二〇一九年九月一日 「詩論」
音には意味がない。
二〇一九年九月二日 「詩論」
小学校時代に飼っていたカイコを思い出す。カイコは、飼っていた箱のなかに入れてやった毛糸の屑や色紙の紙片や布切れなんかをつかって、自分の繭をこしらえた。しかし、ぼくの自我は、万華鏡の鏡の筒だ。入れられたプラスチック片や毛糸の屑などを動かしては、いろいろなものに見えさせる。
二〇一九年九月三日 「キッス」
どんな唇がいいって訊かれたら、やわらかい唇と答えると思う。だれもぼくに訊かないし、ぼくもひとにたずねたこともなかったけれど。このあいだキッスをしていて、そう思ったのだった。そういえば、1年くらい前に、7時間近くしてたこともあった。いくら好きでもさすがに最後は吐き気がしたのだけれど。
二〇一九年九月四日 「思い出」
醍醐中学校での思い出。デブの男の子で、顔も日に焼けて真っ黒だった子がいて、そいつんちは大きくてお金持ちだったのに、肘のところを縫い繕った学生服着てて、笑うと、並びの悪い歯がのぞいてた。この田舎者って思ってたけれど、ぼくがしんどくなったとき、「大丈夫か?」って言ってくれた。子どものときの思い出からかな。ぶさいくで、デブで、バカっぽくて、というのが、ぼくが好きになるタイプのようだ。でも、ほんとにぶさいくなのはダメで、ブサカワでなくてはならないし、デブにも限度があるし(かなり広いとはいえ)、バカっぽくてもバカはだめだし、けっこうグルメだ、笑。前彼に、「ぶさいく言うな。」と言われた。まあ、あたりまえか。ぼくなんか、ぶさいくって言われても平気なんやけど。デブも言わんといてと言われたけど、どこから見てもデブはデブだし。でも、感性はすごくよかった。絵も上手やったし(父親がプロの画家)、字もヘタウマでかわいかった。
二〇一九年九月五日 「階段部」
ユニークなひとがいて、フォローしたのだが、「階段部」なる部活動をしているらしい。階段を上ったり下りたりするだけなのだろうか。ヘラクレイトスの言葉が思い浮かぶ。上るのも下りるのも一つの道であると。たしかに、上るのも下りるのも一つの階段ではある。(道は未知に、階段は怪談でもよい、笑)
二〇一九年九月六日 「考察」
あまり長いあいだ、自分の顔を鏡で見つめていると、別のものを見ることになる。
二〇一九年九月七日 「詩論」
詩句を目にして、すごく感動することがあるが、忘れてはならないのは、その詩句の意味を受け取って解釈しているのは、読み手である自分であって、詩句のその力がつくり手によってもたらされたのではないことに注意すべきである。つまらない詩のなかの詩句にこころ動かされることがあるのだ。
二〇一九年九月八日 「考察」
自分の過ちを認めずに生きていくこと。これほど自己形成にマイナスなことはないだろう。
二〇一九年九月九日 「胆石」
きょう、病院でわかったこと。胆石がたくさんできているとのこと。手術しますか、と訊かれて、手術しないでもいいのですかと返事すると、じゃあ、しないことに。とのことだった。とっても不安。薬で治らないものなのか、薬の話は出なかった。ネットで検索すると、漢方薬が出てきたけど、わからない。
二〇一九年九月十日 「日原正彦さん」
日原正彦さんから、詩集『降雨三十六景』を送っていただいた。過激な表現はなくて、落ち着いた筆の運び方をされてて、おいくつくらいの方なのか、気になった。もしかすると、ぼくより年上の方かもしれない。奥付を見たら、そうだった。14歳、齢上の方だった。
二〇一九年九月十一日 「渡辺めぐみさん」
渡辺めぐみさんから、詩集『昼の岸』を送っていただいた。詩中の詩句から、ケッセルの『昼顔』とミルトンの『失楽園』という取り合わせは、すてきだなと思った。もちろん、ぼくも好き。言葉のたたずまいが静かだ。ひっかかるところは一か所もなかった。
二〇一九年九月十二日 「丸田麻保子さん」
丸田麻保子さんから、個人誌『黒々と透明な』を送っていただいた。改行詩ばかりが載っているのだが、頭のなかで繋げて読んでいた。それくらい自然な筆運びということなのだろうと思う。エッセイもすてきな小品集だなと思われた。
二〇一九年九月十三日 「胆石除去の手術」
きょう、病院に行った。胆石除去の手術を受けることにしたのだ。手術は10月6日入院7日手術ということになった。しかし今後変更されるかもしれないということだった。それまでに、1週間に一度、CTスキャンだとか、MRIだとか、内視鏡検査だとかで手術前の検査が目白押し。きょうは血液検査とX線と肺活量を調べる呼吸器官の検査をした。
大谷良太くんに付き添ってもらっての受診だったので、こころ強かった。高額医療費の負担軽減についても教えてもらって、手続きした。
二〇一九年九月十四日 「ひさしぶりに」
なんかひさしぶりに詩が書けそうな気分になった。
二〇一九年九月十五日 「感想」
はじめて知ること。この齢、58歳になってもまだある。
二〇一九年九月十六日 「長田典子さん」
長田典子さんから、詩集『ニューヨーク・ディグ・ダグ』を送っていただいた。詩句にあふれた英語の音がすばらしい。さまざまな題材に触れるのも楽しい。長田さんのこころに何年間ものあいだ蓄積されたものが言葉を外の世界に開放しているような気がする。
二〇一九年九月十七日 「CT検査」
CT検査を受けてきた。たいして怖くなかった。手術も、それくらいの怖さだったらいいな。CT検査費用8600円。高いなあ。
二〇一九年九月十八日 「草野理恵子さん」
草野理恵子さんから、詩集『世界の終わりの日』を送っていただいた。草野さんの詩は、詩集は、短篇集を読むのに似て、楽しみが尽きない。題材が、ぼく好みのものであることも理由になるのだろうけれど、作者の日常生活と執筆された作品とのギャップを見てみたい気にさせられる。それは知りえないこと。
二〇一九年九月十九日 「中井ひさ子さん」
中井ひさ子さんから、詩集『そらいろあぶりだし』を送っていただいた。会話が多くはさまれる散文詩が収録されている。じつに読みやすい。読みやすいのは、文体がなめらかであるからだと思うのだが、思考の流れも難解さがなく、ごく自然だ。じっくり味わえる詩篇たちだ。
二〇一九年九月二十日 「わが名はコンラッド」
日知庵からの帰り道、オーパのブックオフで、ゼラズニイの『わが名はコンラッド』を買った。部屋の本棚にあるかもしれないけれど、読んだこともある本だと思ったけれど、もし、なかったらと思って買った。帰って本棚を見たらあった。108円だけれど、もったいないと思った。
二〇一九年九月二十一日 「あしたの予定」
あしたは、大谷良太くんちに遊びに行く予定。
二〇一九年九月二十二日 「ラッツ&スター、シャネルズ」
ラッツ&スター、シャネルズの本を2冊、持ってたんだけど、詩にも引用した文章が載ってるんだけど、手放してしまって、いま、Amazon で見たら、4000円とか5000円くらいしてて買いなおそうという気が起こらない。高いわ。
二〇一九年九月二十三日 「高塚謙太郎さん」
高塚謙太郎さんから、詩集『量』を送っていただいた。レイアウトに腐心された、大冊の詩集だ。野心的だなと思った。野心をもつことのできるご年齢の方なのだとも思った。できうる限りの実験をされているようにも思える。詩は実験だ。
二〇一九年九月二十四日 「草野理恵子さん」
草野理恵子さんから、同人詩誌『Rurikarakusa』12号を送っていただいた。詩はうまいものだと感心する。あとがきの逆説的な顛末にうなずいた。
二〇一九年九月二十五日 「MRI検査」
MRI検査を受けてきた。疲れた。3810円。CT検査よりは安かった。
二〇一九年九月二十六日 「夢」
夢を見た。学園モノのドラマだ。ぼくは30代なのに元カレと同じ20代前半。空手を使っていた戦闘ドラマだ。敵役に中国人たちが出てきた。ぼくと元カレは仲間だった。途中で目が覚めたのが残念。
二〇一九年九月二十七日 「同じ顔の人」
世の中に同じ顔の人が3人いるってことだけど、500人はいるはずだよ。だって、ぼくたち、工場で、毎日、同じ顔の人間を500人つくっているもの。
二〇一九年九月二十八日 「京極娘」
彼は京極娘だった。しかも京極娘以上に京極娘だった。京極娘として生まれたわけではなかったのだけれど。
二〇一九年九月二十九日 「考察」
性格はほぼ無意識に形成されるもので、いったん決定的なものになると変わりようがないが、個性は意識的に選択したものからも形成されるものであり、本人の意志次第で、いくらでも変更や更新ができるものである。
二〇一九年九月三十日 「胃カメラ」
きょうは、胃カメラだった。9060円。検査費用でいちばん高かった。
鼻にチューブを入れられながら、ピロリ菌がいますねと言われた。
二〇一九年九月三十一日 「考察」
思い出すことをやめたときにはじめて恋人は自分のもとから離れていく。それまでは思い出すたびに、その恋人の同じ顔を見ているのである。時がたち、自分が変わったり当時の状況の解釈が変わったりすると、恋人は別の顔を見せる。過去の状況で見受けられる恋人の別の顔ほど驚かすものはない。
作品データ
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作成日時 2022-12-04
コメント日時 2022-12-04
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2024/11/21 23時22分03秒現在
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