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フィラデルフィアの夜に XXXⅤ
フィラデルフィアの夜に、針金が集まる。 夜、牧場。 餌、水、健康管理。掃除も整理も終わって人がいなくなった、牛たちが眠る小屋。 灯りも消されて、牛たちも眠りに落ちる。 でも牛たちは何も語らない。 何もないはずの牧場、毎夜起こる出来事を。 僅かな月光。 換気で開きっぱなしの窓から入り込む、スポットライト。 今日は左目の所が黒い牛の目の前。繋ぎっぱなしの乳牛の。 音も立てず、何かが集まる。 ゴミ屑同然の、埃にしか見えない、細かな針金。 人の姿を取って。 牛の前に立ち上がる。 眠り付いていた牛、いつもの事だと思いつつ匂いかぎ、そんな針金を見つめる。 針金、バレエの足取り、軽やかに。 人が慌ただしく歩き回り、配合飼料散布するロボット動く、牛の目の前の通路をステージに。 踊る姿、歌う様。 軽やかなステップ、月明りのはずのスポットライトが、踊り子の針金を追いかける。 次々舞い、次々に踊り、次々に。 食べ残しの牧草の上を跳ね、唾液が光るコーン飼料を飛び越え、時に牛の背、鼻、頭の上。 牛舎は狭いと言わんばかり。 牛たち見つめ、匂いかぎ。興味深く、夜の劇場、密かに楽しむ。 電灯が付きます。まばゆい光が牛舎の中はち切れます。 従業員が入ってきました。 真夜中でも従業員は働きに牛舎に入ってくることがあるのです。 今日は子供を産みそうな牛の見回り。 乳房がひどく張って、予定日が過ぎた牛の様子を見に来たのです。 とはいえまだ子供を産む気配はなく、朝方産むのではないかと従業員は思い、あたたかい寝床へと戻っていくのでした。 あの舞い踊っていた、針金を踏みつぶして。 夜、牛舎。 人がいなくなった、大きな牛たちだけがいる空間。 何が起こっても、何も語る事のない牛たちだけの部屋。 踏まれ牛糞に汚れながらも、埃の様な針金は再び立ち上がり、軽やかに滑る如く踊る。 朝、人が来るまで。 夜、牛たちと自分自身が楽しめるように。 針金は踊る。 決して語られることない針金は踊る。
フィラデルフィアの夜に XXXⅤ ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 436.5
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2022-10-01
コメント日時 2022-10-01
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文