老母をもてなすべく中華屋であわびのクリーム煮を大奮発した
薬膳のような味であった
私としては別に大枚はたいてあわびでなくとも
アサリのクリームチャウダーでもいいかな
しかしこれは表せない愛の代替品である
母の願いはあわびのクリーム煮の湯気にまみれて
そっと息をひそめてその無念を隠している
でもその言葉を呑み込んで私たちはただひたすら
中華屋の宴を分け合うのだ
食べ物を分け合うこと
これは相手のすべてを許し愛するように似て和解なのだ
母と何度ご飯を食べた事だろう
自転車での帰り道に
かまぼこを切りはぐったような形のこっくりと黄色い朧月がでていた
通りを黒猫が横切った
秋草が揺れて鈴虫が足元で鳴いていた
輪郭が澄み渡る秋よ
姪っ子たちが帰った静かな家よ
ぐっと寒くなれば孤独な冬が来る
けれど澄み渡った冷気にドライマティーニのような月が出て
あの一人ぼっちの夜も私は好きだ
あの寂しさが愛を教えてくれるから
求めなさい
人にくじけても何度でも立ち上がり求めなさい
他人に期待して騙されてもあなたらしく居続けなさい
失意しても希望を持ち続けなさい
あなたはあなた自身の信じる愛を
沈んだ太陽を待つように身籠っている
心の中に再び愛が昇るのを悦びとしなさい
心打ちひしがれて身を捩らせ人を嫌っても
埋火のように愛は帰ってくる
そんな風に季節を司る女神が微笑んで諭し
春夏秋冬の駿馬が回る回転木馬に誘っているよ
疲れたな
そう思っても
ふふふ、と微笑んで瞼で柔らかな風を受けるよ
作品データ
コメント数 : 11
P V 数 : 1221.9
お気に入り数: 1
投票数 : 3
ポイント数 : 10
作成日時 2022-10-04
コメント日時 2022-11-11
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/22現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 2 | 2 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 2 | 2 |
エンタメ | 2 | 2 |
技巧 | 2 | 2 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 2 | 2 |
総合ポイント | 10 | 10 |
| 平均値 | 中央値 |
叙情性 | 2 | 2 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 2 | 2 |
エンタメ | 2 | 2 |
技巧 | 2 | 2 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 2 | 2 |
総合 | 10 | 10 |
閲覧指数:1221.9
2024/11/22 00時47分09秒現在
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力づけてくれる作品ですね。
0あわび、確かに旅行にでも行かなかい限り、食べない類のものですね。アサリのクリームチャウダーやあわびのクリーム煮など具体性の上に顕現する詩性が有ると思いました。季節は秋。冬の訪れが望見されており、朧月や黒猫、鈴虫、秋澄むなど、のちには巡る季節が女神に仮託されている。求め、居続け、持ち続け。帰ってくる愛が輪廻転生のようでした。
0ありがとうございます。人にプラスになるような詩をなるべく書きたいです。
0エゴである愛にも良さは在り、食べる、という原始的、下品さやグロテスクとも近い行為のなかに人情をまみえる、その臨界点みたいなものを思い書きました。ありがとうございます。
0輪廻転生のような摂理の中の安らぎを書いて見たかったので解って頂けて良かったです。ありがとうございます。
1やさしくて、しなやか、そんな素敵な詩だと思いました。 ままならないようなことも、気負わず受け入れる、まるで季節の移り変わりのように。 作中の「私」の人生に対する、柔らかだけれども、しなやかで強い、 そんなスタンスを感じて、自らもそうありたいと思いました。 素敵な作品をありがとうございます。
0いつもこんなに落ち着いてはいられないですが、そうありたい、と思っています。年の功ですこしはましになったと思いたい。(笑)ありがとうございます。
1がんばってください
0ありがとにゃ!
0ああ、安らぎですか。輪廻転生は仏教用語なのかもしれませんが、日常でも普通に受け入れられている用語なのかもしれません。
0そうですね、リピート、ルーティン、などと訳してしまうとちょっと矮小になりますが、生と死を繰り返す気配を感じます。
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