別枠表示
ラグい。
日は暮れかけ先刻まで太陽の明るさに怯え尻込んでいた月がおずおずと顔を出す。 日々の限りありし事は拾い集めた祖父母の遺骨から嫌ほど身に染みていた。 やけに気前よく小遣いをくれた人達がまるで軽石のようになって、ぼくはそれをトングで挟んだ。 母が傍で泣きながら“そおっと掴みなさい”と言う。 声がやさしい。 ぼくの顔を見るたび、 “張り倒してやろうか” と突っかかるあの人とはまるで別人だ。 時は永遠かもしれないが、人や動物や物質に分け与えられたそれは酷くけちな量でしかない。 ぼくは飼い蛇が脱皮するたび怖くなる。 恋人の誕生日が来るたび怯えている。 友人はなぜか生き急ぐやつばかりだ。 好きな人も好きなものも、 あっという間に消え去る。 小さじ一杯の砂糖で満足し、たった三滴の酒で酔っぱらわねば、 ハイスピード・セクションは通過できない。 昼休みはたったの1時間。 飯をかっこみ、仮眠を取り、ログインボーナスを得て、煙草を半分だけ吸う。 命は有限。そしてそのほとんどが見知らぬ誰かに握られている。 ほんの僅かな隙間時間、そうとは知らず命懸けで不特定多数の嫌悪へ向け乱射するI hate you. 急く日々の早鐘は憎しみに加速し、BPMを上げる。 “張り倒してやろうか” 頭の中でハモる声。母と僕。 気に入らないものが多すぎる。 この星の自転に置き去られたのろま共の、 理不尽で田舎臭い怒り。
ラグい。 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1098.2
お気に入り数: 1
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2021-10-11
コメント日時 2021-10-17
項目 | 全期間(2024/11/22現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 0 | 0 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
私も、家族とのお別れの日の情景を思い出していました。 詩に流れる、“張り倒してやろうか” の声が、どなたのものか、私にはわからなかったのですが、切なさが、詩を飛び越えて叫んだように思えました。 人間臭い、人間らしい言葉が、詩のリズムとともに入って来て、こんな文体、私は好きです。
1お読み下さり、かつコメントまで頂き恐縮です。有難う御座います。僕にとって詩作は分からないことばかりで難儀しておりますが、心叫ぶままに書き続けたいと思います。
1拝読しました。 因果ってものは、いつ顔を出すか分からない 大切なものが無くなってしまう瞬間 でもそれはいつか誰かが繰り返し、知らない間にまた誰かにつながってる 厳然として、そこにある。いまわしいほどに。 自分は自分しか知らない自分でいたい。 自分の価値は自分で決める。抵抗・脱却、そこから逃れられぬ自噴 そんな風にわたしはこの詩を感じました。 とてもいい詩だと思います。他のかたにもこの詩をどう感じるか聞いてみたい…
1お読み下さり有難う御座います。丁寧に読み解いて頂いたことを大変嬉しく思います。個人的な実感として、日々の暮らしの中に、誰のせいにもできない憤りや、わけもない寂しさを感じることが多くあり、それを言い表したいという欲求があります。
0