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僕たち私たちの恋愛日記
万梨阿(29) 昔ちっちゃなアパートで恋人と暮らしてた。ふたりとも行く場所なんてどこにもなくて ずっと昔の映画を見てたばこを吸うだけだった。傷つけ合いのための関係を愛と呼んで、よく泣いていた。 みどり(21) 僕は古本屋さんの店員の女の子と付き合ってた。彼女に別れを告げられる前の日にその子の働いている古本屋さんに行って本を整理してる彼女にキスをしたら「みどりくんは何もわかってないわ。世界一ばかなひと。私がいなくなったら誰があなたにそのことを教えてくれるの?」って言って泣かれた。僕はただなみだでキラキラしている彼女のひとみだけを見ていた。 ユリ(26) 生まれた町が大嫌いだった。だから東京に逃げてきて、最近はテキトーに男を見つけて一緒に暮らしたり、別れたり。最初に付き合ったユウってひと、この人のためなら死ねるって思ったし、指輪もキスもセックスも死ぬほど嬉しかったけど、街の雑踏や喧騒の中で押し花な栞みたいなひっそりとしたその愛はやがて踏みにじられ、捨てられていった。捨てたのわたしだけど。それ以来何もかもが色あせていって、すべては逃げでしかないと気づいた。それからかな、テキトーになったの。もう本気で誰かを好きになることないんだろうなあ。 ハヤト(22) 小夜子ってお母さんみたいだよなぁ。っていつも思う。まあ俺母さんいたことないしわかんないけど。俺を捨ててどっかにいかない俺を産んだ人がいたなら、それって小夜子みたいなひとなんじゃないのかなあ。ままごとみたいだよな俺たち、ほら近所の子供たちがやってたやつ。俺がそう言ってみると、小夜子は最初固まって、それからちょっとだけ笑って、泣いて、次の日に荷物まとめて出て行った。やっぱり小夜子はお母さんでしかなかった。 沙織(23) さっきたばこを吸ってたら急に彼がベランダに来て「ねぇそれ楽しいん?」って聞いてきた。楽しくないよって答えたら彼は私からたばこをとってぐちゃぐちゃにふみつけた。「ならやめえや」って言ってキスされたときにふみつけられたたばこが見えて急になにもかもがいやになった。あのたばこ私にそっくりだった。
僕たち私たちの恋愛日記 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 810.1
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2017-11-30
コメント日時 2017-12-02
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
ちまちま書いてこういうのを纏めて一作にしたいのですがやり方がわからずにとりあえず投稿してみました。詩でもなんでもないですすいません。
0これは好きな作品です。まとまりが無さそうで、一貫性がある。何もかもムダで無意味なものだけどやめられない(生きてくしかないじゃん、みたいな)それをたばこに譬えていて。やめられないんだよね、吸って捨てちゃうだけなんだけどさ、みたいな。 みどりの話が一番気に入りました。詩らしくなくていいんじゃないでしょうか。
0三浦果実さま コメントありがとうございます。投稿してから、詩でも小説でも何でもないものを投稿してしまったことに気づき慌てましたが、少し安心しました。三浦さんのコメントにある「生きていくしかない」は割とこの文章全体のテーマとして考えていたので読み取って頂けてとても嬉しいです。コメントありがとうございました。
0花緒さま コメントありがとうございます。今回はあまり狙いなく書いてしまったのがダメでしたね。何が書きたいのかとか目指すべきところがなかった。文と文との繋がりももっと詰めれたはずだし、短い文だからこそそうすべきだったなと今反省してます。煙草のはなしはお褒め頂き嬉しかったです。コメントありがとうございました。
0オムニバス形式で読みやすいですね。それぞれの語り口調にもう少し個性があればさらに流れが小気味良くなるように感じました。が、日記を介して人の意識にアクセスを試みているようなこの空気感も捨てがたい。
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