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フィラデルフィアの夜に XXXⅥ
フィラデルフィアの夜に、少女が歩きます。 夜、繁華街。 休み前の街を多くの人々が闊歩し、賑わいが溢れています。 少女は、誰にも怪しまれることなく、その軽い足取りで歩いていたと言います。 流行の服に化粧、長い髪。 微笑みを浮かべながら、誰かと待ち合わせ。 そうとしか思えない少女でした。 少女の髪から、何かが落ちる。 それは地面に落ちると、枯葉を巻き込んで丸くなる。 また、一本落ちる。 今度は投げ捨てられたライターに絡みつく。 更に、一本。 潰された缶に縋り付く。 今度は一束。 周囲のゴミを取り込み、組み合わさり、大きな何かを作り上げる。 誰かが叫んだ。 さっきまで少女だった誰かは、その服装のまま針金人形となって歩いている。 皮膚をいつの間にか無くし、針金が絡み合わさった姿を現しにして。 髪から、手から、足から、体の針金を垂れ流しながら、歩き続けている。 絶叫が轟く、繁華街。その中を進む少女。 その後ろ。 多くのオブジェが乱立している。 枯葉を使い心臓を表した針金が。ライターの炎を照らす灯台が。潰された缶を用いた魚が。多くのゴミを取り込んで作り上げた人間が。 見捨てられた物を、少女の針金が救い、それはどれも人の心打ちました。 少女は歩く。 放ち続ける針金は、絶叫と驚嘆と感動を作り上げながら。 割れたガラスで街を作り、濁ったボトルを飾り立て、汚れた毛布をライオンに。 捨てられた煙草を拾い集めほぐしてまとめて、大木に。 針金人形の少女。興奮の坩堝を街の中に作り出す。 歩く少女。 その体、ついに透き通る。 多くの針金を街の中に放ちすぎて。 針金の少女は、ついに歩みを止め、消え去りました。最後、針金にひとつ、ハート形の針金遺して。 その歩んだ跡には、廃棄されたゴミで作り出された驚嘆の造形が、これでもかとこれでもかと、勝ち誇っていました。 少女が誰なのか、何者だったのか、なぜ針金が少女の姿を取ったのか、多くの論議が続き、調査が広がり、考察が深まりました。 でも何もわからないままだったのです。 ただ、少女が遺した膨大な造形は、その全てが美しさを湛えているのです。 これでもかと、これでもかと、見捨てられた存在だったものが、勝ち誇って。
フィラデルフィアの夜に XXXⅥ ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 801.4
お気に入り数: 0
投票数 : 2
ポイント数 : 0
作成日時 2022-11-14
コメント日時 2022-12-08
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
いいですね。 大人の童話のようで。夜の中に見捨てられたものたち。ヌーヴォーレアリスムにレトロな美が組み合わさったような。 魅せられましたので一票。
0元々フィラデルフィア・ワイヤーマンと仮に呼ばれている人物の作品群から着想を得たシリーズです。 大規模な捜索にも関わらず一体誰なのかわからないままとなっています。 ですのでフィラデルフィアという題は重要だと考えております。 (元ネタを山の怪談、アイヌの昔話、カムイユカラ、金枝篇、ネット記事などからも取っており、どんどん離れて行っていますが) フィラデルフィアの夜に、という入り方は「むかしむかし、あるところに」に近い感もありますし。 完成しているという評価は、感謝です。
0フィラデルフィア・ワイヤーマンの作品はゴミのような物に荒々しく針金を巻きつけたものになるので、見捨てられた物に針金が巻かれていく事が多いです。 でも作者としてはこの描写がとても良い気がしております。 今回、上手く書けました。 良かったです。
0フィラデルフィア・ワイヤーマンの作品を見ると、捨てられるはずのものが勝ち誇っているように感じました。 なのでこういう締めにしました。 今読み返すと、ついに透き通る、というのは儚い感じが強く出て効果的ですね。
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