ナイフは決して器用じゃない - B-REVIEW
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PICK UP - REVIEW

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二酸化窒素

ずっと待っていた

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ナイフは決して器用じゃない    

欄干を伝う雨粒、橋を渡れば浄土が揺蕩う。 八百万の神に背を向けて、宙ぶらりんの翅なし蛾。 息巻いて啖呵を切ることもなく、愉悦に浸るのは人の性。 お母さん? 今でも皇室を愛していますか? お父さん? 今でも囲碁をたしなんでいますか? 崩れていくの現実ではなくて、綿あめの食感、美味をした、 幻想。 あなた、 あなた、 あなた、 元気でいますか? オリオン座の近くで超新星爆発があったようです。 今日も死滅する蟻の、働きすぎた蟻の残骸。 明日も決して陽の目を見ないだろう画家の、静物画。 昨日に置き忘れたのは、確か、 歓びを最終駅とする列車のチケット。 なのに、それでも母と作った蒸しパンはとても美味しくて、 私は枯れた涙の行き先を知ろうとするのです。 あなた、 あなたは今日。 暴動の起こったイギリスの街路を皇室車が行く。 荒くれた若者が車窓を叩き尋ねる。 「ハイ、Mrチャールズ。今日の機嫌はどうだい?」 YouTubeのコメ欄に溢れる皇室への罵声と併せて、 それは僕の胸に響き、届く。 人は人の痛みなんて知らなければよかった。 知ることさえなければ自傷も他傷もあり得なかったはずだ。 橋の向こうではきっと霧は晴れる。 楽しいこと、嬉しいことで満ちていて、 蒸しパンを誰の気兼ねもなく、 世の中の一切を忘れて、食べられる。 雨粒は尽きることも知らずに落下していく。 傘を差しても、つき破るかのように、 勢いよくこぼれ落ちていく。 現代、テレビショーはもう本当のことを喋ってくれなくなった。 新聞に事実の何がしかが存在する確率は、 虹が壊れる瞬間を、目に焼きつけるくらいの確率だろう。 尖れたナイフは今日も切れがいいのに。 光れ、光れ、光れ、閃光、光れ、弾け飛べ花火。 今でもそこに息吹を感じるのなら。 だから、 光れ、光れ、光れ、閃光よ。



ナイフは決して器用じゃない ポイントセクション

作品データ

コメント数 : 21
P V 数 : 2345.9
お気に入り数: 0
投票数   : 3
ポイント数 : 4

作成日時 2022-06-21
コメント日時 2022-07-08
#現代詩 #縦書き
項目全期間(2024/12/31現在)投稿後10日間
叙情性10
前衛性00
可読性00
エンタメ00
技巧20
音韻00
構成10
総合ポイント40
 平均値  中央値 
叙情性11
前衛性00
可読性00
 エンタメ00
技巧22
音韻00
構成11
総合44
閲覧指数:2345.9
2024/12/31 02時01分03秒現在
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※自作品にはポイントを入れられません。

    作品に書かれた推薦文

ナイフは決して器用じゃない コメントセクション

コメント数(21)
自由美学
自由美学
作品へ
(2022-06-22)

器用じゃない主人公がナイフで守っていたのは心だろうか。 いざとなれば自分に突きつけるつもりのナイフ。願わくばこれで蒸しパンを切り分けたい。自分や誰かを傷つけるんじゃなく、蒸しパンを皆に振るまい喜びを共有したい。それほどにまだ主人公のなかには愛が溢れていた。 >世の中の一切を忘れて、食べられる。 ここ良いですね。人としてこの世に腰を据えた覚悟のようなものが見える。きっと食べないんだな。 いっそ人間捨てて綿あめを舐めながら死ぬかな。いや、やっぱり人の世で辛酸舐め尽くして死んでやる!みたいな、器用に見せかけること、強がることに疲れ、思わずポロッとこぼしてしまった弱音かなと。 解釈まちがってたらすみません。

1
よんじゅう
よんじゅう
作品へ
(2022-06-22)

よくわからなかったっす。あなたのことばはあなたのためにあるものですか、それとも読む人のためにあるのだろうか?この作品は読もうと思えばいくらでもしみてくる気がするけど、ぼくはそんなに若くはないし時間もねぇー、読んでも読んでもわからなくていいから、あなたの作品を書いてください。そんな感想です。

1
つつみ
作品へ
(2022-06-22)

涙の表現、朧気ですが前作か前々作では、何か違う表現だった気がするのです。わたしは正直その表現があまり好きではなかったのですが、今回は「枯れた涙」となっていて、すんなり読めた気がします。 蒸しパンが何を表現しているのか読み込めませんが、恐らく何らかの理由で食べることができないのだと思います。夢の中とか、極端ですが死んだ後とか、そういうところでしか食べられないものなのかと。 実際に新聞やテレビで流れている情報のほとんどは「現実」で、確かにそこにあるもの、証明するものがある情報、だと思いますが 「本当のこと」、「事実」、というのは、個人的に本当にあるのかなと思っています。本人にも他人にもわかり得ない不確かなもので、はっきりとしないもの。虹が壊れる瞬間はずっと見ていれば見えるけれども、それよりずっと見えないものだと思います。

1
stereotype2085
自由美学さんへ
(2022-06-23)

自由美学さん、コメントありがとうございます。ナイフは渇望、愛を渇望する心を一面表しているのですが、そのような心は諸刃の剣で、仰るとおり自分自身をも傷つけてしまう可能性もあるのです。蒸しパンはのどかな日常、目の前にある幸せの象徴でもあるのですが、それを切り分け皆に振る舞いたい、ナイフでもって。という発想、着眼は僕も気づかなかったので、詩全体を通して見るとそのようなニュアンスもあるなと目から鱗の気持ちです。一切を忘れて、の部分は確かに弱音と言えば弱音かもしれません。話者にとって今の時点では悲しみに満ちた世界から離脱するための。美学さんの着眼は、僕自身も無意識的だった部分に触れていて、詩に奥行きを与えてくれました。

0
stereotype2085
よんじゅうさんへ
(2022-06-23)

よんじゅうさん、コメントありがとうございます。言葉は僕のものでもあり、読み手のものでもあります。それは変幻自在で見えたと思ったら見えなくなり、掴めたと思ったら掴めなくなるものです。僕にとっては。僕自身の作品を。この作品がよんじゅうさんにとってそう見えなかったということは、僕もまだまだ研鑽の余地ありですね。厳しい中にも可能性を見い出そうとしてくれたコメントに感謝します。

1
stereotype2085
つつみさんへ
(2022-06-23)

つつみさん、コメントありがとうございます。涙が出てきたのは直近では、多分「アルディの写像」だと思います。あの詩を書いた時点では、僕自身とても辛い状況にあり、様々なことに懐疑的だったりしたのですが、今はとあることが原因でとても心が安定し、満たされています。だから「涙の行き先を知ろうとする」という感情を取り戻す表現になったのだと思います。人間って基本的に辛く切ない時には、感情から目を背ける、感情を封鎖する生き物だと僕は思っているのです。感情を取り戻す。幸福への近道の一つではないでしょうか。蒸しパンは自由美学さんへの返信で書いた通り、日常のささやかな幸せの象徴だったりするのですが、まだこの詩の話者には痛みがありますね。つつみさんの言う通り食べれない、食べきれない、もしくは食べたとしてもその喜びを噛み締めることが出来ない状態なのだと思います。 本当のこと、事実についてのつつみさんの解釈はとても面白く興味深くて、本当のことや事実は、自分に関わることでさえ見えないものかもしれません。「本当も嘘も興味がないのよ」と歌ったり、表現したりすることは出来るのですが、僕は出来得る限り、せめて自分自身の本当にだけは近づいていきたい。この詩は抽象的な表現、メタファーで満ちているのですが、実は構造として愛について書かれた詩です。僕はこの詩における「あなた」にどうしてここまで恋焦がれるのか、その理由に最近ようやく気づき始めました。その方は努力する人が好きで、ご自身も努力家で、どんなに辛い境遇でもチャレンジすべきことにはチャレンジする方です。僕はその方の人柄、性格、心持ち、全てが好きなのです。僕はその方と接していると、満たされ喪失した心が補完される気持ちになります。肉体的なものを超えた何か。ロートレックは「あなた方が愛について語る時、それはベッドの上で起こっていることについて語っているに過ぎません。愛とは何かもっと違うものです」と言っています。僕はこの詩における「あなた」と接すると、ロートレックの言葉が紐解けていく気持ちになるのです。欠損した心と体を補完する人。それが「あなた」なのです。 何だか気づかない内に物凄い長文になってしまいましたね。この詩においては「あなた」以外の表現は、流れていき、消費され、いずれ風化していくニュースのようなものかもしれません。肉体、物質的なものは消失しても残る何かを表現したのがこの詩かもしれません。 あ、ちなみに僕も努力家です(売り込むんかいっ)

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stereotype2085
さんへ
(2022-06-29)

ABさんコメントありがとうございます。返信遅れました。そうですね。とても素直でひたむきです。最近いいことが立て続けに起こっていて、自分の心情を滑らかに書ける印象がするんですよ。どこまで書くか。余談ですが、先のつつみさんへの返信に関しては喋りすぎたなと思っています。笑えてきますが。

0
ほば
作品へ
(2022-06-29)

何をどこまで書くかてのは難しいですね。蒸しパンを腹いっぱい食べられるという言葉の前に嬉しい、楽しい、というように書かれていますが、読み手は既に母に関する好ましい記憶の象徴として蒸しパンが描かれているのは周知だと思うのでそこら辺は省略した方が良かったように思いました。父はあまり触れられてないなぁ(敢えて避けた印象?)というのとナイフ、これは恐らく語り手をあらわしてると思うのですがタイトルの器用じゃないとの関連性が詩文では薄いと感じた次第です。散文としては滑らかで良さもあるのですが、モチーフのナイフとその他との関係性を掘り下げた方が家族や他者との関係性が生きるのではないかと考えました。

0
stereotype2085
ほばさんへ
(2022-06-29)

ほばさん、コメントありがとうございます。父については確かに避けられていますね。今の僕の心証も影響してるんでしょう。そうですね。実はこの詩の背後にある核は、言及の少ない「あなた」なのですが、「ナイフ」と他の、家族とかとの関連性についても、もう少し書き込んだ方が良かったかもしれません。

0
エイクピア
作品へ
(2022-07-01)

皇室とどう向き合うかは難しい問題だと思うのです。いろいろな内容と繋がっていると思うのです。自傷、他傷。人の痛みを知る事とは。私はこの詩を読んで自分が公共の電波を通じて流れて来る内容を、捌いている自分の頭脳が、あれは物語を読んで居るのか、映像を主に読んで居るのか、少し訝しいと思うのです。両方にさらされて、読む意欲を失っているのではないかとさえ思っているからです。

0
stereotype2085
エイクピアさんへ
(2022-07-01)

エイクピアさん、とても興味深いコメントをありがとうございます。本当に情報が溢れる現代、自分が能動的に情報を取捨選択しているのか、疑問に思うことはありますよね。溢れる情報、錯綜する真実と偽り。この詩では僕の心にある本当のことに迫ったつもりです。それが少しでも読み手さんに届いたのなら、と思います。

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妻咲邦香
作品へ
(2022-07-04)

ちょっと不安を覚えるくらいに正の側に立ってしまっている気もします。それちょっと違うんじゃない?と思わせてくれた方がよりしっくり来るかな。これぐらい見事な筆力があるんだったら、その方が立ち位置がより引き立つと思います。

0
stereotype2085
妻咲邦香さんへ
(2022-07-04)

妻咲さん、興味深いコメントありがとうございます。確かに。確かにですね。道徳的、倫理的、あるいは一般的な考え、価値観に照らし合わせて、これはひょっとして危ういことを書いてるんじゃないか?と思わせるくらいの方がより一層面白い詩が書けるかもしれません。

1
田中宏輔
田中宏輔
作品へ
(2022-07-04)

人は人の痛みなんて知らなければよかった。 知ることさえなければ自傷も他傷もあり得なかったはずだ。 ほんとうにね。

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stereotype2085
田中宏輔さんへ
(2022-07-05)

田中宏輔さん、コメントありがとうございます。宏輔さんのコメントは短い中にも言外に含まれたものがある気がして、学ぶところが多いです。

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羽田恭
作品へ
(2022-07-07)

倦んだ日常や世界に対する最終連。 ナイフの輝きなのか、閃光を放つ雷をナイフに例えているのか。 最終連の切れ味は効いています!

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stereotype2085
羽田恭さんへ
(2022-07-07)

羽田さん、コメントありがとうございます。この詩は結構悲しみや空虚感で実は満ちているのですが、それを引き上げる最終連。鈍い光沢を放っているのではないかと。賛辞をいただき嬉しいです!

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武下愛
武下愛
作品へ
(2022-07-07)

それでも抱えた傷から何を産み出すしかでしかないサガなような気もする、これも一つの答えです。

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湖湖
湖湖
作品へ
(2022-07-07)

題名にね、「ダンスはうまく踊れない」という歌が昔あったことを思い出しましたよ。チ ーズ蒸しパンが出始めのころ、JKだったのが懐かしいわ。今はコンビニでどんどん新作が溢れますね。嘆きは砂漠で薔薇の化石になるといいです、たしか、そんな名前の石があったはず。願いですけれども。

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stereotype2085
武下愛さんへ
(2022-07-08)

竹下愛さん、コメントありがとうございます。抱えた傷から。本当にそうですね。産みだすし、産まれるんでしょう。ちなみに竹下さんのHNは愛。名は体を表すな、と思いました。

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stereotype2085
湖湖さんへ
(2022-07-08)

湖湖さん、コメントありがとうございます。 >嘆きは砂漠で薔薇の化石になるといいです。 この言葉だけで今作に更なる奥行きが与えられました。 美しいものは美しいままで、更に逞しくという。少しキザですが。

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