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かんじ・かんじて
主体の見ている白昼夢をVR体験しているような浮遊感、あるいはエレベーターの一瞬フワッとするあの感覚を覚えました。 たとえば、 >幻でみたのだという暗い踊り場には、低学年なら空、それよりお兄さんお姉さんたちなら希望というふうに誰かの希望が磔けられて、さわさわ、さんざめいていた。 習字の作品が廊下一面に貼られている小学校の何気ない光景を想像しました。低学年は一文字、学年が上がると二文字や四文字に課題の難易度が上がりますよね。でも「暗い踊り場」とか「磔けられて(普通は「貼り付けられて」)」という漢字の使い方によって、単なるピュアピュアな光景ではなく、まるで「希望そのもの」が磔にされているとでもいうような不穏な空気を漂わせています。 また、 >(…)先生、先生、たなばたはれるかな? わからない、わからないけどもそうだね、お天気予報は明日は飴が降るといったよ。みんなはぶらしをもっていらっしゃい。 も、可愛らしい先生と生徒の会話かと思いきや、気づくとねじ曲がっておかしな事になっちゃっています。 この「はれるかな?」が漢字ではなく、平仮名なのも、「七夕 晴れるかな?」だけでなく「七夕 貼れるかな?」かもしれなくて、習字の話の続きのようにも思えます。 それに対しての「飴が降るからはぶらしをもっていらっしゃい」というのも、「いやいや、降るのは雨でしょう!」というツッコミを入れる隙もなく「はぶらしもっていらっしゃい」と言われてしまうので「飴なのか」と納得してしまいます。 このように、読んでいる間は普通と普通じゃない境目に全く気づけなくて、気がついたらおかしな場所にいるような感覚にさせます。 >だって診療室の寝台の硬いまくらに海中のあわになって上がっていくえんぴつの柔らかさはきみの腿から血がでていた。どこかでころんだのはきっとどこのことだったのか、神社の参道におおきい蛇が入っていって、 また、後半に行くほど性的な匂いがしてきます。無垢な子供たちが大人になっていく。初潮か処女喪失みたいな感じもあっていいですね。 タイトル「ひらいて、とがって」もなんだかエロティックに思えてきます。 > (…)ぼくたちはルールを探しながら探さないあそびをつづけた。からだ。川のなかにきらきらとちいさな電柱がみえた。これから先にしゃべったほうがまけね、というゲームにはぼくは勝ったのだろうか。 こういう、よく意味の分からない遊びも懐かしく、ノスタルジックな気分にさせて、茫然とした大人になっていく焦燥感を感じました。 なにより、文章としては不自然なのに文脈としては自然な文章とでもいえば良いのでしょうか……非常に羨ましい技術です!
かんじ・かんじて ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1302.6
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作成日時 2021-04-05
コメント日時 2021-04-05