乱脈な夢を見て崩え現へと立ち戻る間の青き天空
らんみゃくなゆめをみてくえうつつへとたちもどるまのあをきてんくう
ガードレール白く目映ゆく陽をかへす道端の地にその影も著し
ガードレールしろくまばゆくひをかへすみちばたのちにそのかげもしるし
薄色の衣耀ふ小女児に保護者は見えずただ草をいらふ
うすいろのころもかがよふせうぢょじにほごしゃはみえずただくさをいらふ
道端に落ちたるを見しシャボン玉セット誰の手にか拾はれし
みちばたにおちたるをみししゃぼんだまセットたれのてにかひろはれし
この坂の美は見るうちにありしのみ登り来たれば風冷たくて
このさかのびはみるうちにありしのみのぼりきたればかぜつめたくて
上を行く車両の音まで消し果せ高架下ボール打てる子数多
うへをゆくしゃりゃうのおとまでけしおほせかうかしたボールうてるこあまた
夕翳は其の色映やし鴉独り鳴く声もなく東方へ立つ
ゆふかげはそのいろはやしからすひとりなくこゑもなくとうはうへたつ
入り日立つ山の彼方を西と覚ゆ誰も覚えし時も彼方に
いりひたつやまのかなたをにしとおぼゆたれもおぼえしときもかなたに
峠路に自動車の灯の皓々と起これるさまよ夕べの西よ
たうげぢにじどうしゃのひのかうかうとおこれるさまよゆふべのにしよ
健全さすでに喪ひ夜にしか顔さらされぬ女男たちの生
けんぜんさすでにうしなひよるにしかかほさらされぬめをたちのしゃう
酒臭きエレベーターは我を乗せ夜の地を発ち堕落の界へ
さけくさきエレベーターはわれをのせよるのちをたちだらくのかいへ
小窓開き狭き隙より飼ひ鳥は死を弁へず宙へと発ちぬ
こまどあきせばきすきよりかひどりはしをわきまへずそらへとたちぬ
雨に霧る夜中に明かき外灯の下を車が走る音響く
あめにきるよなかにあかきぐゎいとうのもとをくるまがはしるねひびく
旧り行きて身に蒙りし事数ふる折に血流さらさらと鳴る
ふりゆきてみにかうぶりしことかぞふるをりにけつりうさらさらとなる
足指より久しく見ざりし負傷の血われの齢と生活の素朴
あしゆびよりひさしくみざりしふしゃうのちわれのよはひとたつきのそぼく
我問ひき「ママ泣いてるの?」静かなる涙をさなき我の罪ゆゑ
われとひき「ママないてるの?」しづかなるなみだをさなきわれのつみゆゑ
とむる術誰か知りたる学び舎の宙に行き交ふばかりの思慕を
とむるすべたれかしりたるまなびやのちうにゆきかふばかりのしぼを
この土地を恋人は去り斉一になびく稲田の夏静けかりき
このとちをこひびとはさりせいいつになびくいなだのなつしづけかりき
隣り合う二つの心を照らしてもあたかも誰も居ない部屋の灯
となりあうふたつのこころをてらしてもあたかもだれもいないへやのひ
集会やデモに与すれど心なほ不確かにして疚しさ疼く
しふくゎいやデモにくみすれどこころなほふたしかにしてやましさうづく
物の理非知るより先に妻も言ふ愛する夫と同じき言を
もののりひしるよりさきにつまもいふあいするつまとおなじきことを
彩燃ゆるステンドグラスに封ぜられ己の罪科いやにかげろふ
いろもゆるステンドグラスにふうぜられおのれのざいくゎいやにかげろふ
陰湿に心の中で言ふ侮辱しかと聞けども我は答へず
いんしつにこころのなかでいふぶじょくしかときけどもわれはいらへず
屍に向きてその死に我が責めのありやと胸に問ふ響き深し
しかばねにむきてそのしにわがせめのありやとむねにとふひびきふかし
コンビニで生花買ひたる人のあと黄泉の香ただよふレジ前に立つ
コンビニでせいくゎかひたるひとのあとよみのかただよふレジまへにたつ
足元に花片爛らす雨の路 秋の色より春には汚る
あしもとにくゎへんただらすあめのみち あきのいろよりはるにはけがる
地に深く広く穴掘る深更の工事現場の光に引かれて
ちにふかくひろくあなほるしんかうのこうじげんばのかげにひかれて
果ても無く車道に副ひて弾け咲きつつじの花は夢幻を誘く
はてもなくしゃだうにそひてはじけさきつつじのはなはむげんををびく
夜去るさま見つつ己も今日を忘る 他に行跡は無かりしと思ひ
よさるさまみつつおのれもけふをわする たにぎゃうせきはなかりしとおもひ
日差し濃き地に落とせる物拾ふ我が瞼を鳥の影叩く
ひざしこきつちにおとせるものひろふわがまなぶたをとりのかげたたく
作品データ
コメント数 : 4
P V 数 : 631.5
お気に入り数: 1
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2022-11-01
コメント日時 2022-11-13
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項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
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2024/11/21 23時31分52秒現在
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コンビニで生花買ひたる人のあと黄泉の香ただよふレジ前に立つ これが好き。
1ありがとうございます!
0>酒臭きエレベーターは我を乗せ夜の地を発ち堕落の界へ 北野武の『ソナチネ』を思い出しました。 エレベーターをうまく撮ってある映画は良作らしいです。 エレベーターを題材にした短歌も他にありますよね。 人あまた 乗り合ふ夕べの エレベーター 升目の中の 鬱の字ほどに 香川ひさ エレベーターは暗いイメージなのでしょうか?
1お読み下さりありがとうございます。『ソナチネ』は観ていなくて分からないのですが、私にはエレベーターというと香港映画の『インファナル・アフェア』ですね。他にもありますが。確かになんとなく暗い感じに仕上がりそうな物ではあります。なぜだろう。上り下りということが、私たちの通常の移動方向である平面上の行き来と違うから、どこか不思議なことのように描き出されるのかもしれませんね。
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