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水仙
うつくしい人はしかし、彼の恋人を抱き締めることができなかった。近づくたびにゆらめいて姿を消すばかりだった。くちづけすることもできなかった。空しく水を飲むだけに終わった。そうして溺れてしまった。あれは身投げではなかった。 湖畔にかぐわしい花が咲いた。水面を見つめて小首をかしげるそれは、何者をも受けつけず、しかしすべてを誘惑し続けている。今も尚。 誰も彼に、ほんとうの意味で触れることはできない。ひとたび喰らえばたちまち彼のからだは手ひどい嫌がらせになって血管を駆けめぐる。みんな道連れだ。みんなみんな。 にもかかわらず彼を愛してやまない彼女は、彼のからだを残酷にも擂りつぶしては、滴るドリップをその身に浴びるのだ。懲りもせず。
水仙 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 901.0
お気に入り数: 0
投票数 : 1
ポイント数 : 0
作成日時 2022-10-06
コメント日時 2022-10-17
項目 | 全期間(2024/11/23現在) | 投稿後10日間 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
淡々とした韻があってそれぞれの連の余韻のつくりが心地よく残りますね。この書き手さん新しい人なのかなと気になり過去作品も全部読んだんですけど、全部読んでよかったです。
1ありがとうございます。これからも精進いたします。
0ナルキッソスの物語と言うのか自分の顔に恋したのか、身投げでは無いと。タイトル通りの「水仙」と言う実在する花。水に映る自分の姿にと言うギリシャ神話なのか、ちょっと忘れましたが、後半独特の話になって居る様な、「ドリップ」など血管を駆けめぐるなど、詩想で、大いに参考になると思いました。
1ご指摘ありがとうございます。
0ギリシア神話を彷彿とさせるが、その域を出ていないとおもわれる。秋元さん本人の事柄を内容に含めると重層的なものに仕上がるのではないか。
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