蝶になるきみのX
作品を
別枠表示
別枠表示
部屋
わたしにはどうしても入られない部屋があった。扉に錠があるわけではなく、中に入らないように親から言われているわけでもない。むしろ、そこは開け放されていて、ある夕暮れ、外から中を覗くと、酢漿の花がイエローに燃えているかのようで、それに慄然として見惚れているわたしがいた。 もう汗が流れない八月頃からであろうか。わたしはその部屋のことを何とも思わなくなり、用事などのためにたびたび出入りするようになっていた。だが、そのときから幸や不幸といったことに無縁の悲しみは消え、わたしは浅はかな絶望の淵に立たされているのである。
部屋 ポイントセクション
作品データ
コメント数 ： 22
Ｐ Ｖ 数 ： 3033.8
お気に入り数： 1
投票数 ： 4
ポイント数 ： 7
作成日時 2021-07-02
コメント日時 2021-07-30
Ｐ Ｖ 数 ： 3033.8
お気に入り数： 1
投票数 ： 4
ポイント数 ： 7
作成日時 2021-07-02
コメント日時 2021-07-30
#現代詩
#縦書き
| 項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
|---|---|---|
| 叙情性 | 2 | 2 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 3 | 3 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 2 | 2 |
| 総合ポイント | 7 | 7 |
| 平均値 | 中央値 | |
|---|---|---|
| 叙情性 | 1 | 1 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 1.5 | 1.5 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 1 | 1 |
| 総合 | 3.5 | 3.5 |
※ポイントを入れるにはログインが必要です
※自作品にはポイントを入れられません。
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
部屋 コメントセクション
コメント数（22）
誰もがその部屋のまえにたつのでしょうか。特別なもの秘められていたものに触れて、それが日常化してしまったものに荒涼とした精神をみたように思います。
0〈誰もがその部屋のまえにたつのでしょうか。〉 どうなのでしょうか。立つというよりも、立たされていたのかもしれません。
0何でしょう、何が良いとはうまく言えないのですが、好きです。どのような経緯で、もしくはどうやって書いたのか気になりました。
0〈好きです〉 ありがとうございます。 〈どのような経緯で、もしくはどうやって書いたのか気になりました。 〉 コメント欄でも、批評文（推薦文？）でも良いので考察してみては。
0「幸や不幸といったことに無縁の悲しみは消え」 のいち文がいいですね 子どもの頃に持っていた得体の知れない悲しみと、入れなかった特別な部屋が出入りできるようになるということの不思議な寂しさが滲みました。
0〈不思議な寂しさ〉 これが幾分でも伝わって嬉しいです。
0それはめんどいです。笑
0子供の頃にもっているちょっと不思議な感覚が、 やがて大人になるにつれて、失ってしまう悲しみを 感じかけたのですが、 途中の、汗の流れない8月、の一文が気になりました。 「かごめかごめ」における「後ろの正面」のような、 ちょっとひやりとするような不条理さが、 普通に解釈することを拒んでいるように、 ひっそりとたたずんでいるように見えます。
0面倒くさいですか笑
0〈ちょっとひやりとするような不条理さ〉 それは確かにあると思います。そこがうまくいったのならば嬉しいです。
1端整な、というのでしょうか。何処と無く懐かしい文体です。
0〈懐かしい〉 ノスタルジアを感じてくださって嬉しいです。
0その場所は恐らく最後までひとつも変わらず、主人公の心の中だけが刻々と変わっている。花が切っ掛けになって、そこへとうとうと精神的な変容が押し寄せ、元には戻れないと悟るしかなくなる。決して入れなかったあの部屋で花に見とれたことも、今では部屋も花も取るに足らない当たり前の空間に変化してしまったことも、筆者は受け止めるのですね。彼の浅はかな絶望は、理解できる気がします。
0〈彼の浅はかな絶望は、理解できる気がします。〉 そうですか。薄っぺらい絶望があります。
0これは好きです。 あなたは作者さんの何処から来たのか、詩に聞いてみたい感じがします。 なんとも言えない不気味さや異物感があり、それらが散文を明らかに詩にしている。 谷川俊太郎さんがこれまた異物的で不穏な、謎の部屋についての詩を書いておられましたが、それを思い出しました。 静かで得体の知れない預言者のような、迫力のある詩だと思いました。
0子供の頃の神秘に対する純粋無垢な感性は大人になるにつれて鈍くなっていく、心当たりがある人は多いのではないか。神秘さには不安とか恐怖心がそういえば付いていたような気がする。デ・キリコの作品のような感じの。バタイユの「青空」を何故か思い出した。窓のシーンの所。「だが、」の変則的な展開が私には唐突に感じられて、話を一気に終わらせた感が残る。いきなり扉を閉められたような。«幸や不幸といったことに無縁の悲しみは消え» もはや、幸福も不幸もないということか。太宰治の「人間失格」のラストシーンを想起した。浅はかな絶望、作中主体がそう自覚していること自体が滑稽であるようで、何となく悲しい。もっと言うと結論の逃げを感じた。落ちが、私は好きじゃない。
0好きになってくださって嬉しいです。ありがとうございました
0酢漿が重要な概念だと思いました。幻視しているのかもしれませんが、ちょっとしたアスファルトの割れ目などに生えている酢漿草にも着目していたのかもしれません。記憶の蓄積、そんなこともふと思いました。
0たしかに平凡さを乗り越えないとダメっすね。
0ごめんなさい。その人わからないです……。
0オチが好きではないすか……。わかりました。
0少し女流井上靖の感じ漂う。
0