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ドブンヌ
詩人の血管、汚泥を流しやる寒村の、修道院の、 旅行鞄には、蹲る薔薇の 骨 からからからと転がる乾草車の、 欺く勿れ、歎く勿れ、憎む勿れ、と 吐瀉物、の様な 食卓に花を添えて新聞紙より、 か黒い血、が会話されるべき、そうその、電話機、 黙殺された、市民達 その悲鳴、 虐殺めいた歓談を受け取りながらも、 地盤沈下をしていく、その町に 狂人とスープ皿、 乾いた檻に出口を、 品行方正な市民の皆様、と 不文律で殆ど駄目に為った給水塔、 井戸の底の集合住宅 靴の裏底、 天文館の木馬から、からからから、と転がるしかばねの、ような襯衣へ潰された眼から 滴る、 遂に逃れて、空間座標始点から、海の窓硝子へ 闇と、闇を渡る反響の どこまでが、その地下空洞なのか 夕の鉄塔は 配管を施されたかのように、斑な錆を浮べ それでも老朽化した 町役場のリノリウムの床も 昭和四八年竣工、 そして未だ未完成の新都市線建築も、 退色しながら古びてゆきます、 そうそう、 あの日も鳴ってたじゃないですか、電話機とか とかって何よ、ほかにも何か鳴ってたみたいじゃないの 破廉恥ねえ、ほんとうに破廉恥 ヌッタリーヌさん、 あの日も鳴っていたらしいわよ あらそう、鳴っていたかしら そうそう、その電話よ 引き取られてきたじゃないの、孤児院から、ホノメンメリさんったら、こりゃ鰻重じゃなくて重鰻じゃねえかって、はち切れんばかりの笑顔をなさって、 そう、みんな笑顔だったわね、ドブンヌをのぞいて あらそういえば、 豚紳士教授はどうなされたのかしら、 沼に落ちて、お亡くなりになられたんですって、 怖いわね、どうして沼へ どうして沼へ ああ、 ドブンヌ、 それはヴイヨンの様な、旨みで、 とても食べられたものではないのだった、 そうそう、ドブンヌ、味が。 それは恐ろしい事に、 示し合わせたかのように、 エモいとかエモくないとか、 その次元を遥かに超えていたのである、とてつもない、汚れっぷりで。
ドブンヌ ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1039.4
お気に入り数: 0
投票数 : 3
ポイント数 : 4
作成日時 2022-06-02
コメント日時 2022-06-22
項目 | 全期間(2024/12/22現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 2 | 2 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 2 | 2 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 4 | 4 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 2 | 2 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 2 | 2 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 4 | 4 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
これはスゴイ。 何がスゴイかって、古典や文献、多くの詩に触れている方にとってこういうマネはかなり出来ないものなんですよ。それどころかかなり危険なんですね。これまでの自分の知性・哲学を否定しかねないから。 で、もう少し踏み込んだ見方をしてみます。「詩は遊びから生まれた」ってな言葉があるんですけども。これは古代から現在にも見られる若い男女の交唱歌を論拠にしてるんですね。日本でも「はないちもんめ」なんかがこれに当たりますが、海外のだともっと即興性があるんですね。中盤の掛け合いなんかがまさにソレです。さらに沙一さんの指摘しておられる造語の数々が登場しますが、これはルイスキャロルの童話などの「ナンセンス文学」に出てくる言葉遊びの要素で、詩を機能的構造的に解釈するよりも、只々おもしろくしてやろうって試みです。 そして全体的に汚い!これもスカトロジーといって子供が好む「言葉を破壊し汚くすることで」面白くするというやつです。 即興性、ナンセンス、スカトロジー。これらを詩の原点ともいうべき要素へ立ち返って鷹枕さんはブレイクスルーを果たされた印象です。もう一度言いますがスゴイです! 最後に個人的に言いたいのは、造語の語尾にある[ヌ]であり[メリ]!! なんかフランス語っぽくない!? 汚いっぽいようでキレイっぽくない!?
0ご講評を賜り、允に有り難うございます。 膨らませるべき箇所を膨らませず、如何でも良い所をフォーカス致します様な、出鱈目を試みさせて頂きました次第でございます。 些かでも、滑稽が伝わりましたならば幸いでございます。
0ご講評を賜り、嬉しく存じます。 いつも通りの展開、結句へ到る迄の流れに。如何とも倦んでしまったものですから。 前半、世界像を描写、構築致しました後に、後半の人物達の会話に拠って全てを台無しに、という、 何ともマゾヒスティック且つサディスティックな構成を取らせて頂きました次第でございます。 この様な時世に、事実を蔑ろにして迄「私」をやっていられるかという、僅かならぬ怒りをも、思う所もございまして。 また、不条理文学を如何に、現代の詩へ落し込むか、という命題にも興味がございましたものですから。 何とも酷い作品だと、酷さを半ば喜びつつ、認めさせて頂きました次第でございます。 最後になりましたが、着想の許などを。 劇作家として高名で在られました故・別役実氏が。ケラリーノ・サンドロヴィッチ氏との対談の中に於きまして仰っておられました言葉(朧げ)でございますが。 「不条理とはナンセンスなんだ」と言う至言より、発想の種子を覚え、実作とさせて頂きました事を、附け加えさせて頂きたく存じ上げます。 因みに、ドブンヌ を漢字では ドブン奴 と書きます。
0会話の部分が素敵です。良い。三回ぐらい読みましたが、私アホなので、全く意味分かりませんが、BBAの会話がリアルで、面白いです。
0たぶんすごく良いものなのだろうけど、 そして間違いなく意味のある作品なんだろうけど、 個人的にはがっかりしてしまった。 素晴らしい技巧だと思います。 思いやりがある。
0あ、すみません他者からだと意味がわからないのかもなので説明 鷹枕可さんは私の詩のコメントに、暗に「扇情に逃げてないか、心身のバランスを敢えて崩してないか」というような趣旨を書かれており、 私もそれにたいして痛いところをつかれたなあ、うるせいやいっと思ってまして。 きっと地に足のついた詩を書く方なのだろうなあと思っていたので、ということで、 作品自体は素晴らしいと思いました。 私ももう少し詩を勉強するべきなんでしょうね。がんばります。
0ありがとうございます。 会話体に付きましては、ケラ氏の脚本、及び小津映画を参考にさせて頂きました。品性はかなり劣るものではございますが。
0落胆をお懐きに成られましたとの事、重く、受け止めさせて頂きます。 受けを衒うか、社会や個人の問題を提起するべきか。両者の間にていつも悩みつつ、詩作をさせて頂いております。 本作は些か慾が勝ち過ぎてしまいました様で、余り誉められたものではないと、痛感を致しております。 蛇足ではございますが。 心は若くとも、身体が追い付いて来てはくれない、という現実を。 受け入れざるを得なくなりました頃合が、三十代中盤頃にございました事を、思い返しております。 如何か、余りご自身を酷使なさらず、大切になされて下さいませ。
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