想像力だけで生きるなんて悲し く
それでも あらんかぎりの言葉をめぐらして書く
かんがえてかんがえてを くりかえすほどに
言葉は みじかく ほんの一行で事足りる
あまりといえばあんまりに短い【好きです】
届けることのできなかった言葉に 体は
くの字に 折れ曲がって ゆ く
プラットホームで列車が出るたびに 凍る
不響和音で構成された沈黙に
ゴミだと言い聞かせても
ドクドクする文字を凝視してしまうから
ゴミをゴミとして捨てることができずに
掌の中で握りつぶされて
さらに結晶化するのを もてあましてゆ く
朝日の中で わたしそびれた言葉は
夕闇の中で くの字になった
その紙に書かれた文字に
打ちのめされる
琥珀石の中の昆虫の話を教えてくれた人は
あの人でした
遮断機のベルが どんなにけたたたましい音をたてようとも
どんなに琥珀色の夕映えが麗しいとしても さらに
く の 字の形に 体が傾ぐ
その掌に握られた
たった ひとつの言葉だけに愕然とし
ラブレターを 握り潰し
雑巾のようにねじり 一度はゴミとして捨て
捨てられずに拾い上げるだけの動作に
朝日だった陽射しが夕暮れになる
椅子の上
あの痛みこそ
種でした
あらんかぎりの創造力を凌駕するような
瞼の裏の血管のような熱の大気の中で
胸をひらこうとしていて できずに
背中を
くの字にして固まり琥珀の中の虫でもなったかのような
あの姿のまま
いまも 歩こうとしている
どうしてもゴミできない たった ひとつの言葉だけで
歩いて く
作品データ
コメント数 : 9
P V 数 : 1522.1
お気に入り数: 1
投票数 : 0
ポイント数 : 9
作成日時 2020-08-05
コメント日時 2020-09-01
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 2 | 2 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 1 | 1 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 4 | 4 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 2 | 2 |
総合ポイント | 9 | 9 |
| 平均値 | 中央値 |
叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0.5 | 0.5 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 2 | 2 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 1 | 1 |
総合 | 4.5 | 4.5 |
閲覧指数:1522.1
2024/11/21 22時27分26秒現在
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ぜんたいで、もう、上手い、としか言いようがない。 中でも個人的に気に入っているのは、「朝わたしそびれた言葉が く の字になるという夕闇」の切なさ。
1く。~ゆく(補助動詞)。悲しく(シク活用)。歩いてく。くの字。くの字の体。背中。くのいちのくでもありますね、「女」と言う漢字が想起され深い思いが沸き上がって来るようでした。
1背の曲がった姿、物を書く姿、句、く、自分も一音に様々な思いを込めたりしてました。繊細な感受性がどうかそのままで前に進みますように。
1今度は「く」ですか! 書いていく くの字になって くのうして
1お読みいただき うまいだなんて、過分なお言葉までありがとうございます。 選んでいただいたフレーズの熱に共感していただけて 嬉しいです。
0くのいち。は、おもいうかんでなかったのですが、「女」と言う漢字が分解された漢字だと私も聞いたことがあります。くノ一。忍者が考えた とんちですね。ふと、きになって 女と漢字そのものの成り立ち検索したら ひざまずいた女性の形からきてたので、いがいと この詩にあっていて おどろきました。
0>繊細な感受性がどうかそのままで前に進みますように。 前にすすもうと思います。応援ありがとうございます。
0今度は「く」ですか!はーい。「く」に句でかえしてくださってありがとうごさいます。 書いていく くの一気分で るる参上
0不響和音で構成された沈黙に こう言った表現がすごく丁寧に描かれた絵画のようで素敵です。切なくなってしまいました。
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