も程々に、架空概念として割り切る姿勢が必要なのだと、痛感を致して居ります所存でございます。 知恵や教義とは畢竟そのようなものであり、僅かにも醸成をされた滋味を嗜む為にこそ、連綿と遺されているものと、私自身は思っております。 室町様に於かれましては、何時も丁寧に読解を賜りまして、頗る感謝を致しております。 いつも、ありがとうございます。
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