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裸の水
裸の水が去ってゆく あの東の空の向こうには 何が待ち受けているのでしょう 靄にも霞にも纏われない 裸の水は うねうねとくねりながら 銀色の光を囁きながら 空に張られた透明な 床板の上をゆっくり這うように 東に向けて去ってゆくのです 確かな湿気を担う風に護られて 裸の水は干上がることなく 安心して空を往くことができて 水の中に溶け込む無機イオン達は 湿気を担う風に感謝しています ごく僅な電離と再結合をを繰り返す 水分子の不規則な格子の間を 揺らめきながら漂う無機イオンは 靄のような電子雲から伸ばした か弱く繊細な電荷の触手を 微かに電離した水酸イオンと 刹那の接触と解離をし続けながら 孤独に漂ってゆきます その一瞬の邂逅と離別に裸の水は うち震えて うねうねとくねりながら 進まざるを得ないのです そして銀色の光を囁きながら あの遥かな東の空のしたに広がる 哀しみの大地に 常に己の内に抱えている 永遠に続く邂逅と離別故の震えを 伝えるために うねうねとくねりながらも ひたむきに東の空の向こうへと 去ってゆくのです 靄にも霞にも纏われずに 湿気を担う風に護られながら
裸の水 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 834.2
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2017-11-05
コメント日時 2017-11-09
項目 | 全期間(2024/11/22現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
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エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
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構成 | 0 | 0 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
「裸の水」という言葉がなんとも印象的ですね。時折、こうした、「この言葉とこの言葉が繋がるのか」という驚きを、詩を読んでいて受けることがありますが、おそらく、いわゆるポエジーというものの源と言えるものなのでしょう。 この「裸の水」という言葉は、(単純化させてしまうような読みで恐縮なのですが)雲のことなのでしょうか。 この詩全編を見ると、「永遠」や「邂逅」といったように、やや角ばっていて、観念的な言葉が多いように見えますが、こうした言葉も、不思議に浮いて見えません。おそらくそれは、「無機イオン」「水酸化イオン」といった科学の用語を巧みに使うことができているからでしょう。(どことなく宮沢賢治の『春と修羅』を連想させます) こうした科学用語を、「裸の水」という詩的な概念で包むことによって、それらにどこか柔らかい色を与えています。このようにして、科学用語の角を取っているのですが、それと連動するようにして、先に挙げた観念的な語彙も、どこか柔らかい感覚の中で提示されていますね。上手だと思いました。
0弓巠さま この詩は、ふと心に湧いた「裸の水」という言葉と、それから連想した視覚的なイメージから書いたものです。 ですから、「裸の水」という言葉は何かの喩えという限定はしていません。 読む方により様々に受け取っていただきたいです。 コメントをありがとうございました。
0仲程さま 初めまして。 教材ビデオを見せると同時に、詩を読ませるような授業があったら面白いですね。 いろいろな教材から、詩作のヒントが得られると思います。 コメントをありがとうございました。
0m.tasakiさん、こんにちは。 言葉が感情を誘いかけながら、少し距離を置いて逃げていく。そんな感触がありました。こういう詩は好きです。 >哀しみの大地に/常に己の内に抱えている/永遠に続く邂逅と離別故の震えを ここはちょっと感傷的ですけれど、結論にはなっていないので作品の味として読めるように思いました。 そもそも「哀しみの大地」という言葉は背景がないのなら、「哀しみ」とは別の何ものかでいられる可能性を持つものです。それは類型ではなく、自由な発想への起点となるのではないでしょうか。
0Migikataさま こんにちは。 哀しみの大地に/常に己の内に抱えている 永遠に続く邂逅と離別故の震えを 伝えるために 言葉が感情を誘いかけながら、少し距離を置いて逃げていく、
0Migikataさま 申し訳ありません。 ミスタッチで返信が途中で送信されてしまいました。 再度送り直します。 哀しみの大地に/常に己の内に抱えている/永遠に続く邂逅と離別故の震えを/伝えるために、という部分は感傷的ですか。なかなか難しいですね。 言葉が感情を誘いかけながら、少し距離を置いて逃げていく、という感覚は、私にはとても新鮮に感じられました。 コメントをありがとうございました。
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