別枠表示
乗合馬車
止まらない乗合馬車に 乗っている人は 一体、いつ乗ったのだろう 駅に取り残された 灰色の顔の子ども を、馬車のなかから見ている いつの間にか乗ってしまって 降りられなくなっている 御者は馬にムチ打ち 馬車は加速する 公園の花を踏み荒らし 酒場に突っ込んで 犬も猫も蹴飛ばして 馬車は加速する 機械化された馬は 関節のエンジンから黒煙吹き 脚を無限に回転させる 馬車のなかの客は喜んでいる ――これで、目的地に早く着くぞ! ――ありがたい、これで間に合う 彼らはめまいのなかで嘔吐している そして、もはや馬車から降りるすべがないことに気づいていない 御者はとうに振り落とされている いや、はじめから乗っていなかったのかもしれない 馬車は際限なく加速する 乗客は 馬車の後ろから轍を懐かしむ者と 馬車の先頭で未来を迎え入れる者 そして、何もわからず吐きつづける者の どれかだった いよいよ、死ぬより他にないとすべての乗客が悟った 彼らは、祈ったり、嘆いたりしていた 僕は? 僕は、書きながら吐いていた 吐きながら書いていた めまいは、まだおさまらない 馬車は加速する そして、ああ …… …… ……
乗合馬車 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1215.1
お気に入り数: 1
投票数 : 2
ポイント数 : 0
作成日時 2022-11-06
コメント日時 2022-11-29
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 0 | 0 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
走馬灯でしょうか
1コメントありがとうございます。 走馬灯よりはもう少し現実的な馬車のイメージで書いたものですが、近代という――失われてしまった――時代の象徴としての「乗合馬車」を考えるなら、一種の走馬灯なのかもしれません。
0物凄く怖い詩だと思いましたがこんな将来もあり得るかも知れないと思いました。
1物凄く怖い詩だと思いましたがこんな将来もあり得るかも知れないと思いました。
0コメントありがとうございます。いまこんな感じぢゃないかしらん、などと思ったり
0的外れかと思いますが、何か連想するものがある気がして考えてみたら、横光利一の『蠅』が浮かびました。 1連目から不穏な雰囲気で始まり、躍動感や束の間の高揚感、緊迫感を経過して絶望的な印象でフェードアウトしていく描写が、(私は映画に疎いのですが)映像的に感じました。
1コメントありがとうございます。 馬車つながりで横光利一はありかもしれないですね〜あんまり自覚はありませんが、リアリズムからは少し離れたところで座ってたいナァとは思います
1すっごく佳い詩っすね。 /灰色の顔の子ども/ ここでグッと掴まれました。 実際、嘔吐してるときって何が何やらわからなくなりますよね(慣れると楽だけれども)。
1コメントありがとうございます。
0科学という暴走乗合馬車なのかなぁ、と思いました。遺伝子治療の禁忌を犯している感じとか、不老不死への挑戦とか。老化は病気、という説が重んじられつつあるようです。社会という乗合馬車かな。ファシズム、という乗合馬車、とか、思いつきます。
1コメントありがとうございます。 乗合馬車というのは20世紀初頭においてはときにモダニズムの比喩として用いられてきました。現代だと……なんでしょうね?
1