マカロニオン・マカロニア
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この自転車を漕いでいたら遠くまで行けるかしら・遠くまでいけたら何ができるでしょうか・マカロンでこうてきましょうか・よろしくお願いいたします・おねがいされましたので・何かこうてきましょうかね・できれば、水分の少ないお菓子がいいとおもうのですけれども・水分の少ないお菓子というのはマカロンではダメなんどすかね?・だめじゃないんですけどありきたりみたいなかんじがして・失礼極まりない豚様でございますこと・好きなお菓子は全部です、全部・嘘おっしゃい・あんまり好きじゃないんだけれどもな、そもそもお菓子なんてさ
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●登場人物
・豚
お菓子がそんなに好きじゃないけど
好きなお菓子は?と聞かれるとマカロンと答えてしまう
性別を聞かれるとブチギレルが、語尾はお嬢様言葉に関西弁と京都弁を混ぜ込んだ
エセ、みっすくスタイルを自称している。そのために友達が出来た事がない
・羊
誰かが困っていたりするのを見ると、
とりあえずお菓子をあげればいいと考えている快楽主義者
皮肉と豊かさの客観的な見え方の差異をあまり分かっていないため
豚に嫌われているが、羊は豚を嫌う事ができず、かわいそうな存在だと思っているので
助けようとしてしまう
豚、羊に連れられるまま公園のベンチに腰掛けさせられる。
羊、豚の膝の上に色とりどりのマカロンをばらまく
【第一場】
羊「お嬢様お嬢様! いくら水分の少ないお菓子だからといって、いつまでたっても食べないのであれば腐ってしまいます!」
豚「くさったって別にいいです。私はたべないんや。そう心にきめたんや。そうだわ。今日は天気がいいから、草結びでもして遊びましょうかね?」
羊「お嬢様以上様、わたくし、今日は腕によりをかけて、弁当箱におかずをぎゅっとつめてきましたのですよ。ほら、ごらんください。鳥の照り焼きチキンに、鮭の照り焼き、獣肉の焼肉を薄切りのベーコンで巻いた肉巻き肉巻き…」
豚「羊肉は入っていないの?」
羊「とんでもございません。臭いにおいが付く肉などを入れてしまいましたら、せっかくの獣肉弁当が台無しになってしまいます」
豚「私にとっては全てが台無しですわ。今日という日にこんなさめざめとした心のままこの公園を出て、真っ暗な自分の部屋に閉じこもっていないといけないだなんて!」
豚は手に掴んだ雑草を羊の顔面に投げつける。雑草を投げつけられた羊は、開いた弁当箱を手から落としてしまい、更にその場へ尻もちをついてしまう。腹の上には、獣肉弁当のおかずがべっとりと張り付いている。
羊「お嬢様!お嬢様お待ちください。今、日傘をお指しいたします…」
豚「結構です。私には何もいらないので」
羊「お嬢様、今日は隣町で小さなお祭りがあるそうですね。お嬢様はりんご飴がお好きだったでしょう?」
豚「わたくし、水分のあるお菓子は好きじゃありませんの。あんさん、はようこここからたちさってくれませんどすか?ほらほら」
羊、汚れた腹を上を豚の人差し指で突かれて後ろにのけぞる。のけぞった羊は開いていた日傘を手放してしまう。
羊「お嬢様お嬢様、お体の気分はいかがでしょうか? 何か飲み物を買ってきましょうか」
豚「そうしましたら、、、そうですね…この公園から距離の離れた場所に、鴨みたいな顔をした看板のドラッグストアがございますでしょ? その中の特価cornerみたいな所にやな、バナナチップスとミックスナッツがおいてあんねん。わしはのう、渇いた菓子ならなんでもくえるばい。ほんなら、ちょっと金渡すさかい、こうてきてもらいましょか。時間は今から時計の針がぐるっとまわってくるまでじゃ。少しでも過ぎたらわかっておりますやんなぁ?」
羊「お嬢様!承知いたしました。それでは、これから下僕共に買わせますので、少々席を外させていただきますね」
羊、豚に対して背を向け、服の脇から取り出した携帯電話の上で、自分の部下と思われる存在に対して、罵詈雑言を加えながら、豚に言われた指示を一つもこぼす事なく伝達する。その様子を豚は一瞬だけ目に入れた後、その場から走って逃げだす。
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ほうじ茶を沸かしましたからマカロンでも買てきましうか・よろしくお願いします・ お願いされてしまたから・何か買てきましうかね・バナナチプスとかでいいですかね・できれば水分の少ないお菓子がいいんですけど・ミクスナツみたいな感じですかね・ドライフルツみたいな感じ・和菓子とかはあまり好きじないのかな・好きなお菓子 は全部・お菓子じなくても・甘いものならなんでもいいよ・わかりました・わかてくれたんだね・わかられてしまいました・涙がこぼれているみたいですけど・別に零れている訳じゃないんだけどな・
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●登場人物
・牛
生きている事に存在を見出せないが
食べるという行為と寝るという行為に至上の豊かさを感じ
日常を無作為に生きる事を是としている
・トナカイ
生えている角を使って日常をだらだらと過ごしている存在を、
叩きのめす事を生き甲斐としている
しかし、その実叩いている自分の存在を許してくれる牛がいないと
自己のアイデンティティを確保できない事にも気が付いているため
ある種牛に対して依存している
【第二場】
牛、トナカイに腕を突かれ続けた結果、
皮膚がはがれ出血しているが尚その場から動かない
牛「お腹すいたねぇなんか食べ物作ってよ。お茶も沸かして」
ト「あんたのせいで、あんたのせいで昨日必死な思いで買ってきた肉も野菜もお菓子も全部全部なくなっちゃったし、なくなったらなくなったでそれでも私に仕事させようとするなんて信じられない。クズ。クズはさっさと死んじゃえばいいのに」
となかい、引き続き牛の腕をつつき続ける。
ステージの上に血がダラダラとこぼれ落ちるが、それでも牛はその場から動かず
尻を左手で搔いている。
牛「それよりもさ、お腹減ったし、君の料理はおいしいから許してあげる」
ト「なんであんなに食べたのにお腹が減っているのかもわからないし、なんで料理を更に作らせるのかもわからないし、なんでそれでも褒めてくれるのか分からないし、なんで許されるのかもわかんないよ」
トナカイはその場で項垂れて泣き始める。牛はむくむくと起き上がり、ティッシュを箱から引き抜くと、目に当て買い、トナカイの身体を包み込むように「辛かったね」とぼやく
トナカイは牛の事を一旦拒絶しようとするが、抱擁の手を抗う事ができず、身を任せるまま牛に抱かれてしまう。
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と思いながら今日は雨が降っているのに・色々なおつかいを頼んでしまったので・後悔していますか?・別にしている訳じゃないんだけどな・ごめんねというまえに・何か甘いものが食べたくてしかたがなかった・明るい会話をしようか・明るい会話ですか・暗い会話よりはいいと思うんだけど・暗い会話をせずに・明るい会話をしましょう・と言われてしまうと・多分何もできなくなってしまいます・そういうものでしょうか・そういうものです・とりあえず甘いものがたべたいから・買ってきてほしい・買ってはくるのですが・いくつくらいおたべになりますか・何個でもいいし・何個でもいいですよ・ごめんね・とごめんなさい
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●登場人物
・梟
電柱に留まり、街を見下ろしている自分が好き
その存在に対して突っ込みを繰り返す犬の事が嫌い
・犬
空が飛べる梟にあこがれており、
また、梟の肉を食べれば空を飛ぶことができると思っている。
【第三場】
電柱の上に梟が止まる。
とまった梟の傍に犬がやってきて吠える。
梟はいぶかし気に付いている翼のマントで身を包み、犬の事を嫌らしい目つきで見下ろす。
犬はそれに気が付かないまま、吠え続ける。
犬「ふくろう殿!ふくろう殿!耳よりのじょうでんがな!」
梟「下賤の物が…」
犬「いえいえ、梟殿! こちらにきてくださいな!耳よりの情報なんでぇ!」
梟「耳よりの情報を大声で言っているお前から受け取る情報なんてもの…、ゴミ屑以上の価値があるとは思えませんね」
犬「そんな事はございませんで!梟殿!梟殿!はようこっちきて!今なら間に合うんですよ!ええ!ほら、こんな声で!大声で話してたら!ダメですねん!これやめたいでしょう!やめさせたいでしょう!」
梟「…あなたは、私をどうしたいんでしょうか…悪知恵の浅知恵とはよく言ったものです」
犬「どうやったら梟殿みたいになれんですかねぇ。俺はバカすぎてみんなにバカにされるんすよ。俺はあらゆることを知っていて、足が速くて、誰よりも褒められるんですけど、頭がいいねとは言われんのです」
梟「私は元から頭がいいのもありますが、この羽を持っていて鋭い夜目を持っています。これが大事なのです。つまりは生まれこそが全てで、地を這いつくばるお前らには絶対に分からない事を私が知っている。そういう事です。私はあなたに何も与えないし、与えることもない、ましてや与えられる必要もありません。さぁ、その薄汚い考えをこじらせてどこかへさってしまいなさい。腹が減っているのであれば、この鼠をやるからどっかへおいき」
***
みたいな感情が綯い交ぜになているけれど・そんな生活が何度も繰り返されてきてるって訳 ・こういうやり取りも後何回出来るかなんて・誰にも分からないのだけれど・我儘や言い訳を繰り返している内に・また夜が来るんだからいいんじないかな・そうかもしれないしそうじないかもしれないですね・胡乱な会話を続けている交信しているだけかもしれない・その場にいない死者との交信・受信するものと送信する物がいる・いるだけじない・ささやかれるものがいるならさ・ささやくものがいるよねって話・甘いものを望んでいるなら・望みをかなえるという事は・意味もなく・意味が膨れていくことでもあるからね・明日はマカロンでも持ていきましうかね・死を引き寄せて・顔に被せて・寝静ずまる・また夜は朝を迎えて・昨日の晩に作った菓子は消え去てしまうし・声も聞こえなくなてしまったし・届けるという事は届く場所があり・届けられる存在がいることだと・考えなくとも・分かる事が・いなくならないと分からないなんて・と思いながら自分で作ったマカロンを食べたけど・甘くておいしかかったよ。
***
●登場人物
・人間
いつも頭を下げている
頭を下げる事が仕事。
【第四場】
人間「みたいな感じでお願いします。みたいな感じでお願いします。みたいな感じでお願いします。みたいな感じでお願いします。助けてください。みたいな感じでお願いします。助けてください。みたいな感じでお願いします。助けてください。みたいな感じでお願いします。助けてください。みたいな感じでお願いします。みたいな感じでお願いします。助けてください。みたいな感じでお願いします。たすけてください。みたいな感じでお願いします。みたいな感じでゆるしてください。みたいな感じでお願いします。マカロンマカロン!マカロニア・マカロン!マカロン代表!マカロニア王国!万歳!万歳!マカロン万歳!うおおおおおおおおおお俺はマカロン星人だ!超能力を持っているぞ!うおおおお!椅子今日からお前はマカロンだ!窓!お前もマカロン!仕事!お前も今日からマカロンだ!服、お前は最初からマカロン!電話!マカロン!飯!マカロン!動物!マカロン!NEWSマカロンだ!うおおおおおおおおおお!」
精神が錯乱し、あらゆる出来事がマカロンに見えてしまう。
心配した牛の上司がかけつけ、トナカイに救急車を呼ぶようにする。
その間に今朝とらえた豚の肉から作ったベーコンを食べていると、黒服を来た羊が涙をながしながら手にしたショットガンで牛を撃ち殺す。殺された牛をトナカイは壊れた目で抱きかかえながらなんども牛の事を呼ぶ。しかし、牛の名前をしらないトナカイは名前で呼ぶ事ができない。
梟は舞台袖で医者の格好をしたまま入ろうとするが、現場の状態を見て直ぐに引き返す。犬はカメラを持って近づき、殺人現場の様子を必死でカメラに移し、その場で記事を書きおろしている。
作品データ
コメント数 : 4
P V 数 : 1659.7
お気に入り数: 1
投票数 : 1
ポイント数 : 92
作成日時 2021-04-29
コメント日時 2021-05-25
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 11 | 11 |
前衛性 | 16 | 16 |
可読性 | 7 | 7 |
エンタメ | 16 | 16 |
技巧 | 16 | 16 |
音韻 | 10 | 10 |
構成 | 16 | 16 |
総合ポイント | 92 | 92 |
| 平均値 | 中央値 |
叙情性 | 5.5 | 5.5 |
前衛性 | 8 | 8 |
可読性 | 3.5 | 3.5 |
エンタメ | 8 | 8 |
技巧 | 8 | 8 |
音韻 | 5 | 5 |
構成 | 8 | 8 |
総合 | 46 | 46 |
閲覧指数:1659.7
2024/11/21 21時08分32秒現在
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はじめまして。コメントを書くのもはじめてなので、無作法がありましたら叱ってください。 なんて自由な文学作品でしょうか。三度読み返しました。そして、読むたび深い感動を覚えます。 丁寧に、丁寧に感情を掘り下げて、詩の形にしていらっしゃるように感じます。美しい詩です。 ファーストコンタクトは宇宙人の日記なのですが、読んでいるうちに、この狂った詩(褒)には痛々しい悲しみがにじみ出ていることに気が付きました。 誰か心から親しくしていた方へ無意識のうちに大切だと感じていたことに気が付かず、傲慢に接してしまったことを後悔しているんでしょうか…… 登場人物の右の獣は、この詩の感情の持ち主の愚を表現するために、左の獣は、大切に想っていた方への慈しみを含んだ批判を表現するために生み出されたように感じます。「舞台」というのには、深い後悔を伴う記憶を脳内で繰り返し再生している、という「後悔」を強く強調する意図があるのでしょうか。 計算された魅せる詩にもかかわらず、技巧に囚われない、込められた感情の大きさを尊敬します。
0コメントありがとうございます! 宇宙人の日記と書いてくださった所、本当にうれしかったです。宇宙人とのやり取りを想像すると、中々言葉が通じないのかなと思うのですが、それって別に日常でもあるよなと思いながら書いておりました。誰も悪くないけど、悪いよねみたいな悲劇を描くのに動物の皮を借りて、舞台を作ってかいてみたらどうなるかなと思ってこういう作品の形式を取ったのですが、色々とくみ取っていただけたのかな思いました。とても嬉しいです!!!
1百均さん こんにちわ。ご無沙汰してます。 戯曲が題材ですね。 個人的に戯曲、それなりに好きなので楽しく読めました。 ただ、この戯曲を舞台に乗せようとしたらどうなるのかしら?なんて考えてみると それはおおよそ不可能だなと感じました。 不条理演劇っぽいですが、そもそも人間が演じることすらこの戯曲は不可能だなぁなんて思いました。 詩、特に現代詩とはなんだろう?というのはあまりセンスの良い問いではないかも知れませんがこの作品を読んでそんなことを思いました。 語彙やテクニックを得る毎に人間は不自由になっていくよなぁなんて最近はよく思っていて、その中でこの作品を読んで とにかく自由であろうとすれば良いのかもななんてことを思いました。 この作品に対して分析的な読み方をするのはそぐわない気がしていて感想を述べるに留めたいです。 特に人物紹介の部分、とても楽しく読めました。 ここから発展させてなにか現代詩と呼ぶしかない何か現代的な文学形式が生まれ得るのかも知れないなんて思った次第です。
1マカロンに執着があるような。最後の場、第4場でやっと人間が出て来たと思ったら、マカロンに対する執着。もともと最初の部分でもあったわけですが。羊と豚、牛とトナカイ、梟と犬。第1場、第2場、第3場とユーモラスだと思ったのですが、設定としてなかっただけで、一番最初の部分で人間らしき地の文が、モノローグ的な、があって。こうてきが分からない思っていたのですが、買うてきてくれんかと言う事だったのですね。ニッポニアニッポンみたいな。マカロンが植物みたいな、生き物みたいな感じがしました。
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