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蹄の音
あなたの心には きょう、 静かに雨が降っているようでした 濃い霧が 雨になって 見通しが少しよくなって 微笑んでいましたね (近づいてくる 音) 雨のなかで いっそう あおくなる キリギリスのように 海水より うすい なみだのように 一年と半年ぶりに会った 娘の名前をいえたこと を 誇らしげに なんども繰返して わたしの誕生日をわすれて 割れてしまった果実のような気持ちを 接着しました あとかたもなく (遠ざかる 音) 雨は静かに土に浸みこんで やすらぎと ふあんを 背なかあわせに身ぶるうので あしたの約束など どうでもよいと思うのです (あらわれる 姿) 土の色がおちついて 雨の匂いが立ちのぼる 馬の背からは湯気が立ちのぼる ひかりかがやく 馬の臀の筋肉の隆起や 夏をむさぼる いななきや 宝箱をあけるような蹄の音 生まれかわったら あなたは きっと 自由で苛酷な 馬になれるでしょう わたしは きっと どこかの土になれるでしょう あなたが生きている 手をつないで あったかい、つめたい 毛布をかけて あったかい、さむくない 口の動きで 心が色づく それだけで 戦い敗れ去っていく細胞のとなりで わずかに生まれくる細胞のしるし それだけで あしたの約束など どうでもよいと思うのです
蹄の音 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 908.7
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2017-11-17
コメント日時 2017-11-19
項目 | 全期間(2024/11/22現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
くつずり ゆう様 初めまして。 何か心に染み込んで来るような感覚を誘う詩ですね。 所々挟まれている、括弧で括られた部分(遠ざかる 音、等)が、一瞬心をよぎるイメージを表しているように感じます。 また、 自由で苛酷な 馬になれるでしょう や、 戦い敗れ去っていく細胞のとなりで といった表現がとても新鮮でいいと思いました。
0いいなあ、という、まずは第一印象を。 ひらがなと漢字のバランス、視覚的な情景から始まり、音、あるいは音が喚起する質感へとスライドしていくときの自然な(意図したものではないでしょうけれど、計算された)そぶり。 〈わたしの誕生日をわすれて 割れてしまった果実のような気持ちを 接着しました〉 男の人は、わりあい簡単に記念日や誕生日を忘れますね(私も忘れる方なので、男っぽいのかもしれません)女の人は、そのことに、かなりショックを受けたりする、ようですが・・・。 〈あなたは きっと 自由で苛酷な 馬になれるでしょう わたしは きっと どこかの土になれるでしょう〉 読者が、自由に〈あなた〉と〈わたし〉の関係性を「物語」として思い浮かべればよい、のでしょうけれど(恋人同士とか、先生と生徒、とか、あるいは、離れて暮らす母と息子、とか・・・)私は、父と娘の切なさ、いとおしさを重ねながら読みました。それぞれの読者が、それぞれの関係性を思いながら読むことができる。そうした奥行きというのか、余白が残されているところに惹かれます。 〈あなたが生きている 手をつないで あったかい、つめたい 毛布をかけて あったかい、さむくない 口の動きで 心が色づく それだけで〉 最後に、心の高まりのままに歌い上げる部分も、声高に叫ぶわけでは無く、あくまでも控えめに畳みかけていく。素敵な作品でした。
0花緒さま はじめまして。 お読みいただき、コメントを感謝いたします。 また、楽しく読めました、とのお言葉に正直ホッといたしました。 B-REVIEWの掲示板では、たくさんの方々の作品に触れることが出来、喜びを感じております。 ありがとうございます。 m.tasakiさま はじめまして。 お読みいただき、コメントを感謝いたします。 この詩は一年ほど前に母の病室で書いたものでしたので、そのような気配が伝わりましたでしょうか。自分を客観視する意味でも詩に救われていた時期でありました。 細かなところまで読み取っていただいて、ありがとうございました。 まりもさま はじめまして。 お読みいただき、コメントを感謝いたします。 わたしひとりの小さな日常の断片が、ここに置かせて頂くことで思いもよらない広がりを得ることが出来ました。 わたしにとって新しい発見でもあり、今まで書いて来てよかったなとシミジミ思います。 生きることと死ぬことは一瞬ですが、[どちらとも呼べない刻]を貰ってしまったら、、、側にいるわたしたちは証人となるしか仕様のないことなのかと思ったりもします。 ありがとうございました。
0後半は自分にはちょっと難しく感じましたが、前半の一連の流れとても綺麗だな、いいな、と思いました。特に2連目と3連目の「(あらわれる 姿)」までは特に好きです。2回出てくる「あしたの約束など/どうでもよいと思うのです」という着地点、とても詩的ですね。
0survofさま はじめまして。 お読みいただき、コメントをありがとうございます。 気に入っていただけたこと、とてもうれしく思います。 日常的には即興詩を書くことも多いのですが、初めてこちらに投稿するには…と悩んでしまいました。 詩的という言葉に、おなかがぎゅっとなりました。 ありがとうございます。
0はじめまして。 女々しい、から、かけ離れたザ、女の唄、というか、コッコのような力強さが柔らかい口調から伝わりました。男だと泣いちゃうけど女はピシャリと断ち切る、そんな決意を読み取りました。が、あくまで個人的な感想ですので、はい。 カッコをつかった映像表現も上手いな、と思うし、文の言い回しも良かったです。 いっそう あおくなる キリギリスのように ここ、好きです。 では。
05or6さま はじめまして。 お読みいただき、コメントに感謝いたします。 気にいっていただけた所があって、とても嬉しく思います。目に見えている光景以外に脳に映る光景がありますね?それを少しだけ()で書いてみました。 きっと女性の本性は皆、強いと思います。笑 ありがとうございました。
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