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速さについて
/あなたの場合だとね 生息域にそぐわないんですよね、 このままだとちょっとね、お引越しを されたほうがいいかもしれません/ 書類一式を突き返されるのが 見慣れた排出の合図か しぼりたての雑巾と 友達は言ったっけ 曇天色の クリアファイルを片手に 宙に浮いてるような気がしていたよ 白い張り紙が夏の 気圧が低い方へと逃れようとしている それで 足元からじわじわと 湿った砂に侵されていく ひとりの女の話の続きを その友達は 続きを言わないまんまで 故郷の海沿いにから入り込む 国道191号線の 真下を掘られたドブ川にある 朽ちそうな階段に座り込み オオハムとか/ウミスズメやら 海鳥が横切るのを いまも一心に待っているのだっけ じっと黙っていても彼の中では 過程だけが猛烈な速さで通過するのだろう きっとあの女も きみが座るブロックじゃないが、そういう 砂の像になったのかね いまでもぼくは 踏みしめるうちに靴の隙間に 入りこむ砂が気になるから ぼくはもうその友達には会えないし なにより もう海の生き物ではなくなってしまったんだと 失ってはいないのだけれど 髪の毛を抜かれたような別れを ぼくはぬるま湯に浮かべながら 夏とは思えない涼しい風を感じて はるか遠くからやってきた/誰のものでもない 責任に答えようとしていた
速さについて ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 3024.6
お気に入り数: 6
投票数 : 0
ポイント数 : 14
作成日時 2020-05-09
コメント日時 2020-06-05
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 6 | 2 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 1 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 5 | 1 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 2 | 0 |
総合ポイント | 14 | 3 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 1.2 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0.2 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 1 | 1 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0.4 | 0 |
総合 | 2.8 | 3 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
生息域の問題で追い出し状が来てそうな場面設定、そのせいで友達とかに会えなくなってそうな、(種族が違うんですかね?)想像が広がってよかったです。 あと最後のほうの >もう海の生き物ではなくなってしまったんだと >失ってはいないのだけれど >髪の毛を抜かれたような別れを >ぼくはぬるま湯に浮かべながら >夏とは思えない涼しい風を感じて >はるか遠くからやってきた/誰のものでもない ここは波を感じます。海辺の話ですもんね、好きです。 私はこの詩好きで、コメント書こう書こうと思ってたんですがなかなか書けなかったのです。 タイトルが「速さについて」とのことで、おそらく速さが詩のキーワードだと思うのですが 速さが詩のなかでどんな意味を持ってるのかが、読み取れなくて、好きなんだけど腑に落ちない状態になってしまったからです。 もし気が向いたらでいいので、この詩における速さってなんなのか、聞いてもいいですか?読解力が弱くてすみません…!
1この中での「速さ」の意味は物理学における意味と同じで、詩中、詩外にあるすべての物体の運動(動き)にかかわる量のことですね。 語り手も張り紙も、海鳥も速さを持っています。
03連目が好きです
0何もかもが移ろい、それらがまだ見ぬ世界へと各々の速度で向かってゆく、世の中のいわゆる諸行無常な感じを覚えました。それはそれは麗しい速度で移ろい、心地よいです。 またそれとは別に、引越しのために国道191号線を走る自家用車に乗り、その中で海を眺める少年の姿が思い浮かびました。窓から入る夏とは思えない涼しい風に吹かれながら、引越しへの覚悟といいますか、新たな地で頑張るぞというやる気を感じました。 麗しくもパワフル、そんな雰囲気を味わえました。素晴らしい詩をありがとうございます。
1ありがとうございます。張り紙といえば最近、営業中の店になぜか張り紙がされるようになりましたね。
0抒情以外のすべてのパワーを犠牲にして、いっそ抒情に踏み切る。そんな作品群を今までは書いていました。 この作品で試したような、ちょっとした方向転換が、あなたにとって効果的であったようです。 匿名が明けたときには、他の作品もご覧になってはいかかでしょうか。
1なるほど。こちらの視界の彩度も少し上がった気がしました。 聞けてよかったです。ありがとうございます。次作も読みます。
0色々な物語が立ち上がってきて想像が広がりました。 住んでいた場所から追いやられていくこと、環境に侵されていくようなイメージ、そして、憂いを帯びた寂しげな全体のトーン、「速さ」が生み出す空間の広がりといったものに、惹かれました。
0これは何か言いたくて でも言えない系のやつ 頑張ってコメントすると 君はここにはいちゃいけないから どっか行きなよと言われつつも どこか自分の点は変わらないのに 女や友達はどこか自分からだんだんと遠ざかっていき >はるか遠くからやってきた/誰のものでもない/責任に答えようとしていた というものごとやひとびとが違う速度によって遠ざかっていってしまう もののあはれ あんど諸行無常みたいなのが 夏っぽい透明感ありなイメージに託されている たいへんよきまるとおもった!!
0<じっと黙っていても彼の中では <過程だけが猛烈な速さで通過するのだろう とか、 <はるか遠くからやってきた/誰のものでもない <責任に答えようとしていた とか、好きです。 全体を通して、何だか不思議な感じ。話が見えるような、見えないような。重たいような、軽いような。一読では私の目にはぼやけている箇所も多いのだけど、読めば読んだだけ情景が広がってくる気がします。 海の生き物であったこと。そこにどんな思いがあったのか。説明は少ないのだけど、読んでいて楽しかったです。
1よかった。今頃になってはじめて読んだけど、もっと早くに読んでいれば良かったとちょっと反省。
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