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踊り ─身体から表出する律動─
こちらの詩の素晴らしさは、なんといってもリズムだと思います。 ビートを刻むように働く濁音・促音・擬音語・擬態語や、ブレイクのように挿し入れられる体言止め、小気味良いタイミングで現れる韻等がポストパンクやブラックミュージックを想起させ、その起伏に富んだリズムの流れの中に、飾らないぶっきらぼうな質感ながらも詩的な語句・語調が違和感無く溶け込んで踊っている如き様相に、シビれるような魅力を感じます。 以下、素人ながら御作のリズムについて分析を試みました。 〔第1連〕 1行目から「模様」が繰り返され強調された、いきなりのブレイクはまるで始まりの合図のようです。 そして、2, 3行目の「ばっか」 「がって」 「どんどん」でビートを刻み、ハネるリズムが早々に生み出されています。 また、4行目は「哭き喚く」ではなく「哭く喚く」とされていて、反復する「く」の音により、ここでも細かなビートを刻んでいます。 5行目の「ひゃっひゃっひゃっ」は、次の連へ向けて弾みをつける3連符のように感じられます。 〔第2連〕 1行目の「ああ」は、前行の3連符で生じた性急さを和らげている印象です。 2, 3, 4行目は、文を展開させながら5行目の「揚羽蝶」でのブレイクを際立たせています。 そして、6行目では「美し(u “tsu ku shi”)、ヌルリ(nu ru ri)」 「過ぎる屍(su gi “ru shi ka ba” ne)、ヌルリ輝く(nu “ru ri ka ga” ya ku)」とさりげなく韻が踏まれていて、滑らかな流れを生んでいます。 〔第3連〕 2, 4, 5, 6行目でも、わざとらしさやくどさを感じない、程よい間隔で「警報、抵抗、変容、結局」と韻が散りばめられていて、リズムに彩りを与えています。 3行目の「びしゃびしゃ飛翔しよう」は韻を踏んでいるだけでなく、反復する「し」の音で、前後から重い印象の詩文で挟まれていることに対抗するような、一瞬の跳躍を感じさせます。 〔第4連〕 1行目に再び「模様」の登場でブレイク、その後、矢継ぎ早に「光」でまたブレイク、かと思えば「光(hi “ka ri”)、ぺたり(pe “ta ri”)」と軽快に短い韻を踏んで、終盤に差し掛かって尚、盛んにリズムが変化します。 そして、2行目の「ばらばらばら」が3連符となり弾みをつけて3行目に突入し、読点の休符を挟んで最終連へ向かいます。 〔第5連〕 最後は、自らに言い聞かせるような詩文の、穏やかなようにも淡々としているようにも感じられるリズムで、句点を以て締められます。 以上の自在なリズムを御作から体感しました。 御作をきっかけに、作者様の過去作品も一通り拝読して、やはりその独特のリズムに魅了されました。 また、過去作品におけるコメントで、作者様が「リズム、ビート、を大切に」されながら、「インプヴィゼーション技法に頼って」創作をなさっているということを知り、あの魅惑的なリズムはあくまで身体から湧き上がるものなんだと解釈しました。 その計算尽くではない野性味溢れる創作姿勢を確かな形にされている所に、強く惹かれました。 素人の私見ですが、作者様は独自の詩のリズムを体得されているように思います。 無学な為、文学的な見地での批評はできそうもなく、リズムという音楽的な観点でなら(こちらに関しても大した知識は有しておりませんが)、多少はマシな考察ができるかもしれないと思い書かせて頂きました。 文芸に疎い私が詩という言語表現に欲していた答えの一つを、作者様が示して下さったように感じた為、そのことに敬意を表し、推薦文として投稿致します。
踊り ─身体から表出する律動─ ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 698.7
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作成日時 2022-11-10
コメント日時 2022-11-10