旅心フワフワとしてネットサーフィンする午後よ
タイに心は遊びバンコクの狂騒を懐かしむ
身体を売っていた女たちの明るさと
その翳の傷口が孤児に似た流浪の心をしんみりと慰む
色黒でちびの娼婦がモテそうもない不細工なアメリカ人の顔を
蒸しタオルでせっせと拭いてやっていた
あの男の愛情を受けるおどおどした心よ
コロナ禍に追われ飛行機は惜別に似ておおげさだ
狐の嫁入りか
棚引く雲の尻尾か
幻となって旅をしたい
旅の風にゆるゆると透けた流血よ
ドミトリーで長逗留する若仙人の心の底よ
背にびっしりと刺青をして
一年にひとつ刺青をそっと増やす話をしてくれた十字架を背負う男よ
無表情の奥に秘めたマグマを深い底に抱くその熱のひたぶりと
流されなかった落涙はどこの土地に雨と変わり降るか
そんな契りを思いながら
ああ私は伊豆を風に吹かれて浜辺に寝ころびたい
星の砂よ、珊瑚の枝よ、貝殻と潮の香に滲む侘しさと
抗わない穏やかな心よ
私はあの潮騒を持て余すべきだろうか
罪の無い戯れを惜しんで微笑みを節約すべきだったか
いつかの聖都ジャガナスプリーの浜辺で
狂った日本人の女の子が日がな太陽に打たれていた
あの子の心を切り裂いたのは何だったか
あれは狂気の治療だったのだろうが無知の人々は恐れた
ああでもそれもいつかの遠い幻影
時を喪えばすべては幻
何事もないかのように
克己の灯台よ
おまえはどこに立つのだ
震えが遠景では見えぬ弦の声ならば風は弓
満ち足りてリラックスしろよ
背骨を想えば秋刀魚肥ゆる秋の喰われた残骸の柔さ心許なさ
ストラディバリウスはされど平凡の民にとっては楽器ではなく
秋刀魚の骨ほどでなければ金でしかないか
金、金、金、ソリスト、ソリスト、ソリスト!
一つため息をつく
星の砂にまみれて海辺の砂にまみれ
貝殻を見つめ貝になる
私を連れていこうとする雲よ
微笑を頬に住まわせているよ
珊瑚の枝に失われた贈り物の哀しみを残響して
ほろほろと愛のように混じり眠りこけてしまおう
曇天のはるか果てにも満天を抱き
冬の太陽がポーカーフェイスで私に韻のキスをして
その残照が私を炒めるが
ふふ
ただそれだけだ
作品データ
コメント数 : 4
P V 数 : 780.9
お気に入り数: 0
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作成日時 2022-11-02
コメント日時 2022-11-12
#現代詩
#縦書き
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2024/11/21 22時59分00秒現在
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聞きなれない固有名詞がフワフワと浮遊感がありますね。 冬から逃れたいのはわかります。冬というか雪から。雪って怖いです。『ファーゴ』という映画があって、人とか殺されるんですけど、舞台がアメリカの田舎?で、辺り一面雪なんですよ。
0雪は穢れがなくて美しいと思います。どうも。
0この登場人物の心は何かを悟っている感じがしてそれが哀愁に感じます。
0どうもありがとうございます。諦観といえばいいのでしょうかね、ハードボイルド?分かりませんが。秋冬は哀愁ですね。
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