鳥の音が聞こえた
ばさばさというやさしい音なんていつものことで
今日は誰かの世界が終わったかのような
文字にしにくい叫び声が聞こえた
だれかが酒を飲んでいて酒になってしまったようだ
酒は叫ばない 液体は叫ばない
叫ぶのはいつも現実逃避の類型で
それは人の形をしていることが多いんだ
わたしは人のようなものに詳しいんだから
わたしたちはいつも寂しくて小声だから
みんなで鳥になって
人にはわからない言葉でしりとりをしようと主張した
人にはわからないから
わたしたちには永遠があるよと信じておしゃべりを続けた
そうだ
そうなんだよ
きっとそうなんだ
みんなが酔っ払って空に瞬く群体になったならば
みんなで現実を高く飛んでいけるよ
月のうさぎはみんなアルコールを飲んで
わたしたちを見守っていて
ずいぶん赤いうさぎだなあ、ふふ
そう笑いながらわたしたちは
昏睡しながら淡いピンクの空を駆けるんだ
それが わるいか わるいのか!
わたしたちはとってもいけない
悪い子だったのかなあ…
そうつぶやいて鴉色のカクテルを飲み干した
それでね、ついにみんなが黙り
わたしたちを気が狂っているくらい素面の鳥が食べた
わたしたちみんなの、酩酊した世界を喰んだ
世界が終わった時の文字にしにくい叫び声を上げた
そしてわたしたちの空が青春が酩酊が
つまり悪気なき寂しき詩が
いま終わったのです
作品データ
コメント数 : 3
P V 数 : 1747.0
お気に入り数: 1
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ポイント数 : 3
作成日時 2020-07-06
コメント日時 2020-07-22
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/12/22現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 1 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 1 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 1 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 3 | 0 |
| 平均値 | 中央値 |
叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 1 | 1 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 1 | 1 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 3 | 3 |
閲覧指数:1747.0
2024/12/22 01時38分55秒現在
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前半には「後ろ向きな感じの強いエネルギー」のようなものを感じました。文字にしにくい叫びという表現が、現実には出てこない、強いエネルギーのようなものを表していると思います。最後にはすべて終わってしまうのですが、そこには悲しさとは少し違う、微笑みのような、どこかすっきりしたような思いを感じました。
1よびなさん、コメントをありがとうございます。 ああ、なるほどです、という印象の指摘です。 わたしはこの詩の前半にきっと、少しの怒りとか、現実逃避の気持ちを込めていて、それは部分的には文字にするのが難しい「後ろ向きな感じの強いエネルギー」だったのかもしれません。まだ言葉がうまく扱えない、ということだとも思います。 でも、怒りはあるけどそれはつらく、捨てたいものですし、すべてが終わるのは救いや解放と感じている節があるので、最後にはわずかな微笑みさえあったかもしれません。 とても勉強になりました。改めてコメントをありがとうございました。
1沙一さんへ コメントをありがとうございます。 確かな詩情に胸を撃たれる(撃たれる!)思い、詩以外のなにものでもない、など、もったいない言葉たちをもらい、とてもうれしいです。 実はどこかに投稿するような散文詩としてはこの詩が処女作だったので、これは詩だと言われて、わたしも胸を撃たれました。 この詩は、前半が特に詩の世界(≒酩酊の世界)だとわたしも思うし、わたし自身も三連目までが特に好きです。詩人には全然なりきれないけど、少しだけなれた、うれしい、という気持ちです。
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