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ある少女の理不尽な激情
16時30分 まもなく一番線に列車はやって来ますとアナウンスが流れた。私はいつも丁度1両目の車両が止まる位置で列車が来るのを待っている、だってここが一番空いているから。定刻通りホームにやってきた列車は定位置よりも少し手前で止まった。何故だかこの駅は傾いているので列車も同じ様にホーム側に傾いている。ドアが開くと私の前に立っていたおばさんが列車から人が降りるのも待たずに乗り込んでいった。たぶん更年期なんだと思う。私も遅れて列車に乗り込むと右手前の優先席に恐らく低所得で恐らく独身のスーツを着たおじさんが脚を組んで座っていた、左奥の席には隣町のたぶん偏差値50くらいの高校の制服を着た男女のグループがでかい声でなんの生産性もない話をしていた。私はそれらを避けて車両の一番奥の席に座ったのだけど後からやってきた私と同年代のやたらと髪色の派手な女が私のちょうど目の前の席に座ると手鏡を取り出しそそくさと化粧直しを始めた。二分ほどの対抗列車を待つ時間が過ぎると、列車が発車します、閉まるドアに御注意下さいとアナウンスが流れた。私はイヤホンを耳につけ、目を閉じる。 ……… 「キライ、命を懸けて」
ある少女の理不尽な激情 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1476.2
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2020-07-05
コメント日時 2020-07-27
項目 | 全期間(2024/12/22現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
「切り取り現象」という言葉があるのをご存じでしょうか。須賀原洋行さんという方の「新釈 うああ哲学辞典」という漫画の中で阿部公房さんの「箱男」を模した回でそのような表現が使われていました。道でつまづいた人はなぜ笑うのか。それはその人が色々な経験、経緯、人生を経てそこにいるにも関わらず、道でつまづいたその瞬間しか見ていない他者の目には「ただ道でつまづいた人」としか映らないから。そしてそのことを恐れるからこそ「私は実はこの様な人間ではないのですよ。」と笑うのではないでしょうか。須賀原洋行さんの漫画では「箱男」は他者からの「切り取り」を極端に恐れるあまり一方的に切り取る側になってやろうと箱を被ってまちに出ます。結局、そうした工夫もむなしく「箱男として切り取られてしまう」というオチで漫画は終わっています。読みながらそのことを思い出していました。 私自身が10歳代に味わった、卑屈でもあり恥ずかしくもあり、繊細な感情を持っていないように見える他者を憎み、そしてわずかに羨ましく思いながら震えて立っていたあの悔しい気持ちを思い出しました。
0コメントありがとうございます。 切り取り現象は初めて聞きましたが僕自身にも見覚えがある現象です。 この詩はその感情の出所の理由を問わず感情そのものの強さを表現したく書きました。 とてと勉強になりました。 ありがとうございます。
1みみずさん、こんにちは。 コロナが流行してから、僕は満員電車に乗るのが恐怖でしかありません。 まあ、会社は出勤しろっていうから仕方なく乗っているんですけど。 車両に乗り込むと、朝からサッポロ一番を呑んでるおじさんや、 東南アジア系のマスクをしないでずっと話してるカップルや、 知的障がいっぽい男の子がやたらとソワソワ動いていたりして、 ああ嫌だなあと思うんですよね。 それでも、命は懸けないと思うんですよ。 静かにしてくれよ、とは思うけど、僕の関係ないところで勝手にやってくれ、 ぐらいにしか思えない。 作中のひとはどうして命を懸けたんだろう。 むしろ、主人公は誰も嫌いなんかじゃなくて、 自分自身が嫌いでただ単に死にたいだけなのかな、 なんて思ったりしました。 それにしても更年期の女性って興味深いですよね。 ぼくもいつか更年期のおばさんのはなしを書いてみたいです。
0コメントありがとうございます。 主人公は自分自身が嫌い、というのは僕もそう思います。自分自身に対する怒りを理不尽に他人にも抱いているそんな状態なのかなと思います。
0タイトルが良いですね。私も似たような経験があります。やっと座ったら目の前に気分が悪くなるようなシーンにでっ食わし、よけい疲れたことがありました。 描写がリアルで動きがあって楽しめました。
0コメントありがとうございます。 タイトルは作者もひそかに気に入っていたので良く見ていただいてうれしいです。
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