今にも雨が降りだしそうな声色だったから傘の代わりに嘘をさしてみたんだ。
『昨日さ、冷蔵庫から恐竜がぬけだしてきたんだけど』
もちろん、冷蔵庫に恐竜なんかいる訳もなくて昨日観たB級映画より脈絡もないハリボテだったから雨を遮ることなんて出来なくて、濡れねずみになった。
……嘘です。あんまり冷たい声音だったから、毛布の代わりに嘘をかぶせたんです。
『あなたのことを皆んなが愛してるよ。愛こそすべてだ』
もちろん、愛こそすべてな訳もない。ニュースでは男が楽に死刑にして欲しかった、なんて求愛の言葉を吐いたが安っぽくてうさんくさいから売れやしない。無償の愛は今日も有償で取引きされている。銘柄はcamel。毛布の代わりに嘘を被せたら燃え尽きた。
……嘘です。あんまり熱っぽい声色だったから、嘘の代わりに灰をかぶせたんです。
灰被りの魔法。でも午前0時まで、ひと呼吸。灰は灰で嘘に塗れただけだった。握りしめたり、手放したり、毛布をかぶった濡れねずみは灰に塗れたまま夜の街に躍りでた。風に毛布がさらわれたとき、そこには濡れねずみの姿はなく、灰が巻かれて散っていった。
ブランキー、お前は街角で死ぬだろう、だから
作品データ
コメント数 : 10
P V 数 : 1711.6
お気に入り数: 3
投票数 : 4
ポイント数 : 117
作成日時 2022-05-08
コメント日時 2022-06-03
#現代詩
#縦書き
#受賞作
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 31 | 31 |
前衛性 | 10 | 10 |
可読性 | 5 | 5 |
エンタメ | 11 | 11 |
技巧 | 20 | 20 |
音韻 | 10 | 10 |
構成 | 30 | 30 |
総合ポイント | 117 | 117 |
| 平均値 | 中央値 |
叙情性 | 15.5 | 15.5 |
前衛性 | 5 | 5 |
可読性 | 2.5 | 2.5 |
エンタメ | 5.5 | 5.5 |
技巧 | 10 | 10 |
音韻 | 5 | 5 |
構成 | 15 | 15 |
総合 | 58.5 | 58.5 |
閲覧指数:1711.6
2024/11/21 20時45分37秒現在
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とても久しぶりに、ノートに書き写すくらい好きな詩でした。何度も何度も読み、色々と思いめぐらせて楽しいです。 「嘘」の比喩として、傘、毛布、灰が出てきますが、1ヶ所だけでなく、他の連にも再び出てくることで、「嘘」についてより深く考えてしまいました。 「嘘」をつく度に、濡れて、燃え尽きて、灰に濡れて、最後は散ってしまう。これは嘘をついた方もつかれた方にもあり得ますが、私は嘘をついた側で読みました。 しかし、決して悪意のある嘘ではない。 雨が降りだしそうな声色が泣きそうな声、冷たい声はそのままの意味で、熱っぽい声色って怒ってる声だったとして。 私はそういう人に対して嘘をつくことが多かったです。悪意はないが優しさでもない。自分を守るためです。 しかし、ここ最近、そういう苦し紛れの嘘をつくことをやめました。傘や毛布の代わりに嘘をつくことは、自分を傷つけることだったから。 今はどうしているかというと、「何も言わない」という対応です。例え相手が、嘘でもいいから傘や毛布代わりの言葉を求めていたとしてもです。 最後のシンデレラの魔法のように、一瞬は相手の感情を抑えるための嘘だったとしても、それは傘でも毛布でもなく、ただの灰で、少し風が舞っただけで消えてしまう。または、その嘘が相手を、自分自身を燃やして、消え去ることもある。 個人的な感想でしたが、そのようなことを考えました。
死刑にしてほしい男などに対し、倫理的に厳しい目を持ちつつも、嘘です、と優しい言葉もかける。その両方がある。 現代的な洗練さと、個人のつくり上げてきた知恵および優しさ、 生得の心を誠実に扱っていること、などが表れている詩であると思います。 意味的な展開を見事に見せており、使われている言葉も素晴らしいと思いました。 このような世界の中で住んでいる人間は、素晴らしい感情を持ってお互いにそれぞれ 生きているでしょうね。そんなことを感じさせられました。詩というものの、 良い形だと思います。
0浅井健一が耳元でささやいてくるような作品でした。 こういう世界観好きです。 ただ言葉のセレクトという点において、 ハードボイルドに持っていきたいのかウェットでソフトな路線なのか、 くっきりさせたほうがわたしはより好きです。
0ひとは兎角、真実か角を立てない選択肢のどちらかを選ぶものなのでしょうかね。嘘ってなんだろう。よく考えます。自分が楽になるための嘘や、これだけは人に知られたくないこととか、人のためとか。出来れば詩では嘘をつきたくないなぁ、と思うこの頃です。
1色々と反社会的な許されないことをニュースなんかで観る時、駄目だなこいつ、という気持ちとそうなるに至った道筋を考えてしまう事があります。もちろん、それで無罪な訳もないけど。そうした気持ちも忘れずに生きていきたいと思ってしまいますね。
1ブランキージェットシティ…懐かしいさ、すらかんじますね。どうもハードボイルドに徹しきれない、自らが出てしまったようです。チャンドラーやハメットのようにはいかんようです。
0この世界観はマンションポエムらしさがあってよい。言葉の意味とそれを使う意図の差、ズレ方にこそ散文の手法による煌めきがある。大嘘つきな私の表現はそれをコアとしていて、この作品には好感を持った。一票入れます。
0最初の二行にやられてしまいました!
0話は逸れるがマンションポエムは知る限りにおいて、名前であり販売するためのマンションを不思議なことに排除するかのようなものを感じます。さらに考えるとあれはマンションのある土地とそこに住む人のイメージを演出しているように思います。はて?何を書きたかったのかを忘れてしまった。あぁ、つまり、言葉なんて簡単に信じちゃいけないよね、かな。なにが嘘で何が本当か。イメージの焦点を散文でずらしていく。グラデーションするみたいにじりじりと。注意ぶかく信用しないで、でもたまには騙されたくもあるのが矛盾だよなぁ。
0やったぜ!サンクス、ありがとう
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