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フィラデルフィアの夜に XXⅢ
フィラデルフィアの夜に、針金が作り出します。 夜、忘れ去られた小部屋。 音も立てず蜘蛛のみたいに天井より垂れる何かがあります。 針金。電気コードより一本、二本、数本と被膜の中から垂れ下がる。 それらは首をもたげ、電灯へと入り込む。 灯りがつきます。 月の様なスポットライト。 照らされる先には、針金。 様々な、何かを模したかに見える雑多なゴミを巻きつけたものたち。 それは人々のようで、動物のようで、街並みのよう。 色が変わる。 その形を維持したまま、色が変わっていきます。 それは光を浴びた時です。 無機質そのものだったその色合いは、急に命を得始める。 人の形のビニールテープを巻いた針金。人の肌の色になって動き出す。 その顔は人間そのもの。 歩いた一歩の、その地面を土色にして。 歩く度、殺風景な空間を命溢れさせる。 乾電池を針金で巻いた物は、大きな犬になり付き従い。 人の手見える置物は、柳になって緑を滴らせる。 埃を被らせた小さな針金の塊は、花々となってこの世界を彩らせ。 時計の部品に巻いた針金は、鳥となってさえずり歌う。 歌う声。 人と犬も歌うような声を上げて。 声と光届くその場所に、もう一人。 壊れた工具に針金巻いた何かは、人の肉を得て動き出す。 歌う声、踊る光、香る花、その中の人と生き物たち。 それは楽園でした。 ぷつん。 光が消えた。 声が消えました。 光と共に。 香りも消え、真っ暗闇の中何かが動く気配すらありません。 電気コードより垂れ下がってきた針金は、諦めたように元の場所に戻っていきます。 人も樹も犬も鳥も花も、踊りも緑も歌も香りも終わったのです。 そこには楽園がありました。 誰もが忘れ去った小部屋。 その夜の事。 誰も知らない、どこかの人が作った針金の像。 その針金たちが、一時の楽園を作り上げたのでした。
フィラデルフィアの夜に XXⅢ ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1163.0
お気に入り数: 0
投票数 : 1
ポイント数 : 0
作成日時 2021-04-22
コメント日時 2021-04-22
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
ろうそくの光で読みたい大人のための絵本のようですね。外国語を翻訳したようなぎこちなさが、この詩篇ではプラスに働いていて、世界をより深いものにしていると思いました。すてきな作品を読ませていただきました。
0大人のための絵本とは、今までにない評価です。 この独特の文体は、叙情性等の効果が出るのを狙っているためですがそれが上手くいったようです。 ビーレビューでは23作品目、小説家になろうでは合計47作品が掲載されているのでよかったらどうぞ。
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