別枠表示
乗車券
ほとほとと鈍行が征く 僕は十七年もこの列車に乗っている たまに備え付けの机で 詩を書きながら 客はといえば僕たったひとり あとは車掌と運転手ばかり これは変わった列車で 行き先のない乗車券で どこまでも走るという その乗車券というのが 書き物なのだ 僕は必要に迫られて書く でないと車掌が催促に来るのだ 早く渡さねば 放り出してしまうぞ、と それは困るのだ 新しい列車が来ることは 二度とないと思うから 書く手を止めて 目頭を押さえつつ 曇りガラスの窓を開けると 外には無数の列車が 蛍石の玉砂利の上を滑るせいで あたりは青白い燐光に包まれている 噂によると 彼らのポケットには元々 乗車券が入っているのだそうだ 何か酸っぱい臭いがする ここの空気は居住に適しない 遠くに蒼鉛の林 石油のようにてらてら光っている イヤホンからは 珍妙なシンセサイザーの音が 耳鳴りみたく響き続いている インクの匂い新しい 手製のチケットのおかげで 危うい連続性を保ちながら列車は 長く見積もっても残り百年ほどの 旅を続ける
乗車券 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 768.2
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2022-11-01
コメント日時 2022-11-02
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 0 | 0 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
インクの匂い新しい いまの本には匂いがしません。
0鈍行っていうのが、なんともいいですね。どうしても銀河鉄道999を思い出しました。 また、無数の列車という景色も何となくロマンチックというか、印象的です。 ジョバンニのように、特別な乗車券を持っている人もいますね。
1