ぼくは詩人ごっカー

僕は詩人ごっこをしていて、つまりは詩人ごっカーなのである詩人とは、詩を書く人のことらしくてでも、詩を書いただけでは詩人と言えないと言う人もいてとりあえず僕は文字列を並べて詩人ごっこをするてふてふたふたふとふとふたはたふ先生はそれを見て「これは詩だね」と言うので僕は詩人なのかもしれない詩を書いただけなので、詩人ではないのかもしれないとりあえず僕の自認は詩人ごっカーなので、私人ではない方がいいし、ちょっとだけ詩人だと嬉しいから1/12くらい詩人だといい感じなのかもしれないつーか先生は詩人である先生は詩人なので、先生に聞くのが一番手っ取り早いのだと思って僕は先生に「詩人ってなんですか？いや、なんすか？」と聞いてみると帰ってくるのは口付けである舌　舌　舌　飢え飢え　飢え　舌　飢え唇　カタカナ　人間　左手襖の裏に　歯列をなぞる褥、と言う言葉は、音階に当てはめるとシドレしどろもどろい僕たちの関係性は、褥をもぞもぞと出て、縁側から転がり落ちてしまう先生の鼻先は夏の匂いがして、僕の鼻の奥には夏の腐臭が詰まっている脇にペットボトルを挟むといいよお母さん、テレビ？うん、テレビ母はテレビの中で、テレビを見ているので、母のスカートを捲るとテレビがあるどくんどくんと、小さな僕が胎動しているお母さん、テレビ？お母さんはテレビじゃありませんクシャリと笑って、可愛い僕、将来お母さんと結婚したかったんだお父さんのお嫁さんになって、弟の旦那さんになって、おじいちゃんとパートナーシップを結んで、おばあちゃんと言葉では定義できない関係性になってああ、先生、首、絞めないでよ詩人のくせに「ううん、これは詩だよ」と先生は言った先生がそう言ったので、これは詩なのかもしれない詩なのだとしたら、なんの死なのだろうてふてふたふたふとふとふたはたふそれは蝶々の詩だよ、それは蝶々の死だよと、教室の向こう側で上村くんが言った蝶々の詩なの？うん、「蝶々の死だよ」と、かみむらくんはいったちょうちょうは、てふてふと書いたんだよ昔はねああ、かみむらくんはこくごが得意でしたね先生、敬語、キモいよでも、せんせいとかみむらくんは隔たれているからせんせい、お尻、触らないでちかんだよいいや、これは詩だよううん、これは犯罪だよそれでこれは、蝶々の死だよ蝶々揺蕩う蕩蕩揺蕩うこれは、蝶々の死だよてふてふの、私だよ、しだよ羊歯の葉が、庭に転げ出した僕たちの頭の上から覆い被さってまだら模様の影はてふてふのしだよねてふてふと、手と手を繋いでてふてふと、指を絡めててふてふと、胸を重ねてかみむらくん、てふてふってなんだっけ？てふてふは蝶々だよ蝶々のように、てふてふとしなさい死なさい、てふてふ詩なさいてふてふてふてふてふてふてふてふ手が、触れ合うから、てふてふだよ、って先生、それでも詩人ですか？いいや、これは詩だよ手触手触手触手触問う問う他は他触これは、いやらしいことです草の匂いが、ツンと鼻を刺してお父さん、そんなところにいないで混ざろうよいやだよどうしてお前がそう言うことをされるのがいやだよ止めないの？この畳の線から、出られないよ出られないの、じゃぁ行こうか？先生、だからなんで、首を絞めるのお父さんが泣いているからお父さんは弱くて間違っていて少しだけ優しいからテレビのお母さんは、テレビの中で笑っている僕が助けなくちゃダメだよテレビのお母さんは、ちびまる子ちゃんを回しているかみむらくんもそうおもうよね？てふてふだとおもうよてふてふって、なんだっけ？てふてふは、蝶々だよ蝶々は、てふてふと匂い立つ草むらの中で蝶々のお腹って、気持ち悪いよね僕が笑っているおじいちゃんは優しいから、笑っているおばあちゃんは、時々間違える優しい人だから僕を3回だけ、怒ったことがある人だからぎゅうと抱きしめてあげるんだだってぼくはてふてふだから手　触れて　手　触れておばあちゃんの体の厚みを知りたいおじいちゃんが体の厚みを知りたいぼく、お母さんと結婚するんだだから、先生、やめてねカーネーション、あげる一回くらいはママって、呼びたいと思っていたんだけどもう今更、ママって、ねぇ？お父さんは、まだ畳の線から出られないよお父さんは弱くて古くて歪んでいるからなんだか少しだけ泣いているよ僕が先生の子どもを産むことがないのはそのためだよねぇ先生、詩人、なんだよね？ううん、これは詩だよ詩なんだ、これそうだよ先生が僕の肩に噛み付いているのも？ううん、それは犯罪だよかみむらくん、ちょうてふちょうてふなんだっけ？知らないよかみむらくんは、好きな人いないの？いるよそっか、うん。俺はお姉ちゃんと結婚したいかみむらくんは、格好良くて、優しくて、からたち教室で一番背が高くて先生は詩人なので僕は本当は上村君を好きになるべきだったんだと思うけれどお姉ちゃんと結婚するのなら、僕は好きにならないでいてあげるぼくは、お母さんと結婚するはずだったんだ先生の爪が食い込んで、これは、詩？ううん、犯罪だよ犯罪だよ犯罪だよ犯罪、だよかみむらくんのお姉ちゃんですか？いいえ、あなたよかみむらくんのお兄ちゃんですか？いいや、君だよお父さん、もういい加減、出てきてよ違うよ、君が線を超えると追い出してくるんだよお父さんの目と口と鼻にモザイクがかかっていました僕は合成音声でしたおじいちゃんとおばあちゃんが電話越しで笑っている元気な声、安心するね会いたいよお父さんと、おじいちゃんと、おばあちゃんが喧嘩するのが嫌だお父さんと、お母さんが、むくつれているのがいやだ僕は、ねぇ、みんなと結婚したかった僕は弟が癇癪を起こして僕は弟に組み敷かれている先生、これは詩ではないですよね？ううん、それは詩だよ私、だよ仲良く、詩たいよ首に、先生の爪が食い込むねぇ、お父さんの赤ちゃんを、産んであげる先生、やめて先生は詩人のくせにどうしてそんなことするのううん、これは詩だよ違うよ、犯罪だよかみむらくんは、2階に住んでいるかみむらくんは、かみむらくんだよね？ううん、きみだよそうなの？うそぺうそだねかみむらくんは、かみむらくんだもんねてふてふは蝶々だよ蝶々が、夏の匂いに感応して僕たちの鼻先を飛び回るとびまわる、とびまわる、とびまわるううん、これは詩だよだから、先生の赤ちゃんは産んであげない僕の耳の裏に、先生に指先が這う蝶々の胴体って、なんだか気持ち悪いよね先生の指の腹に、似ているからねかみむらくんは、かにぬらぬんな、なにぬなぬぬな、てふてふだね少しだけ笑って、先生、これは詩ですか？ちがぬの、てふてふだのとふとふ、問うううん、詩だよ草むらに無数のてふてふがてふてふとんでいるのは先生の指が僕の髪に触れるのは詩だよううん、君が押し戻すんだよいいよ、もうきてもお父さんの赤ちゃん、産んであげる先生、首、絞めないでよお父さんとお母さんとおじいちゃんとおばあちゃんと弟と僕たちは、てふてふしていないお父さん、もういいから僕のてふてふを、後ろに隠して小さなお父さん、僕、お母さんのお嫁さんになりたくて、お父さんのお嫁さんになりたくて、弟の旦那さんになりたくておじいちゃんとおばあちゃんと名前のない新しい関係になりたくてだから、もう、本当にいいからおずおずと、お父さんが畳の線を超えて先生に掴みかかったてふてふ、手、触れて先生、ねぇてふてふは詩ですか？ううん、これは詩だよ違うよ、犯罪だよかみむらくんは、僕の憧れの、かっこいいてふてふってなんだっけ？てふてふは、蝶々だよそう言って、夏の腐臭がてふてふとこれは詩ですか？返事が返ってこないから、まるめてしまった。お母さんが笑うみたいに、クシャリとポケットに入れてお父さんが、薄汚れていた弟が僕を抱き寄せていたあまい涎の匂いで、僕はおじいちゃんとおばあちゃんを両手で抱きしめて先生、ねぇ？先生首、絞めないの？僕は庭いっぱいの、息を吸っててふてふたふたふとふとふたはたふって、ねぇ？みんなはこれは詩だと思う？詩なんじゃない？君次第だよ、詩ではないなぁ……うん、わかんないかなみんな詩人ではないからわからないんだってかみむらくんの、お姉さんが迎えにきてお姉さんは綺麗な人で、ねぇ、先生にはお姉さんっていたの？ううん、これは詩だよ、と少しだけ聞こえた気がしたでも、ううん、それは犯罪だよねぇ、てふてふって、なんだっけ？またぁ？うそうそ蝶々が、てふてふしている夏の蝶々が草むらには、小さな骨が生き返ろうとしていて僕はどうやら、詩人ではないらしいだから僕は、詩人ごっこをしていてつまりは詩人ごっカーなのである

ぼくは詩人ごっカー　ポイントセクション

作品データ

コメント数　： 11
Ｐ　Ｖ　数　： 1211.1
お気に入り数： 2
投票数　　　： 3
ポイント数　： 2

作成日時 2022-11-01
コメント日時 2022-12-05

#現代詩 #縦書き

項目	全期間(2024/11/21現在)	投稿後10日間
叙情性	0	0
前衛性	1	0
可読性	1	0
エンタメ	0	0
技巧	0	0
音韻	0	0
構成	0	0
総合ポイント	2	0

閲覧指数：1211.1
2024/11/21 19時57分56秒現在
	平均値	中央値
叙情性	0	0
前衛性	1	1
可読性	1	1
エンタメ	0	0
技巧	0	0
音韻	0	0
構成	0	0
総合	2	2

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作品に書かれた推薦文

ぼくは詩人ごっカー　コメントセクション

コメント数（11）

エイクピア

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(2022-11-01)

詩人ごっこは危ない遊戯の様にも思えました。この詩を読むと、詩の産婆師が現実なのでは無くて、現実の産婆師が詩や詩作なのではと思えてしまいます。「蝶」は現実そのものなのかもしれません。胡蝶の夢の様に。現代では助産師と言うのだそうですが、恋愛遊戯は詩作そのものに思えてきます。

Snydam

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(2022-11-03)

所々、さりげなく短く韻を踏んで展開していくのがスマートに感じました。少年期の怖さを孕んだ純粋さが家庭や学校の関わりへ向ける、歪んでいそうな好奇心が全体を覆っているような気がしました。もしくは周囲が歪んでいると捉える事もできそうです。夏の終盤の倦怠みたいな感覚もあって、それでも読後は爽やかな印象でした。個人的に「草むらに無数の～髪に触れるのは詩だよ」の3行のフレーズが特に好きです。

つつみ

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(2022-11-03)

女子高生を殺した容疑者のニュース流れてきて、もちろん視聴者からすれば犯罪なんだけど、当の本人たちは、違う、犯罪じゃない、と思っているような気がするんですよね。＞ああ、先生、首、絞めないでよ＞詩人のくせに犯罪じゃないよ、詩だよ、から、蝶々がでてくる辺りから、＞犯罪だよになるところが、蝶々好きの私にはたまらなくツボりました。「詩」を「死」とするのは、なんかありふれていて、あまり好きではないので、ここは少しスキップして読みました。子どもを産む、とか、ちかん、とか、あるけど、語り手が「僕」であるところが、何となく気に入っています。1ヵ所だけ「俺」になっているとのろにはどんな意味があるのだろうとか。しかし、最初から最後まで何度か読み直すと、とても良いところもあるんだけど、どこか惜しい感じがします。詩人ごっカーだからなのでしょう。＞草むらには、小さな骨が生き返ろうとしていて＞僕はどうやら、詩人ではないらしいここが一番好きでした。

ゼンメツ

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(2022-11-12)

今月投稿されたすべての詩をざっと読んだんですけど、断トツでこれが好きです。今月すべて、と言ってもまだ十日とちょっとなんですけど。はじめは駄洒落的な言葉遊びが続く感じで阿ト理恵さん思い出し、なんなら自分も多用していたくちなので、てふてふの詩が死に繋がったときは「まーたかあ」なんて思っちゃったのですが、読み進めていくと……いやあ圧倒されましたね。僕が続けていてもこのレベルには達しなかったです。ただもう一つの正直な感想として、ここまで誰にも真似できないような言葉を紡げるのなら、こんな誰にでもできる言葉遊びに頼らなくても、もっと別の方法でスライドさせていけるのでは？　とも感じました。フィギュアスケートで表すなら構成もステップも曲も素晴らしいのにジャンプはシングルばっかり決めてるような、どうしてもそんな印象を受けてしまいます。いやでもどうなんだろう。それ故の可読性なのかもしれないですね。すみません。自分を棚に上げてついつい烏滸がましい意見を口にしてしまいましたが、何度も読み直したくなるくらいは推しています。

福まる

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(2022-11-12)

なんか壊れているようで壊れてないすごいと思う少し変態で文字って言葉って面白いですね。

いすき

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(2022-11-13)

やｈべえええモルカーとコラボ決定！映画にも出て♡

橙色

エイクピアさんへ

(2022-12-05)

コメントありがとうございます。ここだけの話、詩人ごっこは本当に危険です。私はこの詩の制作(あるいは詩人ごっこ)の最中にひどく下腹部が膨張する感覚と急速に冷却する感覚に襲われました。この詩は水子でもあるのです。あと現実と詩が転倒してしまうこと、ありますよね。私も素晴らしい詩を読んだあとはよく現実を認識する機能が詩世界に引っ張られます。

橙色

Snydamさんへ

(2022-12-05)

夏っぽさは少し意識したので嬉しいです。引用していただいた部分、結構ノリノリで書いたところでそこに気づいてもらえたのも凄く嬉しいです。

橙色

つつみさんへ

(2022-12-05)

もしかしたら制作上の覚悟？踏み込み？が甘いのかもしれないです。詩(あるいは芸術や情緒)と犯罪、パーソナルな問題で一人一人にドラマがあるんですけどやっぱり犯罪は犯罪として見なきゃなぁという気持ちもあります。

橙色

ゼンメツさんへ

(2022-12-05)

個人的にやっぱり陳腐な言葉遊び好きなんですよね。「詩＝死」はめっちゃかっこいいじゃろがい！みたいなセンスが自分の中にあって、それが陳腐なのはわかってるんですけど出来そうならついやりたくなってしまう。難しい技にもチャレンジしないとではあるんですけどね……中盤以降のオリジナリティが出ていたとしたらそれは凄く嬉しいです。

橙色

福まるさんへ

(2022-12-05)

文字と言葉は最高に面白いです。言葉最高！