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恋する惑星が。
1ゲームのてつと木村魚拓はつくづく相性が悪くて、動画観てると気持ち悪くなるくらいの、寒い夜。雪が降る、初雪。孤立した着火剤は、誰に火を灯すでもなく、木星の淵に落ちた。僕の家は小高い山にあって、ループする音楽は近所のパチンコ屋に大抵着地する。想い出の瞳も、マウント取りの猿もそこにはいなくて、静かに銀玉が落下していく。今日は何万勝ったとか、何万負けたとか数えながら中華街のネオンサインにも似た派手なリーチアクションを、眺めている。 振り返る恋人はいない。信号の前に立つ新しい女性を見据えて、手駒の数を増やしていく毎日。出来るならばすぐにでもフラッグを振りたいのだが、今はまだ背骨の傷がうずいている。傷がふやけて目に見えなくなるまで、夢にさえ見なくなるまで、待つ。職場には、僕が姫様と呼ぶ女性がいて、元はネイリストだった彼女は香ばしい気品と、一目目にしただけで男性を木星にする愛嬌を持っている。でも姫様は姫様だ。僕より数段上にいて、届かない。それに何しろ彼女にはもう、案内人がいる。小高い山から臨めるのは、元職場の先輩から送られてくるラーメンの写真と、二人のくだらないが、最高に笑えるやり取り。そして僕が本当に待ち望んでいる女性。 八畳渡辺編集の詩誌BONEは、なし崩し的に三冊買ったが、第1号しかまだ読んでいない。タイトルからしてずっと惹かれていた、東野幸治著作の「泥の家族」も三分の一ほど読んで放置したままだ。仕事が終われば中華街のラッパと大砲が鳴る、銀玉屋へと自然に足は出向く。ひがしのり、泥の家族って言いながら結構健康的な家族やん? と少し冷めた視線を本の帯に送りながら。キスはしたいが、金を払って女性を買う性根は元々持っていないので、朝も晩もあの娘のことを空想していく。きっと木星の脇で彼女は浮遊して、眠りながら、看護師になった真夜中の未来を、今は生きているはずだ。僕は木星のなり損ないとして流星になるか、自由な星、として軌道上を生きるかの分かれ目にいる。呑気なのは今日もけたたましく鳴り響く、ジャグラーの払い出し音だけだ。 ふぁわおん、ふぁわおん、ふぁわおん!!! うるせえー、冗談は粗品のジャグラーモノマネだけにしとけ。今日は4万ぶっ込んで7万円のリターン。食べたのは黒胡椒の鶏肉料理、これがやけに旨いんだ、と餃子。ニンニクは控えめにした。街はどうやらサンタクロースが贈り物を届ける時期らしい。親から貰ったプレゼントを手にして「お母さん、サンタはいたよ」とわざとらしくも、優しかった幼子の頃を回想する。地面と天井はグルリと一周して、今頃涙の粒と乾いた笑い声は、空気の底だ。寂寥。炭酸水にカルピスを入れて一飲みし息をつくと、サラリーマン鏡に悪態をつくガット石神へ、ガット、なに台に当たってんだ、と笑ってツッコむ雪夜が消沈していく。あの娘に何かプレゼントしなきゃ。恋する木星がもう一度アンドロメダ近辺を飛び始める。
恋する惑星が。 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1103.3
お気に入り数: 0
投票数 : 3
ポイント数 : 7
作成日時 2022-12-15
コメント日時 2022-12-16
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 2 | 2 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 3 | 3 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 2 | 2 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 7 | 7 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 2 | 2 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 3 | 3 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 2 | 2 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 7 | 7 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
これが金城武なみに見た目がイケてる男が書いている文書だったら説得力がある。けれどもイケてる男はそもそもこういう愚痴を美化するような言葉を公で吐かない。つまりは読む人が読めば直観する虚構のハリボテ感。ところが母性本能からでる優しさある人はこれを読んでも王様が裸だとは絶対に指摘しない。それを偽善者というし、指摘をしないことを欺瞞という。で、もっと云うと、書く技能としてはそれなりに優れている。だから一面的には優れた書き物だし、賞賛されておかしくない。詩は猫被りでいいという言説もあるのだからそこからすれば正統派ともいえる。比較対象としてゼンメツ作品を挙げてみようと思う。(最近はゼンメツさんを比較対象にすることが多いな)ゼンメツ作品もパッと読みの印象でいけば同類のハリボテでウェットな儚い気分に満ちている。作者自体は可読性を重要視していらっしゃると最近知った。けれども、可読性重視とはこの作品を指すのだ。私から言わせれば。ゼンメツ作品は可読性の観点からするとかなり読みにくい。一方で本作は読みやすい。わかりやすい。これに共感など私は絶対にしない。わかりやすくカッコいい服は着ない。カッコいいと感じる「.着こなし」これがゼンメツ作品にはある。本作はただただ「カッコいい服を着ている」だけなのだ。でも、そこまで深読みすると、本作の作者はダサかっこいいとも云える。作品なんて、人なんて、どうにでも言えるんだよね。だから誰だって大賞は取れる。この作品だって大賞になってもおかしくない。そういう意味で一票。つまり優劣とは無関係に投ずる一票があるということ。
2まずコメントを一読して思ったのは、相変わらず俺は読めるぞ、見えるぞのマウント取りお疲れ様ということ。でもそれでは余りに味気ないし、優れた熱論への返答として余りに面白くない。カッコいい服を着ている、虚構のハリボテ感。よく見抜きましたね。この作品における筆致、あるいは作風はある意味付け焼き刃的なものなんです。僕の今現在のリアルが過剰なまでに反映されているものの、作風からすれば今手に取ったばかりのもの。だから虚構、ハリボテだと感じるのは、当然あり得ることでもある。ダサカッコいい。何だかんだ言って人と作品ってなかなか切れないものですからね。その評価は妥当でいい線行ってるんじゃないかと。でも、コメントを読んで正直ホッとしましたよ。三浦さんがただのお猿さんじゃないと分かってね。熱く語ってるのに、熱量は凄いのにただの猿だったら本当にカッコ悪いからね。お見事。いい目してる。コメント、評論に一票あげたいくらいだ。
2的外れかもしれませんが、随所にスピッツが散りばめられている気がしました。 まず、タイトルを目にして『恋する凡人』と『惑星のかけら』が浮かびました。 そして、本文から以下の曲の歌詞を連想しました。 ・「魚拓」「つくづく相性が悪く」→「魚になれない魚 (魚)」 ・「孤立した着火剤」→「消えたフリした炎でも 火種は小さく残ってた (恋する凡人)」「消えかけた火を胸に抱き (優しいあの子)」 ・「想い出の瞳」→「子供の目で僕を困らせて (君が思い出になる前に)」「焼きついて 離れない瞳 (恋は夕暮れ)」「驚いた君の瞳 (ロビンソン)」 ・「マウント取りの猿」→「サルからヒトへ枝分かれ (ナイフ)」「誰もが寂しがりやのサル (裸のままで)」「はぐれ猿でも調子がいい (スピカ)」 ・「振り返る恋人はいない」→「ふり返ることなく歩いてる (恋のうた)」 ・「背骨の傷」→「骨の髄まで愛してよ 僕に傷ついてよ (惑星のかけら)」「そっと背中に触れた 切ない心、骨だけの翼 眠らせて (インディゴ地平線)」「思い出は今も 僕の背中をなでる (砂漠の花)」 ・「夢にさえ見なくなるまで」→「夢見るとか そんな暇もない (魔法のコトバ)」「夢からハミ出す (砂漠の花)」 ・「香ばしい気品」→「君みたいな良い匂いの人に 生まれてはじめて出会って (恋する凡人)」 ・「くだらないが、最高に笑えるやり取り」→「くだらない話で 安らげる僕ら (愛のことば)」 ・「泥」→「泥沼の中に落ちて、ぼくらの体は泥だらけ (泥だらけ)」 ・「真夜中の未来を、今は生きている」→「夜を駆けていく 今は撃たないで (夜を駆ける)」 ・「流星になるか、自由な星、として軌道上を生きるか」→「流れ星 本当の神様が 同じ顔で僕の窓辺に現れても (流れ星)」 ・「贈り物を届ける」→「とどめのプレゼント (トゲトゲの木)」 ・「涙の粒と乾いた笑い声は、空気の底だ」→「君のまつ毛で揺れてる水晶の粒 (涙)」「涙でごまかしたり、くす玉が割れて笑い声の中 (謝々!)」 ・「鏡に悪態をつく」→「歪んだ鏡 (魔女旅に出る)」「鏡に映る妙な男 (恋する凡人)」「無慈悲な鏡叩き割って (1987→)」 ・「恋する木星がもう一度アンドロメダ近辺を飛び始める」→「飛べ ローランダー 棕櫚の惑星へ (ローランダー、空へ)」 作品自体への考察ができず申し訳ないんですが、色々思い浮かんで楽しかったので、ついついコメントさせて頂きました。
1女にもてないというのは、運命の女神に愛されてないということなので、大きな苦痛ですね。 それは、大きな犯罪がモテないということから起こったことが結構あることからもわかりますね。
0Snydamさん、コメントありがとうございます。凄いですね!スピッツの歌詞との連結。楽しく読ませていただきました。Snydamさんのスピッツへの愛も感じる。草野マサムネさんとの詩世界とリンクするところがあったというのは喜びの一つなのですが、同時に既出でもあったということなので、もっと大きな殻を破らなくては、と思うきっかけにもなりました。スピッツ。実は僕、余り得意ではないんですよね。サウンド面でもっとドッカンドッカン行くのを好むので。でも草野さんのシンガーソングライターとしての能力はリスペクトしています。何れにせよSnydamさんが多くの時間を割いて、楽しんでいただけたということなので、それに勝る喜びはないです。何だかスポーツ選手の勝利者インタビューみたいな文面になってしまいましたが、ありがとうございます。嬉しかったです。
2アポロンさん、コメントありがとうございます。なぜこの作品を読んでこのような感想が届いたのかよく分からないのですが、モテない男の単なるボヤキにでも見えたのか、だとしたら単調だなと。それはそれとして異性に不遇であるということが、大きな犯罪につながりやすいというのは、データとしては一面あったとしても、淡白な解釈に過ぎるかと。どちらにしても少しでもアポロンさんが読む時間を取ってくれたのならば、これ幸いです。レスレスはご遠慮いたします。
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