夜にはパトカーも例外ではなく
人目を忍んで裸になる
身に纏っていたものをすべて脱ぎ捨てたパトカー
今は赤く光らない
今は大きな音を鳴らさない
今は速く走らない
今は命令しない
今パトカーも考えている 装いは重要ではない
重要なのは内部だと
己の内部の内容物を確かめている
宇宙から帰還したカプセルの中身を見るように
そこには悪を追い回している己の
嘘のように騒々しい姿がある
難しい顔をして
時に喚き
時に走り出す
悪を追い回しているうちに
轍に一等深くできる所が生じる
それが決して逸れることのできない
善と悪の宇宙に敷かれた道となる
しかもこの道に右側とか左側とか
上りとか下りに相当するものはない
ただ善と悪があるのだ
それだけでこの道は 道として成立している
夜の闇の中で
この道の悪には灯り一つ見えず
誰の影も見えない
けれど善には
静かにあまたの街灯や門灯が並んで輝き
まるで己を誘引するかのように思わせる
そこには美しい幻影が見られる
すべての人間がそこにいる
パトカーは思う みんなそんなに悪くない
そんなにも悪くはないんだ
でもやがて必ず
夜空に多少の青みが滲み出てくると
パトカーは知らず知らずまた
元通りの装いを纏い始めている
幻影から身を守るように
また 幻影が消えてゆくことを恐れもして
作品データ
コメント数 : 3
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作成日時 2021-03-01
コメント日時 2021-03-07
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/12/04現在) | 投稿後10日間 |
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2024/12/04 02時21分27秒現在
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パトカーが思うというところに妙があるのだと思いました。
0お読み下さりありがとうございます。寓話風に書いてみました。書いて投稿した後、いつになくなかなかの疲れを感じたのですが、疲れた割に、作品の良し悪しはどうかなぁといったところです。
0コメントありがとうございます。「善悪の描写を具象の表現で追求できれば」というのは本当ですね。作中で私は情景描写をいろいろと練り上げましたが、自己陶酔的な字句操作に終わっていますね。 岩波文庫版『虞美人草』の解説は桶谷秀昭氏によるものでしたが、この解説の中に「漱石はこの作品以後、勧善懲悪の物語を書かなかった」というような文があったのを思い出します。 善悪ということは人生を生きる上で確かにいつも問題になっているはずであるけれども、必ずしも対立するのではなく、もっと複雑なものだろうとは思います。こういうことを表現するには、私はまだまだ全然考えも技術も低レベルにとどまっていると思われます。できる限りでいいから、もっと頑張っていこう。
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