国道沿いの売地の手前のあたり
睡眠薬のビンが落ちていた
それを横目に歩いただけで
私が悲しむ理由はないが
確かにあったそこの建屋の玄関あたり
睡眠薬のビンが落ちていた
何の施設だったのかも思い出さないで
私が振り返る理由もないが
どうして歩調は乱れるか
ミミズが干からびているその先の
そっと踏み込む地面の色を
いちいち慈しんでいられるものか?
誰かが踏みそびれた影がそこにはあって
それを私が無慈悲に掻き消したとして
この世の何が変わるというのか
何にも理由はないくせに
どうして歩調が乱れるか
私自身の踏みそびれてきた憧憬の
その影すら通り過ぎたままに生きていて
惜しむ心すら薄れているのに
何ということもないという
思いも出さない売地にひとつ
睡眠薬のビンが落ちている
歩調を正して歩くだけ
情景をひとつ消して行くだけなのだ
作品データ
コメント数 : 6
P V 数 : 1724.4
お気に入り数: 2
投票数 : 0
ポイント数 : 2
作成日時 2020-08-22
コメント日時 2020-08-29
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 1 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 1 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 2 | 0 |
| 平均値 | 中央値 |
叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 1 | 1 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 2 | 2 |
閲覧指数:1724.4
2024/11/21 22時36分34秒現在
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歩調を正しくして歩くだけ、情景を一つ消していくだけ、この二行に心引かれました。何とも言い難いこの二行が夏のことだというのも相まって深くなっていると思いました。
0「国道」「売地」「睡眠薬」この単語三つはとても示唆的で、詩の情報量をもりもり増やしてくれている
0コメントありがとうございます。 少しでも心を動かしてもらえたのなら、書いて良かったと思えます。
0コメントありがとうございます。 これ実際に見たんですよね。「国道沿い」の「売地」に「空きビン」が落ちているのを。 睡眠薬のビンかまでは分かりませんでしたが、おそらく何かの薬のビンでした。 シチュエーションとして殆ど実話を書いて、その時の自分の心境を誰かに追体験させたかったのかもしれない、と改めて自分の投稿の動機について考えています。 おっしゃる通り結果的には示唆的になり、詩を助けてくれていますね。
0はじめまして。雨野小夜美という者です。 この詩は、拝見してさっそくドキドキしました。睡眠薬のビンという設定に、思わず読み進めたくなるところがあります。
0コメントありがとうございます。 やはり睡眠薬という単語は強かったですね。 導入で感じてもらえたドキドキを、詩の最後まで持続させることが出来たなら良いな、と思ったのですが、その点自分で読み返してみても余り自信はないです。
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